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スイスの民主主義は平均的

年に数回行われる国民投票。1991年から2010年までに行われた国民投票の平均投票率は44.1%と半数を割る Keystone

直接民主制を誇るスイスだが、チューリヒ大学とドイツのベルリン学術センター ( WZB ) が共同開発した民主主義の質を測る新しい計測方法では、スイスは特別民主的な国ではない。比較対象国30カ国のうち、スイスは平均的な14位だった。

最も質の高い民主主義を誇っているのはデンマーク。その後にフィンランド、ベルギーと続く。

民主主義の定着した国々を比較

 これらの結果は、1月27日にチューリヒ大学で行われた記者会見で発表された。上位を占めた国々は、自由、平等、管理という領域における九つの民主主義的機能を最もよく満たした。

 民主主義バロメーターで算出したのは、国家など第三者の干渉からの個人の自由の保護、法治国家性、活発な世論、政治の透明性、政治への関与、利益の代表、政治的な競争、権力の管理、民主主義的な決定を実施する能力といったクオリティ指標値。1995年から2005年までの期間を対象に、民主主義が定着している30カ国を比較した。

政治への関与の偏り

 この11年間の平均でスイスが単なる14位に終った理由を「チューリヒ大学科学研究能力センター・デモクラシー ( NCCR Democracy ) 」のマルク・ビュールマン氏は次のように語る。

「スイスは個人の自由、活発な世論、競争、政府の能力といった点では民主主義の模範国だ。だが、権力の管理、透明性、管理・経営への関与の点ではまったくよくない。スイスでは立法機関による政府の管理はほとんど不可能。ほかの民主国家と比べると、スイスの司法機関は独立性が低く、政党の資金繰りも不透明だ。また、2005年までは情報の自由を有効に保障する法律もなかった」

 さらに政治への関与、選挙や投票に関する水準がかなり低い。ビュールマン氏ともう1人のプロジェクトリーダー、ベルリンのヴォルフガング・メルケル教授は

「社会的な観点で見た政治への関与は、スイスではとりわけ偏りが目立つ」

 と口をそろえる。

 つまり、スイス国民の大部分は政治に関与しておらず、関与している人々は知識階級、富裕層、高齢者、そして特に男性が多い。理想的な民主主義とは、すべての国民が政治に積極的に参加し、それぞれの関心や価値を同等に政治の舞台に持ち込むことだ。しかし、この点においてスイスはほかの民主国家に大きく後れを取っているという。

「総合的に、スイスは自由の原則をうまく実現しているが、政治的な平等という面では大きな欠乏がみられる」

 とビュールマン氏。

 民主主義バロメーターは長期にわたる発展を示す手段であり、スイスの進展もうかがえる。特に1999年の憲法改正、あるいは政治の透明性や政治への関与の面で進歩が見られたことから、1995年の19位から2005年には9位に上昇していた。

1. デンマーク 88.3

2. フィンランド 87.7

3. ベルギー 85.1

4. アイスランド 83.5

5. スウェーデン 82.9

6. ノルウェー 82.1

7. カナダ 79.4

8. オランダ 79.0

9. ルクセンブルク 75.2

10. アメリカ 74.9

11. ドイツ 73.2

12. ニュージーランド 72.1

13. スロベニア 69.6

14. スイス 67.8

15. アイルランド 67.0

16. ポルトガル 66.7

17. スペイン 66.6

18. オーストラリア 65.5

19. ハンガリー 63.2

20. オーストリア 63.1

21. チェコ 58.2

22. イタリア 57.0

23. キプロス 55.5

24. マルタ 54.2

25. 日本 45.8

26. イギリス 44.6

27. フランス 42.8

28. ポーランド 42.0

29. 南アフリカ 39.8

30. コスタリカ 32.7

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