
スイスは汚職摘発と防止の強化必要 OECDが強調

スイスは汚職撲滅にもっと汗をかけ——。
経済協力開発機構(OECD、本部・パリ)はこのほど、スイスの汚職摘発が不十分とする報告書を発表し、司法の取締りと内部告発保護を強化するなどの善処を求めた。
これに対し、スイス政府は汚職摘発に関連した司法手続きに時間がかかることは認めつつも、OECD汚職調査の対象となった先進国の中では「スイスは健全な方だ」と主張している。
汚職のもたらす弊害
スイスや日本など先進国30カ国が加盟するOECDは昨年5月、汚職に関する調査団をスイスに派遣。官民合わせて100人以上からヒアリングした。同調査はこれまでに14カ国で実施されているが、日本は受け入れていない。
OECDを始めとする国際機関が汚職問題に取り組むのは、汚職が資源配分をゆがめ、市場での自由競争力を削ぐことで、経済成長に大きな打撃を与えるとみているためだ。
汚職は贈収賄、不正取引、縁故者びいき、と様々な形態をとる。汚職の範囲も、外国公務員を巻き込むなど、国境がない。
報告書は、「外国公務員を巻き込んだ汚職に関する訴訟では、司法手続きに時間がかかりすぎる」とスイスの司法上の問題点を指摘。連邦検察当局が昨年取り扱った汚職事件12件うち、立件されたのは2件。そのうち、判決が出たのは1件のみとなっている。
スイスの汚職
また、OECDは報告書の中で、内部告発者は不正を正すための有効な手段になると位置付け、告発者の保護強化に努めるよう促している。
今回の調査報告を受け、連邦経済省のジャン・ダニエル・ゲルバー事務次官は「汚職問題は、スイスも含めて、どこの国も頭を悩ます問題」と語りながらも、「過去に調査を受けた14カ国の中で、スイスの汚職撲滅に向けた活動は優等生並み」とかわした。
OECD汚職作業部会のメンバーでもあるバーゼル大学のマーク・ピート教授(法律)は、ドイツ、フランスと並んでスイスでは、外国公務員に絡む汚職で組織ぐるみの悪質なものはないとの見方を示している。
swissinfo スコット・カッパー 安達聡子(あだちさとこ)意訳
汚職:
自他のために、公職を乱用すること。
汚職は資源配分をゆがめ、市場での自由競争力を削ぎ、経済成長に大きな打撃を与えるとされる。

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