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スイス、EUから銀行秘密保持法廃止の圧力

EUは、首脳会議で、キャピタルゲイン税に関する合意協定をまとめた。もしスイスがEUに加盟するならば、銀行秘密保持法を廃止しなければならないことになるという。

EUは、首脳会議で、キャピタルゲイン税に関する合意協定をまとめた。もしスイスがEUに加盟するならば、銀行秘密保持法を廃止しなければならないことになるという。

ポルトガルで開かれているEU首脳会議で、加盟国は、非居住者の脱税を防ぐため、非居住者の所有する定期預金口座の情報公開の合意に達した。が、ルクセンブルグとオーストリアは、合意はスイス、米国、その他海外税金逃避地が同様な手段を採択するかどうかにかかっていると、スイスに圧力をかけている。

スイスのアナリストによると、連邦政府は、EUが税法の制定に失敗することを秘かに願っている。「ノイエ・チューリッヒ・ツァイトゥン(NZZ)」紙の社説では、ルクセンブルグとオーストリアは、スイスに熱々のポテトを手渡したとし「これら2国の戦略は、スイスがEUの合意に従った場合にのみ、自国の銀行秘密保持法を犠牲にするというもので、スイスは苦しい立場に追い込まれた。」と述べた。

すでにスイスは、経済協力開発機構(OECD)から銀行秘密保持法を緩和するようにとの圧力を受けている。NZZ紙は、OECDからの圧力には、遠からず屈服を余儀無くされるだろうとしている。スイスとEUの緊密な経済的結びつきは、スイスがEU域外にいるというインパクトを緩和するため、EUからさらなる譲歩を引き出そうとしているだけではないという印象をブリュッセルに与えている。それゆえ、スイスは首尾一貫した戦略を立て、時間を無駄にするべきではないと、NZZ紙は分析している。

一方、スイスの官僚と銀行は、政策を変えるつもりはないと、強固に主張している。経済省は、情報公開に関わるいかなるシステムも受け入れる用意はないと繰り返し主張、銀行協会のスポークスマンは、銀行秘密保持は議論によって変わるものではないと断言した。

これに対し、ベルンの日刊紙「Der Bund」もNZZの論評に賛同し、このような強硬な態度は、長期間は持ちこたえられないと批判、ホロコースト犠牲者所有の金と匿名口座の件を持ち出し「全世界がスイスに対する信用を失った時、自分自身を何年も欺いても意味が無い。」と述べた。

最大手の仏語紙「Le Temps」も、政府がEU加盟を真剣に考えているならば、銀行秘密保持を撤廃するのは当然だと論じている。「現在スイス政府は、多くの条件を制定したEUの税法が施行されないことを祈っているだけだ。が、期待しても空しい結果に終わると思っておいたほうが良い。」

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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