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ミューレベルク原発廃止に向けた署名活動、クリスマス前には達成



「黙って立っている方が、人がかえってこっちに来やすくなる」。原発廃止に向け署名活動をするヴァルター・クマーさん(左)とカトリン・ヘレンさん

「黙って立っている方が、人がかえってこっちに来やすくなる」。原発廃止に向け署名活動をするヴァルター・クマーさん(左)とカトリン・ヘレンさん

(swissinfo.ch)

スイス政府や連邦議会は2034年までに既存の原発廃止を決定したが、原発反対派は一刻も早い原発稼働停止を求め各地で運動を続けている。これまで多くの欠陥が指摘されているベルン州のミューレベルク(Mühleberg)原発廃炉要求もその一つだ。

環境活動家が今秋署名活動を開始し、多くの人から賛同を得ている。

 家路を急ぐ人が行きかう夕方のベルン中央駅駅前。署名活動を行うヴァルター・クマー氏(50)は黒のシルクハットをかぶっている。シルクハットには今回の州民発議の名称「ミューレベルク原発撤廃(Mühleberg vom Netz)」とスローガン「健康な地球、健康な人々(Gesunde Erde, Gesunde Menschen)」の文字が見える。

 「これだけ目立つ帽子をかぶっていれば、街の人は私たちが署名活動をしているとすぐ分かるでしょう」

 署名活動の目的は、州民発議に必要な1万5000人分の署名を集め、ミューレベルク原発の運営会社BKW(BKW FMB Energie AG)の株主であるベルン州にミューレベルク原発を早急に稼動停止させることだ。

 左派の社会民主党(SP/PS)などから積極的な支持を得ており、11月29日現在、1万3897人分の署名が集まっている。署名活動期限は6カ月間だが、このまま順調にいけば9月27日から開始した署名活動はクリスマス前には終了しそうだ。

 自営業を営むクマー氏の署名活動はいたってシンプルだ。政党やグループには所属せず、同じく環境活動家でフィットネスクラブ経営者のカトリン・ヘレンさん(44)と共に週3日、ベルン市街地の朝市場や駅前など人が多く行きかうところで黙って立ち続ける。

 歩行者に話しかけることなど一切せず、ただシルクハットをかぶって静かに人が署名しに来るのを待つ。「黙って立っている方が、人がかえってこっちに来やすくなる。約6週間の街頭活動だけで1万人分もの署名が集まった」

民意が反映される政治

 クマーさんとヘレンさんが行う州民発議とは、州民が提案する州憲法改正案を州民が投票して決めるという制度だ。スイスにはこれ以外にも全国(連邦)レベルで行われる国民発議と市町村レベルで行われる住民発議がある。

 州民発議が成立するには当該州が規定する署名数が必要で、ベルン州では発起人は1万5000人分のベルン州民の署名を集めなければならない。期限内に集められた署名は州当局に提出され、署名の有効性が確認されれば州民発議成立となる。その後、州政府と州議会は賛成表明または対案を作成し、発議案と同時に州民投票にかける。

 今回の州民発議が可決された場合、ベルン州憲法には「BKWの大株主であるベルン州はミューレベルク原発の即刻停止に努める」という条項が付加される。その場合、BKWの株を52.5%所有するベルン州は今後BKWの株主総会で、ミューレベルク原発廃止を求めた議題を提案しなくてはならない。

 「今回州民発議を思いついたのは、原発が私の住むベルン州に置かれており、ベルン州がBKWの大株主だったから。州民発議が利用できるということが大きなモチベーションとなった」。長年反原発派だったというヘレンさんは、この州民発議をきっかけに脱原発の波が国やほかの州にもドミノ式に伝わればと期待している。

 クマーさんはヘレンさん同様、スイス政府や連邦議会が脱原発に向けた決議を表明したことを評価しているが、「国の対策を待っているだけでは既存の原発はあと最低10年は稼働を続ける。それまで待てない」と今回の動機を語った。

フクシマが変えた

 一方、脱原発に関してベルン州民の心は揺れている。ベルン州では今年の2月13日、老朽化するミューレベルク原発に代わる新原発建設を問う州民投票が行われ、51.2%で可決された。

 「私がずっと反原発派であることを知っているのに、父は新原発建設に賛成した」とヘレンさんは当時を振り返る。しかしこの投票から間もない1カ月後、福島第一原発事故が発生。「(フクシマで)父もようやく原発に対して考えを変え始めた」

 ミューレベルク原発はベルン市から14キロメートル離れたアーレ川岸に位置する。原発としては古く、着工は1967年、稼働は1972年。福島第一原発(1967年着工、1971年稼動)と時期が重なる。また、原子炉形式はゼネラルエレクトリック社製の沸騰水型軽水炉(BWR)、格納容器形式はマークⅠ(福島第一原発第6号機はマークⅡ)と構造も同じだ。

 福島第一原発事故をきっかけにベルン州民の態度に変化が見られたとクマー氏は言う。「ミューレベルク原発は確かに福島第一原発と構造的に同じだ。だが、人々が抱いているのは原発に対する恐れというよりも、原発の不透明さに対する怒りだ」

ミューレベルク原発をめぐる裁判

 ところでこの州民発議だが、「ミューレベルク原発を取り巻く環境が変わり次第消滅するかもしれない」と、クマーさんとヘレンさんは言う。

 現在、住民100人以上がBKWと行政を相手にミューレベルク原発無期限許可の無効をめぐり提訴しており、住民が勝訴した場合はこの州民発議は意味がなくなる。「私たちの州民発議は住民がこの裁判に敗訴した場合の保険だ」

 今回の州民発議に対しBKWのアントニオ・ソマヴィラ広報担当は「署名活動が現在行われていることは承知しているが、それ以上コメントはしない」とし、原発は二酸化炭素(CO2)の排出量がほぼゼロで温暖化対策の点で非常に有効であり、ミューレベルク原発は北西スイスに住む約50万人に安定した電力を供給しているとの見解を示している。

 前述の裁判は来月13日に公開調停が開かれ、2012年初旬に連邦行政裁判所が判決を下す予定。もし無期限稼働許可が無効となった場合、ミューレベルク原発の稼働期限は2012年末で切れる。

スイスの脱原発

福島での原発事故を受けスイス政府は今年5月25日、段階的な脱原発を政府案として発表。この案は、既存の原発を寿命まで稼働させた後廃炉にし、改修や新原発建設は行わないというもの。連邦議会も秋の会期で段階的な脱原発に支持を表明した。

段階的脱原発の方針に沿って既存の原発が寿命まで稼働した場合、廃炉になる年は以下の通り:

ベツナウ(Beznau)原発1号機:運転開始1969年、廃炉2019年

ベツナウ(Beznau)原発2号機:運転開始1972年、廃炉2022年

ミューレベルク(Mühleberg)原発:運転開始1972年、廃炉2022年

ゲスゲン(Gösgen)原発:運転開始1978年、廃炉2029年

ライプシュタット(Leibstadt)原発:運転開始1984年、廃炉2034年

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脱原発に対するスイス国民の決断の経緯

スイスで最初の原発が1969年に稼働開始して以来、スイスでは2011年現在までに計七つの脱原発に関する国民発議(イニシアチブ)が発動されているが、そのほとんどが国民投票によって否決されている。

国民投票で唯一可決されたのは、新原発建設10年間凍結(モラトリアム)を求めた国民発議だ。これは1986年に起きたチェルノブイリ原発事故を受けて発動され、1990年に開かれた国民投票で54.5%の賛成票を得て可決された。

これと同時に新原発建設禁止や既存する原発の即刻停止を求めた国民発議も国民投票にかけられたが、賛成47.1%、反対52.9%で否決された。

その後、モラトリアムの継続を求めた国民発議「モラトリアム・プラス(MoratoriumPlus)」は2003年の国民投票で賛成票41.6%、反対票58.4%と否決。同時に行われた段階的な脱原発を求める国民発議も賛成票33.7%、反対票66.3%で否決された。

2011年11月現在、原発稼働期間を稼動開始から最長45年までとする国民発議が左派の緑の党(Grüne/Les Verts)から提案されており、成立に向けた署名活動が行われている。可決された場合、予定の2034年よりも早い時期に脱原発が達成される。

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swissinfo.ch


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