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モントリオール会議に臨む

薄氷の上に乗って環境保護団体グリンピースの観測船「MV北極サンライズ」を見守るセイウチ Keystone

カナダで11月28日から12月9日まで開催されている国連気候変動会議(モントリオール会議)は京都議定書発効後の第1回目の会合として、注目を浴びている。会議では2013年からの地球の温暖化防止への取り組み方の検討が開始され、次期枠組みを作るための交渉プロセスの合意を目指す。

モントリオール会議に臨むスイス代表、トマス・コリー連邦環境局国際部長に会議の抱負を聞いた。

 トマス・コリー部長はスイスが約束している二酸化炭素削減目標は達成するであろうと楽観的。しかし、そのためには多くの努力が必要であると語る。世界自然保護協会(WWF)のクロード・マルティン理事長は一方で、「国際世論がまだ十分に地球温暖化の深刻さを理解していない」と今年末の引退を控えたインタビューで答えているが(11月23日スイスインフォ配信)、モントリオール会議で各国の地球温暖化に対する問題意識の高さが示されることとなろう。

swissinfo : モントリオール会議へどのような期待をしていますか。

コリー : 京都議定書を履行するために各国が約束した事項が、現実に達成されることを望んでいます。会議では京都議定書後、つまり2012年以降のことも話し合います。地球の温暖化問題については、先進国による努力だけでは不十分です。途上国も含む全世界の国々が取り掛かる問題です。

swissinfo : スイスは京都議定書に従い、2008年から2012年の間に年間180万�dの二酸化炭素の排出量の削減を約束していますが、達成は可能でしょうか。

コリー : スイスは京都議定書に調印しましたし、これを尊重しています。また、スイスは約束を守るためにあらゆる努力を惜しまず、責任ある行動を取るつもりです。

swissinfo : スイスは計画通り、目標を達成するために動いているということですね。

コリー : スイスは今、京都議定書が定めた目標を達成するための手段を検討しているところです。石油1�gにつき1.5ラッペン/サンチーム(約1円)を課税する環境税などの非常に有効な手段を使い、目標を達成しようとしています。わたし自身は、目標を達成することができると楽観しています。

swissinfo : 京都議定書後、世界各国は地球の温暖化についてどのように取り組むことになる思いますか。

コリー : 京都議定書は2012年で終了するのだとよく言われますが、それは間違っています。京都議定書は2012年までを第1の約束期間とし、その後を第2の約束期間とすることにしています。第2期間内では地球の温暖化対策をさらに深め、新たにどのような目標、要素を盛り込むかが問題となるでしょう。スイスは、これまで先進国および市場経済移行国のみに対象が限られていたものを、途上国を含む全締約国に温暖化対策に対する責任を課すべきであるという意見です。モントリオール会議では、誰が何をどの範囲ですべきかが話し合われます。

swissinfo : すべての国に責任を課すとのことですが、米国も賛同するでしょうか。

コリー : 私たちのターゲットは、将来、温室効果ガスを大量に排出するであろう国々と米国のように現在重要な役割を担っている国々の両方です。米国の場合、人口は世界の4%にもかかわらず、世界の二酸化炭素排出量の20%を占めているので、重要です。米国が悪者になっていますが、技術面や二酸化炭素排出の問題の調査などの面でこれまで貢献してきました。しかし、地球の温暖化対策は、包括的な問題です。米国やオーストラリア、中国、インド、ブラジルなどすべての国が真剣に取り組んで欲しいと思っています。

モントリオールの会議が終了したら、地球の温暖化が深刻な問題であるという認識がさらに高まり、その解決に向けて努力しようという国々が沢山出てくることを望んでいます。

swissinfo、 聞き手 トマス・スティーブンス 佐藤夕美(さとうゆうみ)意訳 

モントリオール会議
2005年11月28日〜12月9日
参加国 189カ国 参加者およそ7000人
次期枠組みの検討を開始する。
枠組み交渉のプロセスに対する合意が目的。

<京都議定書>(1997年)
- 二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素など温室効果ガス排出量を減らすことで地球の温暖化対策を図る。
- 1990年を基準年として、先進国平均で2012年までに少なくとも5%減を目指す。EUは8%減、日本は6%減、米国7%減を目標とした。
- スイスは連邦議会で2003年6月批准。2010年までに二酸化炭素を基準年の10%下回ることを約束。また、二酸化炭素の排出量を2008〜2012年まで、年間180万�d削減することも約束している。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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