インターネットで買う刑務所製品
刑務所が新しいマーケットとしてオンライン・ショップに進出して早1年が過ぎた。木製のおもちゃ、陶器、籠、金物など受刑者が作った、刑務所製品はインターネットを通して購入することができる。
従来の商品のほか、トレンディーなデザインの肩掛けかばん「ジェイル・バッグ」やピクニック用の籠がいま人気で、売り上げ増加にもつながっているという。
定員を上回る服役者の数、刑務所内の暴力事件の増加、従業員の負担の増加など、刑務所における問題が顕著化している。収容服役者430人とスイス最大のチューリヒ州のペシュヴィース刑務所やジュネーヴ州のシャンプ・ドロン刑務所が抱える問題は特に深刻である。施設の増設が必要だが、州の財政に余裕はない。そのような状況の中、受刑者が作る刑務所商品が一部で注目を浴びているという明るいニュースがある。
「脱獄バスケット」や「監獄バック」
問題が山積する刑務所だが、増収をねらい、インターネット上でのオンライン・ショップをチューリヒ州のペシュヴィース刑務所が始め、成果を収めている。
取り扱う商品は従来の木製家具や玩具、陶器、籠、インテリアなどのほか、新製品で人気のある商品もいくつか出てきた。たとえば、ピクニック用の籠で脱獄を意味する「エスケープ・バスケット」(約1万2,000円)。「エスケープ・バスケット」を手に下げ日常から逃避(エスケープ)して草原にピクニックへ出かけ、恋人同士でロマンチックにランチを楽しむ。こんなユーモアのセンスも伺える商品は、20セット限定で販売中。
もっとも人気のあるのは肩掛けかばんで、監獄で使うバックを意味するのか「ジェイル・バッグ」(約4,000円から)。ビニール製で自動車のシートベルトのような太い肩掛けが付いており、若者に受けるデザイン。昨年のオンライン・ショップの総売り上げ3万フラン(約255万円)のうち、「ジェイル・バッグ」の売り上げがほとんどを占め、これが25,000フラン(約212万5,000円)にも上った。国外の発送は現在のところしていない。
イメージチェンジを計る
ペシュヴィース刑務所によるオンライン・ショップの販売は毎月35件ほど。客は25歳から40歳までで、インターネットを毎日利用しながら仕事をしている人たちだという。刑務所製品のオンライン・ショップの宣伝がスタートしたその日だけで、50万回の閲覧があったことからも分かるように、オンライン・ショップは有望のようである。
今後刑務所で製造し販売する商品は、従来どおり中小企業や病院の下請け商品とアイディア商品の2種類に分かれると、刑務所製品の販売の責任者であるカリン・エグリ氏は見ている。
「ジェイル・バッグ」は従来の商品を作る合間の余力があるときに作るが、「アイディア商品を作ることで、売り上げを上げると共に、刑務所で作られた商品という暗いイメージを払拭できれば」という。さらに、「刑務所での仕事が、いつまでも封筒の糊付けというわけにはいかない。消費者の需要に応えることで服役者が労働に意味を見出せるのではないか」と同氏は語る。
スイス国際放送 レナート・クンツィ(佐藤夕美 (さとうゆうみ)意訳)
服役囚の賃金は1日20フランから30フラン(約1,700円から2,550円)。
刑務所で作られた製品の販売収入は、刑務所の運営費に回される。
刑務所商品をオンライン・ショップで扱うのは
ペシュヴィース刑務所
レンツブルク刑務所
ザンクト・ヨハンセン刑務所
売り上げは微増だがペシュヴィース刑務所の商品は人気。
ドイツでは洋服や靴を「ヘフトリンク(受刑者の意味)」というレーベルでインターネット上で販売している。
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