スイスに6週間の有給休暇を!
「仕事も家庭も充実したものに」。スイスの労働組合の1つ、 トラバーユ・スイス ( Travail.Suisse ) は6週間の有給休暇を要求し、法改定のイニチアチブを発足させた。
雇用者協会はこの動きに反対している。そもそも、多くの経営者は実際には法律で4週間と定められている以上の休暇を認めているというのが理由だ。
現在の好景気に伴って増加している労働者の負担を、緊急に軽減する必要がある。労働者は健康を保つことや保養と休暇に、より多くの時間を投資すべきである。トラバーユ・スイスのフーゴ・ファゼル委員長 ( 国民議会議員、キリスト教社会党 ( CSP / PCS ) ) は7月12日、ベルンで記者会見を開きこのように主張した。
経済学的にも社会学的にも意味がある
ファゼル委員長は、法改定のイニシアチブを発足させ、1年間に6週間の休暇を法律で保障することで、労働効率の上昇がなされると訴えた。ヨーロッパ諸国と比較してスイスは、労働時間が最長であり、それに伴って休暇も少ないという。
「労働者の負担は近年大きくなり、残業が増えたり、病欠が増えることから、最終的には労働効率が低下する。こうした仕事におけるストレスの悪影響は甚大だ」とトラバーユ・スイスの経済政策担当者スザンネ・ブランク氏も主張する。「休暇が長くなれば、休暇で得られた労働効率の回復効果も長く持続する。1日の労働時間に換算すれば数分のことである」という。
反対する雇用者
大手スーパーの「ミグロ」や「コープ」では、5〜7週間の休暇を取ることができるが、ドイツから最近スイスに進出してきたディスカウント・スーパーの「アルディ」では法律で定められている最低の4週間しか取ることができない。イニシアチブ発足グループは、「アルディ」は他のスーパーとの競争面で有利に立っていることが問題であり、今回のイニシアチブは雇用者を告発するようなものではないと指摘する。
休暇を6週間に定めることで、雇用者にかかる具体的な負担は発表されていないが、イニシアチブ発足グループは、労働効率が上昇することで相殺されると主張している。しかし、雇用者はこのイニシアチブには反対だ。
スイス雇用者協会は「不必要で、大げさだ」と非難している。「労働法で4週間と定められている以上の休暇を与えている雇用者は多い」と雇用者協会のトマス・ダウム会長は言う。また、休暇の延長により人件費が増加し、結局は労働者に負担がかかるとも言う。さらに「外国の企業のスイス進出にも良くない影響を与える。休暇と祝日を合わせた、スイスの労働条件を英米やアジア諸国と比較してみると良い」と指摘する。
ホテルレストラン協会もイニシアチブには反対だ。スイスの伝統である労使が平和的に労働条件を話し合うという関係が壊れてしまう可能性もあるという。
swissinfo、外電 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )
スイスは労働法で20歳以下の労働者には最低5週間、21歳以上は最低4週間の休暇が保障されている。
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