スイスの独禁法、厳罰化へ 4月1日からスタート
何度も疑惑を指摘されていながら、企業の談合摘発・厳罰化が徹底できずにいたスイスの独占禁止法(不当な取引制限)が、4月1日から変わる。
新しく施行される改正独禁法の規定によると、摘発された場合、過去3年間総売上げの最大10%に相当する課徴金が科せられる可能性もでてくる。
経済連合会「エコノミースイス」のルドルフ・ヴァルサー経済学者は、「改定を機に価格競争が増えて、値下げにもつながる」と話す。財界には、競争促進で電力や郵便・通信業といった寡占業界にも規制緩和の道が開けるのではという期待もあるようだ。
ビタミン剤談合事件
現行の独禁法は、違法と認定されても初犯の場合は課徴金を科さないという規定がある。抜本的な見直し圧力が強まったのは、スイス製薬大手ロシュほか、競争相手によるビタミン剤を巡る談合事件がきっかけだった。
1990年から10年間に渡ってビタミン剤の価格カルテルを結び公正な競争を阻害し、消費者に被害を与えたとして、米国と欧州連合(EU)は2001年、ロシュに当時で5億ドル(約530億円)と4億6,200万ユーロ(約595億円)に上る課徴金をそれぞれ科した。一方、スイス当局は現行の規定が理由で1フランも取れなかったという経緯がある。
4月1日から施行される改定独禁法は、初犯から課徴金を科せられるようにしている。
また、課徴金の額も大幅に引き上げている。過去3年間の総売上げの最大10%に相当する課徴金を科せられる可能性もあるという。この他に、摘発を促すために内部告発を奨励したり、当局の調査に協力すれば課徴金を減額する措置も取る。
経済への波及
国内産業は談合が多く競争がないために、スイスの物価は近隣諸国EUに比べ30%以上も高いとも言われる。
国際通貨基金(IMF、本部・ワシントン)や経済協力開発機構(OECD、本部・パリ)は、以前から現行の独禁法を改善するようスイス当局に求めていた。
IMFとOECDは、スイス当局が必要な措置を取らなければ、国ベースで年間35億フラン(約285億円)相当の経済的負担になると推定試算している。
スイス国際放送 アルマンド・モンベリ 安達聡子(あだちさとこ)意訳
改正独占禁止法が4月1日からスタート。
摘発された場合、過去3年間総売上げの最大10%に相当する課徴金を科せられる可能性もある。
スイス製薬大手ロシュを巻き込んだビタミン剤を巡る談合事件をきっかけに、独禁法の抜本的な見直しが始まった。
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