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タリバン崩壊後の政権樹立は慎重に

9日 エジプト・カイロで行われた反米デモ。 Keystone

米軍による攻撃でタリバン政権が崩壊したとしても、アフガニスタンの新政権樹立は慎重さを要し、北部同盟に過度の信頼を置くべきではないと、クルト・スピルマン連邦工科大学(ETH)チューリッヒ教授は警告する。また、シュルツ・ベルン大学教授は政治的な存在としてのビンラディン氏について解説した。

「北部同盟は十分な支援を受ければタリバンから政権を奪うことは可能だろう。が、彼等が首都カブールを掌握していた90年代は、カブールの住民にとっては不幸な時代であった事を忘れてはならない。」と、スピルマン教授はいう。スピルマン教授は、北部同盟が政権を奪取したらアフガニスタンの政治的な展望は、破壊的で大変不幸なものになるだろうという。そして、アフガニスタン再建には、国際社会の幅広い支援と協力が重要だという。「10年前旧ソ連軍が撤退した時、アフガニスタンは壊滅状態で今もそのままだ。アフガニスタン再建のための重要かつ有効な側面の一つは、内戦の続いた間に国を脱出したアフガンのエリート達に、彼等の祖国と生活再建のために国に戻るという動機を与えることだ。」と、スピルマン教授はいう。

ベルン大学イスラム研究所長のラインハルド・シュルツ教授は、イスラム諸国でのオサマ・ビンラディン氏の人気が高まっていることも、アフガニスタンに新政権樹立を図る欧米にとっては深刻な脅威となるという。ビンラディン氏はパキスタン、インド、インドネシアなど特に非アラブ・イスラム諸国で「英雄」になっている。「米軍の攻撃は、ビンラディン氏をイスラムの真の擁護者に祭り上げてしまった。イスラム信者の中には、ビンラディン氏は欧米の犠牲者だと思っている人が多い。彼等は、イスラム対欧米の全面戦争だと見ている。」とシュルツ教授はいう。この点に関してはスピルマンETH教授も、「民衆はビンラディン氏を欧米の利権という巨大な的と戦う自分達のシンボルと見ている。」という。

シュルツ教授はまた、ビンラディン氏がイスラムのレトリックを政治的に操る点を指摘する。「ビンラディン氏は、『異教徒』『ジハード(聖戦)』などイスラムの言葉や表現を政治的に用いる。が、タリバンのように論理的な議論をするのではない。ビンラディン氏は言葉やシンボルを政治的に駆使している。宗教的に用いているのではない。」。さらにシュルツ教授は、ビンラディン氏のアラブ諸国への影響力は強いものではないが、80年代のアフガン・旧ソ戦争時エジプトとアルジェリアを中心に起こったイスラム復古主義運動のメンバーらと古い同盟関係にあるという点も上げている。

一方、スピルマン教授は、アフガニスタンへの地上軍派兵は極度の慎重さを要するべきで、旧ソ連軍の二の舞いになる危険性が高いという。「1979年から89年までの旧ソ連軍のアフガン侵攻の際、ソ連軍は敵がどこにいるのか中々つかめなかった。地上軍の戦闘は極めて困難なものになるだろう。」とスピルマン教授は危惧する。

ところで、スイスには約25万人のイスラム教徒達が住んでいる。うち15、000人はジュネーブ在住で、出身国は約100ヶ国に及ぶ。彼等は、米軍の攻撃をどう見ているのだろうか。彼等の見解によると、米軍の報復攻撃は、世界のイスラム教徒の中でも過激派に火を付けテロ拡大に導く恐れがある。ジュネーブのモスクのスポークスマン、ハフィド・カディリさんは、空爆の後に食糧など人道援助物資を投下する無意味さを批判する。そして「いつも爆弾が食糧パッケージよりも先に落ちて来る。爆撃こそすぐに止めるべきだ。テロと戦うの方法は他にもある。」と語った。

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