裕福なスキー客を狙う詐欺

「寝室6部屋、週の家賃1万2300フラン ( 約103万円 ) 、ベルビエの中心地」というシャレーにインターネットで予約を入れ現地に到着すると実はこれが存在していなかったという事件が起きている。
高級スキーリゾート地ベルビエ に来る裕福なスキー客を狙った詐欺事件に、当地の警察も手を焼き、予約を入れる前に観光局に問い合わせるなどの注意を促すが、防ぐ手立てはあまりない。
「光り溢れるシャレー 」は暗闇に
「サイトはプロが作ったもの。シャレー ( 山小屋 ) の外部、内部のたくさんの写真や多くの情報が提供されており、これでは騙されるのも無理はない」
とヴァレー/ヴァリス州警察の広報担当官バンサン・ファーブル氏は言う。
同州警察及びベルビエ ( Verbier ) 観光局によると、インターネットから消えたサイト「skichalet-verbier.com 」の被害者は外国からのゾート客3、4人。いずれも同じシャレー「光り溢れるシャレー ( Chalet Lumière ) 」に予約を入れている。
このシャレーが問題になり始めたのは昨年。予約金を入れた客からシャレーについて問い合わせが観光局に来るようになったからだ。そしてついに、昨年の12月半ばにはイギリスからカップルが到着し、この「光り溢れるシャレー 」が存在しないと大騒ぎになった。
全額払い込んでいたこのカップルに同情した観光局は、すぐにホテルの一室を提供し、イギリスとスイスの警察に正式な通報を行うよう求めた。
ほかにも被害者
その後も、この同じ「光り溢れるシャレー 」に予約する被害者は後を絶たず、最近のケースは今年1月末のノルウェーからのグループだった。
「警察が把握している同シャレーを含む被害は3件だが被害者がこれ以上いることは確実だ。ただ問題は全員が通報してこないことだ」
とファーブル氏は言う。
また、ベルビエ観光局長ピエール・イヴ・デレーズ氏は
「このシャレーを含め同じような事件がこの冬で5件あったと聞いている。サイトはいずれもプロの仕業で、奇妙な点は電話番号が記載されておらずイギリスのファックス番号だけが載っていることだ」
と話す。デレーズ氏はサイトに対しこのサイトを閉鎖するよう警告したが返事はないままだと付け加える。
州警察によるとサイトはロンドンから運営されており、登録はカナダの会社だが、会社名は知ることができない。
一方、州警察の金融犯罪課長のピエール・アントワンヌ・レンゲン氏はフランス語圏の大衆紙「ル・マタン ( Le Matin ) 」の中で
「しかし、こうしたサイト運用のシステムは法的に違反しているわけではない」
と説明する。また追跡調査は、会社名が匿名などプライバシーが保護されており、困難を極めると言う。実際イギリスでは簡単に偽名で銀行口座が開け、その口座にインターネットを通じて払い込まれたお金の追跡調査はほぼ不可能だと断言する。
詐欺予防法
だが、外国からのリゾート客を狙った詐欺行為はベルビエが初めてではない。スイス観光局の広報担当官ベロニック・カネル氏によると、スイスのほかのリゾート地でも過去数件同じような事件が起きている。
1年間に約百万人が宿泊し、内4分の3が冬のスキー客だというベルビエの観光局長デレーズ氏は、こうした5、6件の詐欺事件は数少ない例外だと考える。
「しかし、たとえベルビエのイメージにダメージを与えようとも、こうした詐欺事件が存在することをスキー客に知らせる必要がある」
と話し、実際ベルビエ観光局のサイトには、詐欺事件への警告が掲載されている。また、ロンドンのスイス観光局やヴァレー/ヴァリス州警察など、多くの関係当局にも連絡してある。
こうした事態を踏まえヴァレー/ヴァリス州警察は、観光客に対し特に独自の予防策を発表しており、それによると、レンタル会社にお金を払い込む前に、インターネット以外の方法でこの会社について情報を得ること、また実際にこの宿泊施設が存在するか否かを現地の観光局に問い合わせること、また払込先の銀行にもコンタクトを取り、銀行口座についての情報を得る努力をすべきだという。
サイモン・ブラッドリー 、swissinfo.ch
( 英語からの翻訳、里信邦子 )
ヴァレー/ヴァリス州にあるスキー地域、ナンダ ( Nendaz )、ベイゾナ( Veysonnaz )、 ラ・トゥゾマ ( La Tzoumaz ) に属する。
雪質の良さ、初心者からハイレベル用のコース、スキー後の娯楽施設の良さなどで、主にヨーロッパから多くのスキー客が集まる。標高1500mから標高3300mのモン・フォー ( Mon Fort ) までゲレンデが広範囲に広がる。
1年間に約百万人が宿泊し、内4分の3が冬のスキー客。

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