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リビアの報復 スイス経済界は静観

「スイスにあるリビア」ともいうべき、ヴォー州のタモイル社。ここでは原油の精錬を行っている Reuters

リビアの最高指導者ムアンマル・カダフィ大佐の息子ハニバル・カダフィ氏とその妻は、使用人に暴行を加え、恐喝した罪で7月15日ジュネーブで逮捕された。これに対しリビア側はただちに原油の輸出を停止するなどの報復措置を取り、一大外交問題に発展した。

このコンテンツは 2008/08/25 15:27

現在、リビア側は使用人からの告訴の取り下げとスイス政府からの謝罪を要求しているが、和解は成立していない。一方スイス経済界は、輸入原油の5割を占めるリビア産がたとえストップされたとしても打撃はそう大きくないとし、政府の外交的解決に任せる方針だ。

告訴の取り下げはない

ハニバル・カダフィ夫妻は、逮捕の2日後には保釈金を支払い釈放された。その後、リビアは原油の輸出を一時ストップし、またスイスの「ABB」リビア支社の社員2人の身柄を拘束するなどの制裁に出た。

先週8月15日には、モロッコとチュニジア出身の使用人が告訴した事件を扱うジュネーブ州の検事総長ダニエル・ザペリ氏が記者会見を行い、
「ジュネーブ検察局は、州の法の独立と平等に基づき、この事件をあくまで州の刑事事件として扱い、政治問題に転換することはない」
と明言し、連邦外務省もほかの国際機関も州に圧力をかけることはできない旨を強調した。

一方、ジュネーブ警察が保護している2人の使用人は今のところ、告訴を取り下げる姿勢はみせておらず事件の新しい展開は無い。

リビア、金融ではスイスに依存

こうした状況の中、「スイス石油組合 ( EV/UP ) 」の会長ロルフ・ハルティ氏は、外交的に問題が解決されず、リビアからの原油がストップされる可能性について、
「ストップすることはリビアの利益にならない。スイスで一割を占める350店のガソリンスタンドとコロンベイ ( Collombey ) にある精油所を所有する『タモイル ( Tamoil ) 』はリビアの会社だからだ」
と説明する。またたとえストップされても、ほかの原油で一時的には十分賄えるという。

さらに、リビア産の原油は輸入原油の54%を占め、確かに量的には一番多いが、原油から取り出される石油そのものは、スイスで消費される石油量の3割にしかならないという。

一方、金融面でみるとリビア側からのスイスへの依存度のほうがむしろ高い。スイス銀行で扱われるリビアの資産はおよそ60億フラン( 約6000億円 ) に上る。もしスイス政府が強硬な態度に出てこれらの資産運用をストップさせれば、リビアの富豪たちは満足しないだろう。

貿易面でも、リビアはスイスにとってアフリカで一番の相手国だが、総貿易収支は2007年度で約20億フラン( 約2000億円 ) ほど。スイスからリビアへの主な輸出品は機械、医薬品、自動車、航空機、農産物、時計などで、リビアの全輸入量の僅か2%。リビアからスイスへの輸出量も3%を占めるに過ぎない。

「輸出相手国として、リビアはスイスにとって決定的な問題となる国ではない。石油に関しては、最悪の場合はほかの解決方法がある」
と、連邦経済省経済管轄局 ( seco ) のジャン・ダニエル・ゲルバー局長は、ドイツ語圏の日刊紙「ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング ( Neue Zürcher Zeutung) 」の日曜版で結論付けている。

スイス企業が再展開できる機会

「リビアは変わりつつある。原油などで得た財力で国の購買力は非常に高まっている。また、諸外国との交流で民主主義の方向に国全体が動いている」
と急進民主党( FDP/PRD )の連邦議会議員、ヨハン・シュナイダー・アマン氏は分析し、今リビアで計画中の建設関係機械の販売から手を引く気はないと言う。

スイスの機械製造会社の協会「スイスメム ( Swissmem ) 」の会長でもあるシュナイダー・アマン氏は、今回のリビアとの外交危機に関して、
「最終的にリビアでスイス企業が再展開できる機会になればいい」
と楽観視している。

社員が2人拘束されたABBも、リビアから支社を撤去するか否かの決定は外交危機が静まってからと、早急にリビアを去る様子をみせていない。

一時停止されていた2国間の航空便も再開された。いずれにせよ、リビアで生活するスイス人は49人のみ。また夏のバカンス先としてリビアは暑すぎ、航空便の不通もたいした影響は無かったという。

swissinfo、レナート・キュンチ 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 訳

リビアとの外交危機事件の経過

7月15日、ジュネーブでリビアの最高指導者ムアンマル・カダフィ大佐の息子ハニバル・カダフィ氏とその妻が、使用人2人に対する傷害、恐喝、強制罪で逮捕される。

7月17日、ハニバル・カダフィ夫妻は、保釈金を支払い釈放される。

7月19日、ABBの社員2人がリビアで、入国違反やその他の罪で逮捕される。

7月22日、ミシュリン・カルミ・レ外務相、電話でリビアに抗議。

7月25日、連邦外務省 ( EDA/DFAE ) 、リビアとの外交危機と発表。

7月26日、リビア側はスイスに対して、ハニバル・カダフィ夫妻逮捕に対する謝罪と事件の扱い方の検討を要求。

7月28日、2国間の直接の交渉開始。

7月29日、ABBの社員2人釈放。

8月13日、使用人2人の弁護士、告訴を取り下げないと発表。

現在、リビアとスイスは外交問題として解決策を探っている。

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