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合理的なカーシェアリング

公共交通機関とリンクすることが成功のポイント。駅の近くには必ずカーシェアリングの駐車場がある。 Keystone

日本でも限られた地域で導入され始めたカーシェアリング。発祥地はスイスである。車を共同で所有し会員がこれを利用する。政府は省エネ計画で、車の台数削減、走行距離の短縮などを掲げており、国民がカーシェアリングを利用することを勧めている。                              

28人の会員と2台の車から始まったカーシェアリング。ノートに予約を記入し、キーは屋外に置かれた箱の中という決まりで運営された。それから14年。スイス最大手のモビリティは、5万人以上の会員と1750台の車を持つまでに育った。最新のシステムで運営されるカーシェアリングの成功を探る。                                       

スイス最大手のカーシェアリング組織、モビリティは年々1割以上の割合で会員数を増やしている。特に昨年は、前年より2割増で、すでに5万2千人が会員となった。2002年には57万フランの利益も計上し、成功を遂げている。 生活に余裕があり、環境意識の高いスイスだからこその人気なのか。利用の理由はそればかりではなさそうである。

簡単で経済的

「カーシェアリングがあるので、自分の車は去年、売ったよ」
と語るスイスインフォの編集長は、カーシェアリングの常連ユーザー。スイスインフォはカーシェアリング大手のモビリティの企業会員。記者も取材にはカーシェアリングを活用するよう勧められている。
 最寄の駅までは公共交通を使い、あらかじめインターネットで予約してあった車に乗り換える。駅の近くには必ずカーシェアリングの駐車場があり、乗り換えは至ってスムーズ。会員証のICカードをフロントガラスにかざし、カチッと音がしたらドアが開くようになっている。車の引渡しはまったく無人でなされる。

 普及した理由には、車を共有することにさほど違和感を持たない合理的な国民性にもあるようだ。
「排気ガス規制など、環境に対する意識も高い。加えて、駐車場や車検、税金や保険などメンテナンスを気にしなくとも良いのが魅力ではないか」
と連邦環境局のペーター・クンツ経済部長は、経済面の長所を指摘した。
 250フラン(およそ2万円)の会費のほか、使用料金は時間と走行距離により換算される。昼間に2人乗りのスマート車を利用した場合、1時間2.7フラン(232円)、100Kmまでは1Kmにつき0.5フラン(43円)が掛かる。環境局によると、年間走行距離が1万5千Km以下なら、自家用車を持つより月々250フラン(2万円)の節約になるという。

公共交通機関とタイアップ

 公共交通と提携することが、成功につながった。モビリティ社長のカール・ホイジ氏によれば、利用者のほとんどが公共交通と組み合わせて使う。移動の行程距離の75%を公共交通に頼り、残りはカーシェアリングの車で動く。
「公共交通とのリンクがない限り、カーシェアリングはありえない。東京は交通網も発達しているから、成功する可能性は高いのではないか」
と言う。

 

 チューリヒ交通局やスイス連邦鉄道は、カーシェアリングと提携している。チューリヒ交通局は定期券を所有者する客に、格安の25フラン(2千円)でモビリティに入会できるようにした。カーシェアリングとの提携計画に関わったカリン・バウマンさんは、
「いままで公共交通のライバルと称される自家用車だが、カーシェアリングと提携することで、路面電車の乗客からも歓迎された」
と提携の成功を自負している。

 モビリティはさらに昨年12月、ドイツ連邦鉄道が提供するカーシェアリングと提携し、国外進出を果たした。以後、ドイツ国内をカーシェアリングで移動するスイス人も見られるようになろう。 

 日本からの問い合わせも数件ある。モビリティのノウハウをソフトとして販売する案もあり、こうした国外からの対応に追われる毎日だという。

スイス国際放送 佐藤夕美 (さとうゆうみ)

モビリティ2002年決算
会員 5万2千人
車の台数 1750台
拠点 全国1千カ所
売上 31億円
利益 6千7百万円

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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