トランプ氏再選、スイス世論分かれる
米大統領選で共和党候補のドナルド・トランプ前大統領(78)が民主党候補カマラ・ハリス副大統領(60)を破り、当選を確実にした。スイスの国内世論は分かれ、自国への影響を不安視する声も上がる。
スイスのヴィオラ・アムヘルト連邦大統領は6日、X(旧ツイッター)上でトランプ氏と副大統領候補のJ・D・バンス氏に祝意を送った。また両国の強い科学・経済関係を強調し、共通の価値観、利益に基づき協働を継続していきたいと述べた。
Congratulations to @realDonaldTrump外部リンク & @JDVance外部リンク. Switzerland is a long-Standing and trusted partner of the United States. Our economic and scientific relations are excellent. We look forward to continuing to work together on the basis of our shared values and interests.
— Viola Amherd (@Violapamherd) November 6, 2024外部リンク
世界の国々と同様、スイスもトランプ氏の政権復帰が自国に与える影響を思案している。
スイス議会の左派政党はX上でトランプ氏の復活に危機感をあらわにした。 緑の党(GPS/Les Verts)のニコラ・ワルダー副党首は「トランプ氏は民主主義、平和、女性の権利、気候保護に対する脅威だ」と述べた。
また国民議会(下院)外交委員会のファビアン・モリーナ議員(社会民主党、SP/PS)は「多国間主義、気候保護、民主主義、人権が世界的に脅威にさらされている今、米国でドナルド・トランプ氏が2期目を迎えることは世界にとって壊滅的なニュースだ」 とした。
米国人は「意識高い系」を拒否
トランプ氏の勝利に肯定的な姿勢を見せたのは右派政党だ。保守・国民党(SVP/UDC)のニコラ・コリー下院議員はスイス通信社Keystone-SDAに対し、米国人はハリス氏の「ウォークネス(意識の高さ)に対する価値観を拒否した」と語った。コリー氏は、スイス政府とトランプ政権の関係は固いと確信しているとした。
同氏は「トランプ氏の当選は中立国スイスの歴史的立場を強化する可能性もある」とも述べ、トランプ氏がウクライナでの戦争を終結させるという約束を果たせば、スイスが和平調停役を務める可能性があると推測した。
スイスの報道機関は主に、2021年に起きた連邦議会議事堂襲撃事件をめぐり起訴されたトランプ氏の奇跡的ともいえる復活に焦点を当てた。
ドイツ語圏日刊紙NZZは社説で「米国人の大多数にとって、こうした出来事の記憶はとっくに風化しているようだ」と指摘。「トランプ氏には他の人と同じルールが当てはまらないようだ。この大統領選でも同じで、彼はアドバイザーではなく自分の直感に従った」と評した。
フランス語圏地方紙トリビューン・ド・ジュネーブとその姉妹紙24時間新聞は社説で、「この男が権力の中でどう機能し、そして機能不全に陥るかは誰もが知っている」と述べ、「米国人の大多数は事実を十分に理解した上で投票した。彼らは、たとえ不確かであっても、ライバル陣営のあいまいさよりも明確さを好んだ」 と指摘した。
米国との自由貿易協定?
スイスの企業もまた、トランプ氏の関税引き上げや貿易戦争再燃への懸念を抱えながらも、現実的な選択肢を取った。
スイスの製造輸出業界団体「Swissmem(スイスメム)」はXで、「保護主義がさらに強まる恐れがある」とし、特に米国が2番目に大きな輸出市場であるスイスのテクノロジー企業にとっては脅威となり得ると述べた。
その一方で、スイス産業は第2次トランプ政権下でも繁栄できると強気だ。「第1次トランプ政権下で、スイスはうまく切り抜けた。第2次トランプ政権下でも、スイスはチャンスをつかみ、強みを生かすことができる」。同団体はまた、米国との自由貿易協定(FTA)締結がその一手になりえると述べた。
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EUとの和解?
スイスにとっては悪化した対欧州連合(EU)関係を修復することが、米国の保護主義の対抗手段になり得るかもしれない。スイス政界には、トランプ氏の復帰が現在進行中のEUとの二国間協議を加速化させると見る向きもある。
上院外交委員会のカルロ・ソマルーガ副委員長はスイス通信社に対し、「EUとの和解が今となっては手遅れになっていないか、スイスは自問せねばならないだろう」と語った。
中央党(Die Mitte/Le Centre)のエリザベス・シュナイダー・シュナイター下院議員はXに「米大統領選挙の結果が明らかになった今、経済・安全保障政策の分野で欧州の結束を固めることが重要だ」と投稿した。「スイスは安全保障への投資をこれまで以上に強化しなければならない。スイスとEUは安定性に対しては等しく関心を持っている」
緑の党のニコラ・ヴァルダー氏も同調する。「世界中で右派のポピュリストや独裁者が勢力を伸ばしている。スイスの民主主義が前進する唯一の道は、欧州の近隣諸国とより緊密な関係を築くことだ」
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編集:Balz Rigendinger/ts、英語からの翻訳:大野瑠衣子、校正:宇田薫
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