スイスの視点を10言語で

女性が多数派の内閣誕生

2本の指を掲げ、閣僚就任の宣誓を行うヨハン・シュナイダー・アマン氏 ( 左 ) とシモネッタ・ソマルガ氏 (右) Keystone

辞任を表明した連邦環境・運輸・エネルギー・通信大臣及び連邦財務大臣の席を巡る新閣僚選挙で9月22日、連邦議会は社会民主党のシモネッタ・ソマルガ氏と急進民主党のヨハン・シュナイダー・アマン氏を選出した。

今回、新閣僚ソマルガ氏が女性であるため、7人で構成されるスイス内閣のうち4人が女性となり、スイスの歴史上初めての女性多数派内閣が誕生した。

女性多数派内閣

 ほかのヨーロッパ諸国に比べかなり遅い1971年に、初めて女性に選挙権を与えたスイスで女性多数派内閣が誕生したことは、画期的な出来事といえる。こうした内閣の誕生を意図して、社会民主党 ( SP/PS ) は今回の選挙に3人の女性候補を送り込んでいた。

 中でもソマルガ氏は、社会民主党のモリッツ・ロイエンベルガー環境・運輸・エネルギー・通信相の後任として最も有望とされており、さらに選挙前のアンケートでも国民の支持が最も高い候補者だった。

一方急進民主党 ( FDP/PRD ) のハンス・ルドルフ・メルツ財務相の後任には、「後任は同じ党から選び内閣の党配分の均衡を保つスイスの伝統」により、同じ急進民主党のアマン氏が高い支持を得ていた。しかし、ソマルガ氏、アマン氏はともにベルン州出身のため、地域のバランス性も考慮する閣僚選挙では、この点がアマン氏の選出に影を落とすだろうとも言われていた。

 しかし、結局アマン氏が当選したことにより、40年間続いた後に崩壊した完璧な党配分「魔法の公式」に代行するものとして、現在の、ある種の均衡を保つ内閣の党配分は維持されることになった。

 急進民主党、社会民主党、キリスト教民主党 ( CVP/PDC ) がそれぞれ2席、国民党 ( SVP/UDC )が1席の党配分が「魔法の公式」と呼ばれたもので、現在は、急進民主党、社会民主党がそれぞれ2席、キリスト教民主党、国民党がそれぞれ1席に、市民民主党 ( BDP/PBD ) 1席で構成されている。

中産階級と消費者を代弁

 社会民主党のソマルガ氏は、閣僚に選出されたことに対する感謝の意をスイスの4つの言語で表した後
「多数派は、少数派を、それが文化的、言語的、宗教的、政治的、さらにほかの要素によって少数派になっていようとも、尊重しなければならない」
と語った。

 政治課題に対し徹底した論争を行う政治家だという評判を持つ、もとピアニストの経歴のソマルガ氏は、伝統的な社会民主党の路線を行くというより、中産階級と消費者を代弁する。
 
 消費者保護基金の会長も務め、高額な医薬品に対し、医薬品会社のマーケティングのやり方や裏交渉などを正面から攻撃している。

 1986年に社会民主党に入党し、上院の全州議会議員を経て現在は下院の国民議会議員を務める。また行政面では、ベルン州のケニツ市 ( Köniz )で8年間行政を担当した経験を持つ。

自由経済の擁護者

 一方急進民主党のアマン氏は、ベルンの工業系企業「アマングループ( Ammaan Group) 」の会長を務める人物で、自由経済を擁護し、経済界から絶大な支持を得ている。

 現在問題になっている商店の営業時間では、その完全自由化を支持し、社会保障面では、社会保障の拡大化に反対。産休の保険制度に反対するキャンペーンを張った。定年の67歳までの延長にも賛成している。

 急進民主党の中でも右派のグループに属するが、今回の右派国民党の候補ジャン・フランソワ・リム氏と一線を画すのは、外国人に対する政策と国内での安全性政策で、より穏健だと言われている点だ。また、労働者に対する政策でも、ある種の正直さを持って対処し、左派政党からも支持を得ている。

 スイスが将来欧州連合 ( EU ) に加盟するか否かの問題では、EUとの現行の2者関係を絶対的に支持し、加盟には反対の方針を表明している。

イタリア語圏ティチーノ州出身。
1960年5月14日アールガウ州シンスに生まれる。
ルツェルンの音楽学校コンセルヴァトワールでピアニストの教育を受ける。
1986年社会民主党 ( SP/PS )に入党。 
1999年から2003年、上院の全州議会議員。
2003年から現在まで、下院の国民議会議員。
1997年から2005年まで人口4万人のケニツ市( Köniz ) の行政を担当した。
夫は作家のルカス・ハルトマン氏 (本名ハンス・ルドフフ・レーマン)

1943年、獣医の家に生まれる。
その後、エンジニアの学位を取り、1980年義父アマン氏が経営する工業系企業「アマングループ ( Ammaan Group) 」に入社。現在会長を務める。
機械、電気機器、金属系企業の代表協会「スイスメム (Swissmeme) 」の会長も兼任。
2児の父。

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部