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学生が教授をオンライン評価

当節プレッシャーをかけられているのは学生だけではない Keystone Archive

スイスの大学および工科大学の教員は、学生にオンラインで評価されるという厳しいテストに直面している。

というのもウェブサイト、「MeinProf.ch」が昨年の12月に立ち上げられて以来、学生の不評を買った教授たちが苦情を訴えているからだ。

 MeinProf.chの立ち上げ以来、学生2500人の評価がウェブサイト上に掲載されたが、驚きの結果が出ている。スワヒリ語の講義なら最高評価が得られるかもしれないが、コンピュータやマネジメントを教えても合格点はもらえないかもしれない。ベルン大学でマネジメントを教えるヨッヘン・ビグス教授は、高得点を得られなかった教授の1人だ。5段階評価で平均が2.2、そして講義の魅力度では1.8という結果に、ビグス教授は少々当惑している。

本当の評価

 「評価したのはたった6人だったのですから、誤解を招きかねないと思います。100人以上の学生が参加した大学内での評価では、もっと良い成績が出ています」
 とビグス教授は語り、オンラインシステムの弱点を指摘した。MeinProf.chの支持者は、ウェブサイト上の評価は悪くないと主張するが、今までのところ評価を寄せる学生が少なすぎて、本当の評価を表わしていないとビグス教授は述べる。

 また、MeinProf.chの最高責任者のパトリック・モレ氏も
「少なくとも今の10倍の学生数が必要です。そして正しい評価を出すには、ドイツ語圏の学生だけでなく、フランス語圏とイタリア語圏の学生の評価も必要です」
 と認める。しかしモレ氏は、ウェブサイトによるアプローチは、教員の能力を公の場で評価する唯一の方法だと弁護する。
 「大学内での評価は内輪で行われ、たいてい誰も見ないようなどこかの引出しにしまわれたままになっています」

賛成と反対

 ウェブサイトでの評価は芳しくなかったものの、ビグス教授は、オンライン評価というシステム自体は悪くないと見ている。
 「学生が自分たちの考えを述べて、それによって教授の質が向上するというのは良いことです。しかし、このシステムを悪用して教員を中傷するような学生もいるでしょう」
 とビグス教授は指摘する。

 しかしモレ氏は、そのような問題はレーダー画面上にポツンと現れた点のようなものにすぎず、
 「十分な評価数があれば、そうした不当な評価は、大多数の正当な評価に紛れて見えなくなります」
 とMeinProf.chの本家のドイツのMeinProfの例にふれた。

 ウェブサイト上で公然と評価されることに苦情を言ったり、法的措置を取ると威嚇した教授もいる。
 「脅されたこともありましたが、まだ誰も法的措置は取っていません」
 と言うモレ氏は、訴訟の可能性は無いと自信を見せる。モレ氏の自信を支える理由の1つは、MeinProf.chのウェブサイト上の評価が、内密にすべき情報ではなく、独自の評価基準に基づいて実際に行われた評価だという連邦データ・情報保護局長官事務所の声明だ。

 また、ウェブサイトに載った侮辱的なコメントを巡って起きたドイツの訴訟では、MeinProfの側に立った判決が下されたこともモレ氏の自信となった。裁判所は、MeinProfの管理者がすでにそのコメントを削除したことを指摘し、MeinProfがウェブサイトを24時間ずっとモニターする義務はないと裁定した。

 ほかの国々では、ウェブサイトでの教員の評価がすでに行なわれてきた。しかしスイスでは、学生によって公然と評価を下されることは、教える側にとって全く新しい視野を見せ付けられ、教員たちは大きな不安を感じていることが本当の問題だとモレ氏は言う。

 しかし、評価が良くても悪くても、教員サイドはこの新しい現実に向き合っていかなければならないとビグス教授は考える。
 「ウェブサイトでの評価は間違った印象を与えかねず、いつも教える側の役に立つわけではありません。また、 ( 大学と基金供給機関が ) 財政的な決断を下す時などのように、後になって問題が起きる可能性があります」
 とビグス教授は語った。

swissinfo、スコット・カッパー 笠原浩美 ( かさはら ひろみ ) 訳

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