喫煙者大国のスイス。鉄道駅構内が原則禁煙になったのは最近のこと
Keystone / Martin Ruetschi
スイス連邦内閣は6日、未成年者と若者をターゲットにしたたばこ製品広告を禁止するイニシアチブ(国民発議)に反対を表明した。
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内閣は若者を守ることには賛成だが、イニシアチブの内容は行き過ぎだと理由を述べた。スイスの国民投票では、イニシアチブの是非を有権者が投票で決めるが、政府、議会もそれぞれ賛成、反対を表明できる。
ラジオ、テレビでのたばこ製品の広告は現行法で禁止されている。イニシアチブはこれに加え、雑誌などの紙媒体、インターネット、ポスター、映画館、小売店などでも禁止し、たばこ企業のイベント後援も許可しないことを求める。今年9月、必要な10万人分の署名を集め、内閣事務局に提出した。
連邦内閣は声明で、イニシアチブの内容は「全面禁止」に等しいと述べた。ただ、たばこの危険性から若者を守る措置を強化すること自体は賛成だとした。
国会では
連邦議会は2016年、若者とたばこに関する最初の法案について審議したが、広告規制の内容で意見が分かれ、否決された。現在も法改正の審議が行われている。
国際機関や世論の批判を受け、全州議会(上院)は9月、未成年者へのたばこ販売の禁止、紙媒体・オンラインメディアでの広告に厳しい制限を設ける法改正案を可決した。国民議会(下院)でも可決されれば、スイスは世界保健機関(WHO)のたばこ規制枠組条約の基準に足並みをそろえることになる。
政府は、次の議会審議(現在は下院に移っている)で、映画館、ポスター広告の禁止を推進すると述べた。この2つはイニシアチブの求める内容と合致し、間接的対案(イニシアチブに対抗する政府、議会案の一種)の必要性はなくなるとした。
最新の統計によると、15歳以上の約27%が喫煙者だった。イニシアチブの発起人によると、ほとんどは10代で喫煙の習慣が始まっている。
イニシアチブは2018年3月、健康関連団体、スポーツ団体、医師、教師らが提起した。
イニシアチブと対案
イニシアチブ(国民発議)に対して連邦議会と政府が提示できる対案には2種類ある。
1)直接的対案:議会がイニシアチブに対する対案として、別の憲法条項を提示する方法。イニシアチブ委員会がイニシアチブを取り下げない場合、対案もイニシアチブと同時に投票にかけられる。
2)間接的対案:議会が憲法ではなく法律レベルの改正案、あるいは新法を提案する方法。その場合、憲法改正をしなくてもイニシアチブの実施が可能となる。イニシアチブ委員会がイニシアチブを取り下げない場合はイニシアチブのみが投票にかけられ、否決されれば自動的に間接的対案が可決される。
(出典:ch.ch)
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