国連のアート スキャンダル

天井からさまざまな色の「鍾乳石」を垂らし、ジュネーブ国連ヨーロッパ本部第20号会議室を「鍾乳洞」に変えた、スペイン人アーティスト、ミケル・バルセロー氏の作品がスキャンダルになっている。
11月の披露式では、国連への寄贈品としては例外的な、そのアーティスティックな表現で話題をさらったが、今回は資金の出所に関してスペインで大きな国内問題に発展している。
50万ユーロか500万ユーロか
もともとかかった費用の面でも、話題になっていた作品だ。総額約2000万ユーロ ( 約24億6000万円 ) の資金は、基金「オヌアルト ( ONUART ) 」が出資した。オヌアルトはこの作品を完成させるために創設された基金だが、総額のうち4割はスペイン政府が、残り6割はスペインの銀行やテレコムなどの企業が負担したといわれている。
問題は、この政府が負担した4割の内訳だ。一部が、途上国などへの開発援助金から出資されているという噂 (うわさ) は、スペインのファン・カルロス国王なども出席した11月18日の披露式前にもあったが、スペイン政府は、
「ほんのわずかな開発援助金がこのアートのために使われたが、人権理事会用の第20号会議室は、間接的に人道援助にも繋がる」
と説明していた。
12月に入って、右派政党などが批判を始めた。スイスフランス語圏の日刊紙「ル・タン ( Le Temps ) 」によれば、右派の「人民党 (PP)」などは、こうした資金があれば、グアテマラの2000人の生徒に8つの高校を建設できた、コロンビアに57万8000人分のワクチンを送れたなどと具体的な数字を挙げ政府を非難した。
政府側は開発援助金から使われたのは、わずか50万ユーロ ( 約6100万円 ) だというが、批判者側は、500万ユーロ ( 約6億1000万円 ) に上ると主張している。一方、アーティストのミケル・バルセロー氏は、今まで順調に国際的に認められてきたが、このスキャンダルでかなり名声が傷つけられたと話しているという。
swissinfo、外電

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