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暗号技術の活用術 ブロックチェーンの活用、国際機関やNGOにも拡大

ヨルダンのアルザック難民キャンプに暮らすシリア難民

国連世界食糧計画はヨルダンのアルザック難民キャンプに収容されたシリア難民を支援するため、ブロックチェーン・システムを試験運用している

(Keystone)

発展途上国や政情が不安定な地域では、国際機関や非政府組織(NGO)の活動には困難が付きまとい、目標をいつもスムーズに達成できるとは限らない。そこで、いくつかの団体はデジタル新技術のブロックチェーンを駆使し、最大限の成果を得ようとしている。

 「インターネット以来の大革命」とも呼ばれるブロックチェーンは、これまでのデジタルシステムに比べ、暗号化されたデータの保存や転送がより効率的で、透明性も高いとされる。現在はまだ試験段階にあり、金融業界、政府、NGOなど様々な機関や団体がこの技術の使い道を模索している。

 国連世界食糧計画他のサイトへ(WFP、本部・ローマ)もその一つだ。WFPはシリア隣国のヨルダンにあるアズラック難民キャンプに収容された数百万人のシリア難民を支援するため、「ビルディング・ブロックス他のサイトへ」と呼ばれるブロックチェーン・システムの試験運用を始めた。

 このシステムでは生体データ、電子ウォレット上のクーポン券、食料品店への直接支払いが連結。仲介者が省かれるため、機密性の高いデータが守られ、コストも削減できる。

 「ビルディング・ブロックス」プロジェクトでは、まず難民の生体データが携帯型の網膜スキャン装置で収集される。難民にはその後、食料と交換できるクーポン券が保存された電子ウォレットが与えられる。地元の認定小売店には網膜スキャン装置が設置され、客の電子ウォレットがその客のものかどうかが店頭で確認できる。クーポン券は電子ウォレットから店に転送され、店は毎月、銀行を介さずにWFPから直接代金を受け取る。

「追跡がしやすくなり、安全性も高まる」

 「ブロックチェーン・システムはすでにその価値か証明されている」とWFP改革・変革管理部のロバート・オップ部長は語る。プロジェクトは1万人の難民を対象に開始したが、現在は50万人に対象を拡大中だ。利用者数が目標に達せば、月15万ドル(約1600万円)の銀行手数料が節約できるという。

 それが可能なのは、ヨルダンにこうしたプロジェクトを支援できるほどのインフラが整っているからだ。インフラがそれほど安定していない他の地域では、節約の幅は予測できない。

 しかし「総便益はコスト節約よりもはるかに大きい」とオップ氏は話す。「我々の任務は慎重さが求められるが、その点において有効なブロックチェーンは我々の目的にかなっている。(データの流れが)追跡しやすくなり、安全性も高まる」

 それは全ての個人データは暗号化され、「ビルディング・ブロックス」で活用されるブロックチェーン内で監視されるということだ。そして国連スタッフは資金の流れを把握しやすくなり、すべての資金がしかるべき送り先に送られているかどうかを確認できる。現金の受け渡しや、第三者が仲介する場合はこのようにはいかない。

 オップ氏は今後の展望として、ほかの人道支援団体が活用するブロックチェーンと「ビルディング・ブロックス」との連携もあり得ると話す。実現すれば、離ればなれになった家族の再会や、新しい国で生活を始める人たちの支援ができるようになるという。

 「故郷を逃れてきた人たちには、身元に関する書類を全て失った人たちもいる。生体データに職歴、資格、信用情報を結び付けられれば、書類がなくとも生活が立て直せるかもしれない」とオップ氏は語る。

すべての団体に適用できるわけではない

 しかしブロックチェーンはまだ初期段階で、全ての団体に適しているとは言えない。ジュネーブに本部を置く赤十字国際委員会(ICRC)他のサイトへも活用に慎重な団体の一つ。ICRCのヴィンセント・グラーフICT革新課長は「ブロックチェーンにはメリットが大きいとされるが、もし紛争地域や非人道行為の行われている地域でシステム上の欠陥が見つかれば、悲惨な結果を引き起こしかねない」と語る。

 そのため、ICRCはブロックチェーンに大きな関心を寄せているものの、この技術をすぐに活用する意向はないという。

サステナビリティのためのブロックチェーン

 ブロックチェーンを活用している団体に、スイス西部・フリブールに本拠地を置くポリーニ財団他のサイトへがある。同財団は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)他のサイトへを支援するため、仮想通貨「イーサリアム」が土台とするプラットフォームを活用し、「サステナビリティ・チェーン他のサイトへ」というシステムを作り上げた。

 このシステムを初めて導入しようとしているのが、スイスのレマン湖畔の町・グランに本拠地を置く国際自然保護連合(IUCN)他のサイトへだ。IUCNは「グリーンリスト・プロジェクト」を立ち上げ、世界各地で新しい自然保護地域の設立を促進・支援している。そのプロジェクトの管理にブロックチェーンを活用しようとしている。

 ここでもブロックチェーンで得られるメリットは基本的に同じだ。銀行手数料を減らし、プロジェクトの資金に関する透明性を高くし、目標達成に近づけるという点だ。

 「自然保護地域の多くには余分な資金がない。そのため無駄な出費や手数料を減らせば、その分の資金をこうした地域の生態系保護に回せる。また寄付者の立場から見ると、(ブロックチェーン・システムでは)自分が出した寄付金が送り先に直接届くことが今まで以上に保証される」と、同プロジェクトの開発本部長、ジェームズ・ハードキャッスル氏は語る。

 ポリーニ財団の最高技術責任者(CTO)、トーニ・カラドンナ氏は「慈善のためのブロックチェーン」には大きな可能性があると考える。しかし、世界が立ち向かう喫緊の課題に対し、ブロックチェーンが唯一の解決策と見なすことは出来ないという。

 「ブロックチェーンを利用すれば、透明性と効率性が高まり、銀行への依存度も下げられる。しかし行政側との協力関係はまだ必要だ。誰かが片付けてくれると考えて何のためらいもなく環境を汚染する人がいる。ブロックチェーンだけではこうした考えの人に対処できない」(カラドンナ氏)


(英語からの翻訳・鹿島田芙美)

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