ロカルノ映画祭開幕 黒沢清監督作品は欧州最大スクリーンで上映

(左から)ロカルノ映画祭のラファエル・ブルンシュヴィーク最高執行責任者、リリ・アンスタン芸術監督、マルコ・ソラーリ会長 Keystone / Francesca Agosta

第72回ロカルノ国際映画祭が7日から開幕した。映画祭の新芸術監督リリ・アンスタン氏の指揮の下、近年で最も大胆かつ心躍る作品が選ばれた。クロージング作品には前田敦子を主演に迎えた黒沢清監督の新作「旅のおわり世界のはじまり」が上映される。

swissinfo.ch

ロカルノ映画祭には、欧州の映画作品だけでなく、西欧文化圏以外の作品も厳選して上映するという長い伝統がある。今年の映画祭はその伝統に忠実でありながらも、驚きや変化に富む。広く受け入れられるテイストを取り入れつつも、若手映画制作者や、ベテラン監督による実験的な作品を重視している。

映画祭のメイン会場「ピアッツァ・グランデ」には、8千人が収容できる野外スクリーンが設置され、ナイトスクリーニングで夜に作品を上映する。最近の映画祭では大衆受けする「フィールグッドな」映画を提供する傾向があるが、アンスタン氏はその流れに逆らう姿勢を見せる。 

いくつかの変更点

アンスタン氏が挑んだのは、幅広い観客の心をつかむような、質の高い作品を選出するという難題だった。

そこで同氏が選んだのは、クエンティン・タランティーノ監督の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」。カンヌで初上映後に監督が再編集した作品だ。他には、サッカーのアルゼンチン元代表、ディエゴ・マラドーナ氏がナポリでプレイしていた闇の時代に焦点を当てたドキュメンタリー映画「ディエゴ・マラドーナ」。メガホンを取ったのは「アイルトン・セナ ~音速の彼方へ」で高評価を得たアシフ・カパディア監督。また、日本のホラー映画監督として広く知られる黒沢清監督の作品で、前田敦子主演の「旅のおわり世界のはじまり」や、ドイツ・オーストリア合作のスリラー「7500」(パトリック・フォルラート監督)も出品されている。映画祭のオープニングを飾るのは、自伝風フィクションの「Magari(原題/ 英題if only)」。監督は、伊自動車会社フィアットの伝説的な実業家ジャンニ・アグネリの孫娘、ジネヴラ・エルカン氏が務めた。

そしてアンスタン氏は、ピアッツァ・グランデでの2回目のナイトスクリーニングを新部門「クレイジー・ミッドナイト・セッションズ」に変更し、映画ファンをさらに喜ばせた。この部門には韓国のポン・ジュノ監督、米国のジャック・ヒル監督、ジョン・ウォーターズ監督などの人気作品が出品されている。映画祭ではウォーターズ監督の栄誉をたたえるため、監督の過去の作品の一部が上映されるほか、監督自らがお気に入り映画の一つ「活動役者」(キング・ヴィダー監督、1928年)を特別スクリーニングで紹介する予定だ。

アンスタン氏はまた、実験映画部門の名称を「サインズ・オブ・ライフ」から「ムーヴィング・アヘッド」に変更し、枠組みも変えた。新しい名称は、今年逝去した映像作家ジョナス・メカスへの賛辞として、メカスの映画「歩みつつ垣間見た美しい時の数々(原題As I Was Walking Ahead Occasionally I Saw Brief Glimpses of Beauty)」(2000年)から取られた。メカスは独創的な映像作家であり、実験映画を長年支援し、ニューヨークのアンソロジー・フィルム・アーカイブスを創設した人物として知られる。

そしてVR(バーチャルリアリティ)の新部門「ジェンダー・ベンダー」では、スイス、カナダ、ギリシャ、ウクライナ、フランスの作品が上映される。アンスタン氏によれば、選考で重視されたのは技術力よりも「現代芸術の表現力」。このジャンルの作品は今後、ロカルノでますます重要な位置を占めるようになるだろうと言う。 

国際色豊かなスイス映画

伝統的なスイス映画部門「スイス・パノラマ」は今年の映画祭に残ることになった。だがアンスタン氏は、自身が芸術監督でいる限り「スイスらしさ」が選考の決め手になることはないと断言する。

同氏は「スイス映画制作者の新世代が手掛ける作品のクオリティには、目を見張るものがある」と語る。そこで映画祭の各部門に視野を広げ、国際的な要素のあるものもスイス映画に数えることにした。「非常に賢明な一歩だ」と、バーゼルに拠点を置く映画レビューサイト「Filmexplorer.ch」の批評家兼編集者のジュゼッペ・サルヴァトーレ氏とルート・ベッティック氏は述べている。

ロカルノで上演されるスイス映画には、スイスインフォの親会社であるスイス公共放送協会の共同制作作品21点が含まれている。その多くは移民問題、民族の離散問題、異文化問題などタイムリーな話題を取り扱ったものだ。例えば、国際コンペティション部門の出品作品「O Fim do Mundo(原題/ 英題The End of the World)」のバシル・ダ・クンハ監督はジュネーブ出身で、ポルトガルにルーツを持つ。他には、「Baghdad in my Shadow」のサミール監督はイラク生まれで、チューリヒに拠点を置く。またヴィード・フォーゲル監督は映画「Shalom Allah」で、スイスでのイスラム教への改宗の調査をきっかけに、監督が自身のユダヤ教のルーツを探る過程を描いている。

ロカルノ国際映画祭を大特集

スイスインフォは今年、ロカルノ映画祭の批評家アカデミーと提携。映画祭と並行して行われるこのアカデミーには、選考で選ばれた若手映画ジャーナリストたち(スイスから4人、世界中から6人)が映画祭期間中に出品作品の批評を行います。

スイスインフォの英語サイトではロカルノ映画祭を大特集します。主要ニュース、舞台裏、ハイライトがライブブログで配信されるほか、特集ページには記事、動画、ビジュアルコンテンツがご覧いただけます。

コンテンツの一部は日本語をはじめとするスイスインフォの他のすべての言語(ロシア語、中国語、日本語、アラビア語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語、フランス語、ドイツ語)でも配信されます。

インスタグラムのスイスインフォ英語版アカウントでは、批評家アカデミーが毎日配信する動画がご覧いただけます。アカデミー参加者が映画について考えることや、ロカルノで気になったことなどが紹介される予定です。

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