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米国行きフライトに武装警官は危険?

IATAは機内に武器を持ち込むより、陸上での警備強化を訴えている。 Keystone

米国土安全保障省が29日、米国に乗り入れる国際線の航空機で危険度の高いと判断した旅客機に武装警官の搭乗を要請したのに対し、国際航空運送協会(IATA/本部 :ジュネーブ)は「機内に銃を持ち込むのはかえって危険」と30日、通信社などを通して批判した。

スイス連邦民間航空局(FOCA)によると、スイスは1970年代の一連のハイジャック事件以来、すでに飛行機に乗り込む覆面武装警察官を必要に応じて配備する警備体制が続いており、情報を提供してくれれば米国の要請に答える姿勢であると語った。

IATAの反応

 世界180国、270の航空会社が加盟する国際航空運送協会(IATA)の広報官はAFP通信に「我々の基本的立場は機内に武器を持ち込まないという方針」と語り、それより陸上でのコントロールを強化するべきだと米国の方針に難色を示した。

 スカンジナビア操縦士組合はこれに対して、30日、「最悪の対策である。ハイジャック者と警察官の格闘が始まった際、流れ弾が機内に穴を開けたり、電気系統を破壊して爆破することも考えられる」とAFP通信に語った。また、操縦士によっては警察が同行するフライトの運行を拒否する者も現れるだろうと語った。

スイスでは30年前から存在

 スイスは30年来、訓練を受けた私服警察官を必要に応じて搭乗させている。1970年9月に起きた同時多発ハイジャックでTWA航空(現アメリカン航空)、イスラエルのエルアル航空、パンナム航空とスイス航空がパレスチナ解放機構(PLO)にのっとられ、ヨルダンで爆破されて以来、機内安全強化のため配置するようになった。頻度や目的地などは一切極秘だが、航空会社「スイス」もすでに米国行きの旅客機に配備されていることを地元紙で明らかにしている。

 スイス連邦民間航空局の国際局局長ウルス・ハリマン氏は「もし、脅威があるとの情報を提供してくれれば、協力は可能であるし、正当性がある要請」と語り、IATAの機内に銃持ち込みは危険という主張に対して「一般客は覆面警察官が分からないし、武器も見えない、第一、道端で武装した警察官の銃を取り上げて見てください、難しいことだ」と語った。また、同氏は「9.11事件だってそのような体制があったら避けられたのではないか」という。

国際的状況

 米国土安全保障省の発表は国際テロ組織、アルカイーダなどが再び飛行機をハイジャックしてテロを起こすのではないかとの警戒からだ。仏政府は米国の警告を受け24日、25日のエール・フランス機のパリ・ロサンゼルス間、計6便のすべてに運行停止命令を出した。26日からエール・フランス航空は正常運行に入ったが、仏当局は米国行きの便に私服警官を搭乗させていることを明らかにした。

 英国、内務、運輸の両省も28日、米国便を対象に私服武装警察官の機内配備実施を発表した。しかし、今後、この警察官配備は誰が払うのかという問題でIATAは「航空会社はこれ以上の負担はできない。要請国が払うべきだ」と主張。米国はこの点について明らかにしていない。


スイス国際放送、 屋山明乃(ややまあけの)

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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