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米、報復攻撃開始

発射されたトマホーク巡航ミサイル Keystone Archive

米国は、9月11日の米同時多発テロに対する報復攻撃を開始した。米英両軍は7日午後9時(現地時間)、アフガニスタンのタリバン政権の軍事拠点やテロ組織アルカイダの施設、空港、石油備蓄基地などを巡航ミサイルトマホークと爆撃機、戦闘機で空漠した。ラムズフェルド米国防相は、攻撃の第1陣は終っていないとしている。

ブッシュ米大統領は、攻撃の第1目標は「アフガニスタンをテロリストの基地として使用できなくする」ことで、攻撃はタリバン政権の軍事拠点に限定して行うと述べた。目撃者によると、アフガニスタンの首都カブール、南部のカンダハル、東部のジャララバードなどが攻撃された。タリバン筋によると、カンダハルの空港ではターミナルビルが破壊されたが、負傷者などの報告はない。カブールでは、最初の爆撃音が響き渡ったのは現地時間7日の21時。住民の話によると、対空砲の砲撃音の後、連続5回の大きな爆発音が響き、街全体が大きく揺れた。その後、空港付近でさらに爆発音が何度か聞こえた。アフガン・イスラム系報道によると、カブールの住民らは、夜間外出禁止令にもかかわらず市内からの脱出を始めている。タリバン側は攻撃開始後アフガニスタン南部で所属不明の航空機を撃墜したと発表したが、米軍は爆撃機、戦闘機ともに被害報告はないとしている。

タリバン政権のザイーフ駐パキスタン大使は、米国がテロの黒幕とするオサマ・ビン・ラディン氏とタリバン最高指導者オマル師は無事だと発表した。ビンラディン氏は9月11日以降録画されたと思われるビデオテープで、「パレスチナに平和が訪れサウジアラビアから米軍が撤退するまで、米国に平和はない」と述べた。また、タリバン政権は、攻撃は米国とその同盟軍に対するアフガン人の団結を強固にするだけだと、攻撃を強く非難、ザイーフ大使は記者会見で「このような野蛮な態度は、全アフガン国家を攻撃に立ち向かうため団結させる。我々はアフガニスタン国家に対するこのテロ攻撃を強く非難する。」と述べた。

ブッシュ米大統領は攻撃開始を発表するテレビ演説で、攻撃はタリバン政権の拠点とビンラディン氏率いる武装組織アルカイダの軍事訓練施設に限定する、タリバンは攻撃前に米政府が突き付けた人質開放などの要求を何一つ満たさなかったのだからツケを払ってもらう、と語った。さらにブッシュ大統領は「この戦いに中立は成り立たない。テロの世界に平和はない。我々は軍事作戦に許可を求めいない。ただ遂行する。」と述べ、現段階では作戦はアフガニスタンに限定されているが作戦は大規模なもので、約40ヶ国が多様な形で協力していると明言した。

ブレア英首相は、テレビ演説で英国の参戦を明言し「軽々しく軍事行動を決定する国はない。が、我々は9月11日のテロ後、犯行が誰の仕業であるのかはっきりした時点で行動を起すと決定した。」と述べた。さらにブレア首相は、米同時多発テロはビンラディン氏のアルカイダ・ネットワークによるものだと確信しており、ビンラディン氏を匿っているアフガニスタンにも責任があることを強調した。「アフガニスタンは正義の側につくか、テロにつくかの選択の余地を与えられたが、彼等はテロの側につくことを選んだ。」と述べ、軍事攻撃はビンラディン氏とタリバン政権の軍事施設を標的にしたものだと述べた。

米軍攻撃開始の一報を受けた各国の反応は次の通り。攻撃前にブッシュ米大統領から電話連絡を受けたロシアのプーチン大統領は、攻撃の原因はタリバンの態度にあるとしている。同じく事前に電話連絡を受けた独のシュレーダー首相は、ドイツは必要とあれば作戦に参加する用意があるが今のところは要請がないとし、「ドイツはフランスと共に、公式要請があり次第実行可能なことで協力する」と記者会見で発言した。仏のリカルド国防相は、フランスの作戦参加は「時期の問題」だと述べた。また、EUは米国の行動への支持を繰返し、EUの輪番制大統領を務めるベルギーのヴェルホフシュタッド首相は、EUの米国と英国への団結を表明した。

スイスのジョセフ・ダイス外相は、米国のアフガニスタン攻撃の支持を表明したが、政府は軍事攻撃に対し遺憾の意を表明した。仏語テレビに出演したダイス外相は、軍事攻撃は標的が9月11日のテロの関係者に限定され一般市民に及ばない限り正当とされると語った。また、スイスはアフガニスタンへの人道援助を500万スイスフラン増額したと発表した。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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