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財政や金融を知らないスイス人

銀行、金融など知っているつもりのスイス人だが、詳しいことは知らないという実態が明らかになった。 Keystone Archive

連邦財務省がこのほど行った調査によると、スイスの民法で定める銀行の守秘義務を支持する人がこの一年で6%減少したことが明らかになった。

一方、スイスの財政の赤字額を知っている人や、他の欧州諸国と比べた場合、税率が低いことを知る人は少ないことが分かった。また、スイス-EU協定で話し合われた利子課税について、概要を知っている人も非常に少なかった。

スイス連邦財務省が例年行っている、スイス国民の財政や金融に関する認識についての調査によると、銀行の守秘義務が、組織犯罪の資金などの捜索では無効になることを知っている人は65%と前年より3ポイント低下した。現行の守秘義務を存続すべきであるという意見51%と前年の57%を下回り、守秘義務の全面廃止を支持する人は15%(前年10%)だった。脱税の場合の調査などでは、守秘義務は負わず、情報を開放すべきであるとの意見の人も32%あり前年より7ポイント増加した。調査は15歳から75歳の1,500人のスイス人を対象にして4月末に行われた。

EUとの協定交渉を知らない

 銀行の守秘義務が、脱税に悪用されるとEUから批判され、代替案としてスイスは預金や有価証券などにかかる利子への課税案を提出。利子への課税で両者はほぼ合意に至っている。しかし、国民の中で、課税されるのは法人ではなく人であることを知っているのはたったの8%で、EU諸国の国籍をもつ人のみが対象であることを知っている人は24%だった。

 また、利子に対する課税であることを知っている人は14%で、第2のスイス-EU協定で難航し、大きくメディアでも取り上げられた利子課税に関する国民の知識は、非常に低いことが分かった。

財政問題に対する認識も不足

 スイスの財政赤字は、1,240億フラン(約10兆5,400億円)だが、赤字額を知っている人は35%にとどまった。14%の人が、赤字額は実際の半額だと答え、実際の2倍のおよそ2,400億フラン(約20兆4,000億円)と答えた人が12%いた。財政赤字の是正対策案として、公共サービスの縮小を提案した人が48%で増税は31%だった。

 また、スイスの税率は他のヨーロッパ諸国より平均して低い。正しく「より低い」と答えた人は32%にとどまった。

 スイス人は質実剛健で貯金好き。お金には関心があると思われているが、国の財政については、正確な知識がないことから関心は低いようである。

スイス国際放送 佐藤夕美 (さとうゆうみ)

財務省の調査は1,500人の15歳から74歳のスイス人を対象に行われた。
1997年から毎年発表される。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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