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連邦議会、遺伝子組み換え作物モラトリアム案否決

遺伝子組み換え作物は市場に出るか? swissinfo.ch

3日、国民議会(下院)が5年間の遺伝子組み換え作物の栽培・使用猶予期間(モラトリアム)案を否決した事を受け、スイス緑の党とグリンピースなど環境団体は10年間のモラトリアム案を国民投票に発議する方針を発表した。

遺伝子組み換え作物栽培・使用の5年間の猶予期間案は、支持派のグリンピースなど環境団体と、反対派のSyngentaなど企業側の間で大論争が繰り広げられてきた。11時間に及んだ討議の末、国民議会は反対90賛成83で同案を否決、かわって栽培の条件と使用表示の厳格な規制を制定する案を可決した。

現在、スイスでは遺伝子組み換え作物は栽培されていない。ミグロス、コープの2大スーパーも、遺伝子組み換え作物の在庫はない。が、議会がモラトリアム案を否決したことにより、研究目的での遺伝子組み換え作物の屋外栽培が、温室または実験室では必要な調査ができないと証明された場合に限り許可される事になった。また、商業用遺伝子組み換え作物の栽培へも道を開いたことになる。

が、定期的に行われる世論調査では、スイスの消費者の大多数は遺伝子組み換え作物に反対している。議決後、グリンピースのマリアン.キュンツレ氏は「議会は国民の意見を尊重せず、企業の願望に応えた。議会は今日の政治のあり方を証明した。企業の圧力はいかに大きいものか。」と失望の意を表明した。また、緑の党は、10年間の遺伝し組み換え作物栽培モラトリアム案を国民投票に発議する方針を発表した。

グリンピース・ヨーロッパは、スイスがモラトリアム案を承認すれば欧州諸国に一連の動きが出るのではと期待し、スイスの議論を注意深く見守っていた。グリンピース・ヨーロッパのロレンツォ・コンソリ氏は、「スイスの消費者はモラトリアムを望んでいる。国民投票にかけられたら議会の決定は覆されるかもしれない。」と期待する。
が、今後は家畜用飼料、ペットの餌、油、砂糖、ビタミン、小麦粉など遺伝子組み換え作物を含有する全製品は表示を義務付けられたことになったため、消費者は遺伝子組み換え作物を避けるのが容易になり、事実上使用禁止に等しい効力を発すると見る向きもある。

連邦議会、遺伝子組み換え作物栽培5年間モラトリアム案を否決。
現在スイスでは遺伝子組み換え作物は栽培されていない。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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