アイデアは、アクションに
「グローバル人道フォーラム」初の年次会議が、6月24~25日ジュネーブで開催され、コフィ・アナン会長は気候変動による被害への解決策とその早急な実行を訴えた。
アナン前国連事務総長が会長、前連邦外務省開発協力局長ヴァルター・フスト氏が事務局長を務める同フォーラムは、人道援助のプラットホームだ。初会合は「気候変動の人間的側面」という題目で、温暖化で最も被害を受ける「弱い人々」を助ける緊急対策を検討した。その多くは来年コペンハーゲンの国連気候変動会議での決定にも貢献する。
異なるセクターの専門家が一緒に討論
「温暖化が引き起こす被害は世界各地で今、実際に起こっている。普段一緒に席に着かない、異なるセクターの専門家が今回一緒に討論することで、温暖化の被害者、特に途上国などの弱い人々を救う解決策を探って欲しい」
と、アナン会長は開会演説で語った。また、温暖化を引き起こした「汚染者」はその代償を支払わなくてはならないとも主張した。
この意図に沿い、政界、金融・ビジネス界、軍隊、国連諸機関などからおよそ300人の専門家が集まり、討論の席に着いた。政界からは、国が消滅の危機に瀕しているモルディブのマウムーン・アブディ・ガユーム大統領、ビジネス界からは、バージン・エアーライングループのリチャード・ブランソン社長やコカコーラ社のイスデル・ネビル最高経営責任者 ( CEO ) 、国連諸機関からは、世界貿易機関( WTO ) のパスカル・レミ事務局長などハイレベルのリーダーたちが集まった。
テーマは温暖化が引き起こすさまざまな問題、マラリアなどの感染症の増加、水不足とそれが引き起こす紛争、砂漠化や食糧不足とそれが引き起こす移民、さらに政治的摩擦、海面上昇による国の消滅などを、人道援助の観点から討論し、アイデアを出し合った。
ビジネスパートナーの役割
「2日間で70近いアイデア、提案が出された。ここから40に絞るのがこれからの私の仕事だ」
とフスト事務局長は説明した。選抜された40のアイデアは、ドーハ・ラウンド( 多角的貿易交渉) に反映されるもの、2009年にコペンハーゲンで開催される国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議 ( COP15 ) に関係するもの、今後フォーラム自身が検討を重ねていくもの、ビジネスパートナーに渡されるものという、4つのカテゴリーに分類される。
ビジネスパートナーに託されるものに、例えばアフリカに焦点をあてた「すべての人のための気象データ ( weather data for all ) 」プロジェクトがある。
「世界気象機関 ( WMO ) などが把握する気象データは、政府に渡しても農民にまで降りていかない場合が多い。そこでグーグル社がインターネット上で伝えてもらえないか検討している」
とフスト氏は語った。さらに水問題も深刻で、コカコーラ社や大手食品会社のネスレ社なども水問題対策への参加に興味を持っているという。
以上のようなアイデアも、異なるセクターの人々が同じテーブルに着いた成果だとアナン会長は自負し、
「しかし、参加者の素晴らしいアイデアは今すぐアクションに移されねばならない。さらにアクションは目標を定めたフォローアップが必要だ」
と強調した。
一方、参加者の中には、フォーラム自体は高く評価しながらも、何月何日に計画を実行するという具体策が出にくい場であることを批判する人もいた。またハイレベルでのみの会合で、NGOなどフィールドで働く人のアイデアや、若い革新的な技術的アイデアなどを持つ人の参加がないこともメディアから指摘された。
2日間の第1回年次会合で出されたアイデアの成果は、来年6月17~18日の第2回年次会合で検討される。
swissinfo、里信邦子 ( さとのぶ くにこ )
2007年6月にスイス外務省( EDA/DFAF ) によって創設が決定された。
人道援助の対策、アイデアを出し合うプラットホームで、事務局はプログラムの決定、参加者の決定、コーディネーションなどを行う。
アナン前国連事務総長を会長、前連邦外務省開発協力局 ( DEZA/DDC ) 局長ヴァルター・フスト氏を事務局長に構成される。フォーラムのスタッフはおよそ20人。
ジュネーブ州が国連広場のそばの旧邸宅「ヴィラ・リゴ ( Villa Rigot ) 」を事務局として提供。
スイス政府はこのフォーラム創設に130万フラン( 約1億3000万円 )の資金援助をした。今後もスイス政府は資金的援助を続行するが、ほかの政府、企業からの援助も予定されている。
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