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エメンタール・チーズにAOC

地理的表示(AOC)への登録でエメンタール・チーズも保護されるようになる。 Keystone

大きな穴があるチーズといえばエメンタール。スイスのチーズの中でも最大の輸出量を誇る。もともとベルン州のエメンタール地方で作られていたことから、この名前が付いた。しかし、これまで地理的表示(AOC)に登録していなかったため、国外で生産されたものでもエメンタールとして販売されている。

連邦農業局は外国産からの保護を目的としチーズなど、生産地を示す地理的表示への登録を進めてきた。今回、エメンタールも登録すると決定した。

エメンタールはスイスの代表的なチーズである。しかし、外国産の安価なエメンタール・チーズにシェアーを譲りつつある昨今、AOCに登録することを連邦農業局が承認し、連邦挙げてスイス産のチーズを保護する動きになっている。AOCはワインなどのラベルなどによくみられるもので、生産地、品質などを保証する表示。エメンタールの登録については、外国からも含め64件の異議申し立てが起きたが、同局はすべてを却下した。決定に対しては30日以内に再度異議申し立ての機会が与えられている。

品質と伝統

 「AOCは製造元とスイスの伝統を守るための登録である。消費者は表示を見て品質が保証されていることが判断できる。農業政策上でも重要な決定だ」と農業局のマンフレッド・ベッチ部長は語る。エメンタールチーズは、スイス国内の270ヵ所の製造所で年間35,000トン製造される。このうちに27,500トンが輸出されるスイスの「大使」のような存在だ。

 スイスは欧州連合(EU)と地理的表示について相互協定の話し合いが進んでいるが、「登録することでEUに対してスイスの立場も明確に主張できる」とベッチ部長はみる。

AOCと認められるためには

 エメンタール・チーズと認められるためには、以下の5つの条件を満たす必要がある。1.原料はエメンタール地方の干し草を餌とした牛のミルクであること 2.搾ってから24時間以内の新鮮なミルクを使用すること 3.添加物は一切使用しないこと 4.指定された発酵菌を使用すること 5.最低4ヶ月発酵期間を置くこと。ただし、エメンタール地方については、1840年にエメンタールとしてチーズを製造していたドイツ語圏の地方、ルツェルン、フライブルク、チューリヒなども認める。 

 エメンタール・チーズを他の地域や外国で製造する場合は、「アルゴイ・エメンタール(AOC、ドイツ)」、「サボア・エメンタール(IGP、フランス)」などと生産地を明記することが求められる。管理はスイス・エメンタール協会が行うが、これとは独立した機関が製造許可を与える。現在270カ所に許可が下りている。

 スイス・エメンタールのほかにAOCに登録されているスイスのチーズとして、ベルン・アルプスチーズ、チチーノ・アルプスチーズ、グリュイエール、スブリンツ、などがある。

スイス国際放送 佐藤夕美 (さとうゆうみ)

エメンタール・チーズ統計(2003年)
生産量 32,000トン 
27,551トンは輸出
スイスのチーズ輸出の5割がエメンタール
最大の輸出国はイタリアで11,000トン

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