ゴットハート・トンネル火災、代替ルートでも事故
アルプスを南北に貫くゴットハート・トンネルで24日トラック同士の衝突から起きた火災は、発生から丸1日たっても消火されない。これまでに11人の死亡が確認され、行方不明者が128人との情報がある。一方、25日代替路線にあてた峠街道でも死亡事故が発生、欧州を南北に結ぶ路線は完全に遮断された。
ティチーノ警察によると、25日までに女性1人男性10人が遺体で発見された。10人はいずれも煙りによる窒息死で、4人は車内で、6人は車外で発見された。当局によると、火災発生以来連絡の取れない人は128人にのぼるが、全員がトンネル内にいた可能性は低いと見られる。ティチーノ州検察当局は事故原因の調査を開始した。これまでの証言では、ゴットハート・トンネル南側出入り口から1.5km付近で、トラックが前方から来たタイヤを満載したトラックに激突、炎上した。積み荷のタイヤに火が回ったことからトンネルが煙突と化して黒煙が走り、火は約300mにわたって燃え広がった。幸いにも、観光客を満載したバスをはじめ約100台の車輌はトンネルを逆走して脱出に成功した。25日、現場を訪れたモーリッツ・ロイエンベルガー大統領は、凄惨な現状に驚きながら、この状況で多くの人が難を逃れた事は奇跡だと述べた。
現場では、消防、警察、救助隊など約300人がヘリコプター5機、救急車60台を動員して救助活動にあたっている。警察は事故直後、全長16kmの世界で2番目に長いゴットハート・トンネルを封鎖したが、火災でトンネル内の温度が最高1000℃まで達したことから天井が部分的に焼け落ち、さらに天井落下が広がる危険が高いため、救助活動が難航している。
ロマノ・ピアッツィーニ・ティチーノ州警察長官は、ゴットハート・トンネルを今後2ヵ月から3ヵ月間は封鎖するとしている。アルプス山脈を南北に貫くゴットハート峠街道トンネルの通行止めに、当局は代替ルートを編成した。が、25日、代替ルートにあてたサン=ベルナルディーノ峠街道トンネル付近でも死亡事故が発生、スイスとイタリア間の陸路は完全に遮断された。サン=ベルナルディーノ峠街道では、トラックが前から来たミニバスに衝突、ミニバスの運転手が死亡した。ゴットハート、サン=ベルナルディーノ共に通行止めとなり、欧州の南北を結ぶ幹線道路を失った瑞伊国境のキアッソ検問所付近は、大混乱となった。また、ゴットハート・トンネルの長期通行止めに、周辺の村落は冬期の孤立を懸念している。
一方、スイス連邦鉄道は、ゴットハート鉄道トンネル路線とベルン州とヴァリス州を結ぶレッチュベルク・トンネルでのトラック積載車輌(車輌ごと乗る電車。アルプスのトンネル路線では一般的なもの。)を20%から30%増便した。
ゴットハート・トンネルの通行量は、1日平均18、000台。39人の犠牲者を出した1991年の仏と伊を結ぶモンブラン・トンネル火災以来、ゴットハート・トンネルの通行量は激増した。幅7.8mで二車線(片道1車線)のゴットハート・トンネルには、250m毎に約70人収容可能な緊急避難帯が設置されており、トンネルと並行する避難路があるが、消防や救急車輌の通行には狭すぎる。また、15分以内にトンネル内の空気を入れ替える換気システムがある。毎年平均5回火災が発生するが、陸運関係者の間では安全なルートと評価されている。
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