スイスコムのCEO辞任
スイスの通信大手スイスコムのCEO(最高経営責任者)、イェンス・アルダー氏が1月20日をもって6年間勤めた社長職を辞し、後継者に携帯部門のスイスコムモーバイルの社長、カールステン・シュローター氏が就任することになった。
アルダー氏の辞任は、スイスコムの筆頭株主であるスイス政府とスイスコムの国外経営の戦略に関しての意見の不一致からきた。
イェンス・アルダー氏(48歳)は1998年4月に経営陣の一人としてスイスコムに入社、1999年にトニー・ライス氏に続いてCEOに就任する。アルダー氏の6年間の指揮のもとで「当社はスイスの通信市場のリーダーとしての地位を勝ち取った」とスイスコムは説明する。辞任の理由としてスイスコムの発表では「スイスコムの海外進出に関するスイス政府の方針変更の結果」としている。
アルダー氏は就任中に職員の4分の1の人員削減(1999年には2万400人2004年末には1万5660人)に取り掛かり、後任者シュロテル氏は赤字なしの事業を引き継ぐことになる。
通信事業の自由化が行なわれた1998年以来、国営テレコムはスイスコムと改称され株式に導入されるが、現在でもスイスコムは国内市場で66.1%のシェアを誇る。これはアルダー氏がラストマイルなど最後まで元独占市場の地位を守りぬいたためでもある。
海外進出に待ったをかける政府
2005年の11月、スイスコムはアイルランドの通信大手エアコム(元国営企業のテレコム・エラン、1999年から民営化)を買収する交渉を進めていた。ところが同年の11月23日、スイス政府は保有している66.1%の株を売る民営化計画を発表。翌日、政府はスイスコムの外国企業の買収を禁止したため、この交渉が水の泡となる。アルダー氏はこの時もスイスコムの成長を維持するには外国に投資し、国内の欠損を償う必要があると主張し、政府と衝突していた。
新しいスイスコムの顔
アルダー氏の後任、ドイツ人のカールステン・シュローター氏(42歳)は今までスイスコムモーバイルの社長だった。スイスコムには2000年に入社した。その前はスイスコムの元子会社デビテルに在職し、パリ、ドイツで働いていた。コンピューター技師畑の出身だが、企業経営の専門家でもある。
なお、スイスコムの重役会は政府の民営化プランに賛成で「国の支配下にあると通信事業の発展にブレーキをかけかねない」として民営化の促進を期待している。
swissinfo、外電 屋山明乃(ややまあけの)
- 2004年末の電話通信分野ではスイスコム(Swisscom)か市場の61%、サンライズ(Sunrise)が21.3%、オレンジ(Orange)が17.7%を占めた。
- スイス政府はスイスコムの66%の株主であり、株価にすれば約170億スイスフラン(約1兆5000万円)に相当する。
- 欧州と比較すれば、ドイツ政府はドイツテレコムの37%、フランス政府はフランステレコムの33%の株を所有している。
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