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家の中にバイオ汚水処理場

家庭で汚水洗浄装置を取り付けられる Keystone

汚水処理場を建設するには、莫大なお金と労力がかかる。土地も必要だ。ところが、スイスでコンパクトな汚水処理装置が開発された。簡単に家庭の地下室に取り付けられるため、下水道が通っていない田舎の地域にも対応できる。バイオの力で浄化された水は、その家でまた再利用される。

これを使えば、人里離れた地域でも汚水処理の問題を解決できるばかりか、政府の下水道敷設コストも大幅に節約できる。しかも環境に優しい。

この新製品は、スイス国内の家庭で試験的に使われているところで、まだ一般には発売されていない。試験プロジェクトにはスイス連邦政府、連邦環境技術研究所、民間の企業などが関わっている。

スイス連邦環境技術研究所のハンスリューディ・ジークリストさんは胸を張る。「汚水から尿を分離させ、きれいな家庭用水を作り出すことができます。これは非常に難しい技術で、世界でも他に類を見ないものです」

まず、化学薬品の代わりに細菌を使って汚水を分解し、浄化する。この細菌は、取り付けられた膜でろ過され、それ以上先には行かない。これで衛生的に完全にきれいになった水は、トイレや庭の水などの家庭用水に再利用される。今まではこのような水も飲料水が使われていた。試験的にこの装置を使っている家庭では、3割も飲料水の使用量が減った。再利用の水が補ったためだ。しかも、このプロセスで汚水処理装置から出た有機物は、堆肥として使うことができる。ごみにはならないわけだ。

スイスでは、今までも集めた汚水をハイテク技術で有機肥料に加工していた。ところが、狂牛病の影響が騒がれてからは、街の汚水処理システムによって出された有機物は焼却炉で焼かれるか、ごみ埋立地に運ばれるよう義務付けられている。

コスト節約

家に取り付けるタイプの、この新製品の販売価格は2万フランから3万フラン(約180万円〜270万円)。今までは、山の上などの遠隔地の村で垂れ流しになっていた汚水がこれで解決するわけだ。

この製品に格別の関心を示しているのが、中東欧諸国だ。旧共産党の政策で、遠隔地に町や村が作られたおかげで、汚水処理に悩む地域は多い。この新製品を使えば、政府が下水道などを建設する必要がなくなる。

ジークリストさんによると、チェコから1件引き合いが来ているほか、ポーランドでは来年、汚水処理に関する会議が開かれ、この製品を参加者の前でデモンストレーションすることになっている。
swissinfo、フィリッぺ・クロプフ 遊佐弘美(ゆさひろみ)意訳

-価格は2万〜3万フラン(180万〜270万円)。
-試験的にこの浄化装置を付けた家では、飲み水が3割も節約できた。

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