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開発援助で求められること

子供たちを対象として、ゲームやスポーツをさせることで、津波のトラウマから彼らを解放する試みもある。 Keystone

本年は連邦開発協力局(DEZA/DDC)にとって要の年となる。今年中に財政改革が行われなければ、スイスの対外における開発援助活動にも支障が出るかもしれない。国連が掲げる目標「15年までに貧困を半減する」の達成も危うい。

貧困層に対するローン(マイクロファイナンス)やスポーツを通して途上国への開発協力など新しい手段での援助の必要性が高まっている。

「2015年までに貧困者数を半減するという国連が掲げた目標は、今後、活動内容の見直しをしない限り達成できないだろう」とDEZA/DDCのヴァルター・フスト局長は、この程開かれた記者会見で語った。富める国と貧困国の間の連携をより強めることや、開発援助に必要な資金の調達に新しく革新的な方法を取り入れる必要性が高まっている。

富める国と貧困国の格差是正

 「スイス政府にも開発援助活動については新しい考えを持って対応して欲しい」とフスト局長は訴えている。たとえば現在、石油の売買に課税することや開発援助のために債券を発行することなどが検討されている。ただし、「債権で賄うということは、経費の支払いを先送りすること。わたしたちの世代が請け負うべき開発援助を次の世代に尻拭いさせることには疑問がある」と、フスト局長は債券発行には慎重な態度だ。

 スイスは財政難であるにもかかわらず、懸念されていた援助総額は前年と同額となった。「カットされなかっただけよかった」とフスト局長。一方、途上国援助に当てるスイスの国家予算は、国内総生産の0.4%とするという目標が守られたことはない。DEZA/DDCは不足分は寄付などで賄っているものの、その調達ははかどらない。

 しかし、被災諸国に対して巨額の援助金が集まったスマトラ沖大地震でも証明されたように、全世界に安全で平和な社会をもたらすためには、富める国が貧困国を援助し、国家間の貧富の差を縮めることが必要だ。「先進国の政策として開発援助は重要な意味がある」とフスト局長は語る。

スポーツとマイクロファイナンス

 貧困層や低所得層などに無担保で融資する小規模金融、マイクロファイナンスを開発援助機関が導入することや、スポーツの振興といった新しい形の援助も問われている。

 スイスは、イラン地震で破壊されたバーム市のスポーツ競技場を建て直し、青少年が再びサッカーやバレーボールを楽しめるようにした。スポーツは天災で受けた精神的ダメージを緩和することができる。また、世界の片隅に追いやられているような諸国が他国に受け入れられる手段として有効だ。さらに、政治的に対立している国家がスポーツを通して交流する機会を与えられるという利点もある。

 融資対象を絞ったマイクロファイナンスを、国や援助団体が請け負うことも重要だと考えられる。たとえば、スマトラ沖地震で収入が途絶えた漁師や小売店経営者などへの融資は、自然災害からの復興を促進する役割があり意味のある援助活動のひとつである。「スイスはスリランカとインドネシアの被災者に住居を建て直すため、現金の融資を行い、被災地から歓迎された」とフスト局長。

 スイスはDEZA/DDCおよび経済管轄局の活動の一環として、20カ国においてマイクロファイナンスに年間2,500万フラン(約22億円)を投資している。

swissinfo エティエンヌ・シュトレーベル 意訳 佐藤夕美 (さとうゆうみ)

本年のスイスの途上国への援助

2月からマイクロファイナンスの全国巡回展示会
5月からマイクロファイナンスのパンフレットを配布
9月 ニューヨークでM+5サミット
12月 スイスで第2回国際スポーツ援助会議

DEZA/DDC 
国内外で 550人が援助活動を行っている。
2004年の予算13億フラン(約1,130億円)
スイス国内外の人道・開発援助団体や国際機関と連携

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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