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限界に挑むピカール家3代

海洋学者で冒険家、発明家、そしてエコロジストでもあったジャック・ピカール氏

(Keystone)

世界で一番深くまで海底に潜水した、海洋学者で冒険家、発明家のジャック・ピカール教授が11月、86歳の生涯を閉じた。追悼を述べた息子ベルトラン・ピカール氏は、熱気球で世界一周20日間の記録を作った人物。現在ソーラー飛行機で世界一周を計画している。

一方、ジャック・ピカール氏の父、オーギュスト・ピカール氏も、水素気球で世界で初めて成層圏まで達した発明家で冒険家。漫画タンタンの登場人物のモデルにもなった。ピカール家は3代続く発明家・冒険家の家系だ。

地球の一番低い所へ

 「世界最深のマリアナ海溝やメキシコ湾流の海、レマン湖などに潜る父の姿を眺めていた子どもの頃、必ず良い成果を抱えて戻ってくると確信していた。しかし今回は、父がどこに出かけたのか、よく分からないまま、戻ってこないことだけは確かだ」
 とベルトラン・ピカール氏は追悼文を述べた。

 彼が深く愛したレマン湖畔の村、トゥール・デ・パイルズ ( La Tour-de-Peilz ) で息を引き取った、海洋学者で冒険家、発明家のジャック・ピカール教授を
「彼の父オーギュストと共に、この2人のスイス人は地球の1番高い所と1番低い所にスイスの国旗を掲げてくれた」
 とヴォー州知事パスカル・ブルリ氏は語った。

 科学的知識を絶えず実際面に応用していたこの科学者の死で、スイスの科学の歴史は1つのエポックを終えた。1960年、マリアナ海溝を人類で世界一深く、1万916メートルまで潜ったジャック・ピカール氏は、挑戦に挑む勇気を持ち合わせていた。「計算の正確さに、最大の信頼を置くこと」をモットーにしていた。そして先駆者だとの賛辞に、謙虚にも
「ほかの人が僕より先に新しいアイデアを思いつかないといっても、それは僕の責任ではない」
 を口癖にしていた。

 1万916メートルの深海に潜り、平たい魚が携帯したランプの光に照らし出されたとき、ジャック・ピカール氏は自分の目を疑い、
「こんな深海に魚がいるとは。海にある放射性廃棄物を避けて逃れてきたのは間違いない」
 と確信する、海の汚染にも敏感なエコロジストだった

漫画『タンタンの冒険』のビーカー教授

 ジャック・ピカール氏が地球の1番低い所まで行ったとすると、その父オーギュスト・ピカール 氏は、世界で初めて地球の1 番高い所に行った。1932年、この物理学者、発明家、冒険家は、自分で設計した水素気球で世界で初めて成層圏 ( 1万6201 メートル ) にまで達した。

 彼は、有名なエルジェの漫画『タンタンの冒険』シリーズに登場する丸めがねの愉快で、耳がよく聞こえない発明家、ビーカー教授のモデルにもなった。
「当時教鞭を取っていたブリュッセルの町で父はエルジェに出会ったが、2 人は言葉を交わしたことはなかった。父は耳は聞こえすぎるくらいの人で、2カ国語で同時に行なわれている2つの会話をはっきりと聞き取ることができた」
 とジャック・ピカール氏は証言していた。

 ただ少々注意散漫なところがあって、道で出会った自分の学生に「君はどっちから来たかね」と聞き、学生が「右から」と答えると、「あっそう。僕はもう昼食は取ったがね」とぶつぶつと答えたという逸話が残っている。

 この伝説的な発明家の孫にあたるベルトラン・ピカール氏は、精神科医だが、祖父や父の遺伝子を受け継ぎ、1999年水素気球で世界一周20日間の記録を作った。そして今、ソーラー飛行機「ソーラーインパルス」で2011年に世界一周を計画している。2009年春には試作品で第1回目の飛行を行なう。

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ピカール家の冒険家1代目、オーギュストとジャン・ピカール

オーギュスト・ピカール ( August Piccard ) 氏は物理学者、発明家、冒険家で、自分で設計した水素気球で世界で初めて成層圏 ( 1万6201 メートル ) にまで達した。

彼は双子で、もう1人のジャンとは大学まで、常に一緒だった。離れ離れになったのは第2次大戦中。ジャンがアメリカのミネアポリスで航空力学を教えることになったからだ。2人は何カ月間も連絡が取れなかったが、再びコンタクトが取れたとき、同じときに、同じ発明をして、同じ内容の手紙を送ろうとしていたことが判明したという。

双子兄弟はチューリヒ連邦工科大学 ( ETHZ/EPFZ ) で、オーギュストは物理学を、ジャンは化学を専攻した。2人ともジョークが好きで、1 人がまず理髪店に出かけ、24時間後にもう1 人が出かけて「おじさん、髪の刈り方が悪かったので、もう伸びてしまったよ」と言って、理髪店主を驚かせた。 

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ピカール家の冒険家2代目、ジャック・ピカール

ジャック・ピカール ( Jacques Piccard ) 氏は海洋学者で冒険家、発明家。父オーギュストは、気球で成層圏に到達した後に、気球の原理を応用して深海観測船を発明し、海底3150メートル ( 1953年 ) まで潜った。この父の遺業を継ぎ、11960年、マリアナ海溝を人類で世界一深く、1万916メートルまで潜った。

さまざまなタイプの潜水艦を発明するが資金不足のため完成に至らなかった。

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ピカール家の冒険家3代目、ベルトラン・ピカール

ベルトラン・ピカール ( Bertrand Piccard ) 氏 は精神科医で気球搭乗者。催眠セラピーが専門でスイス医学催眠学会に属して教鞭をとる。常に人間の限界に立たされたときの行動心理学に興味を持つ。

幼い頃から祖父などに連れられ、飛行に興味を示す。1970年代からハングライダーや超軽量飛行機に乗り、1985年ハングライダー飛行の欧州チャンピオンになる。

1992年クライスラーチャレンジで気球レースに優勝。1999年には熱気球で無着陸世界一周を19日間と21時間47分で行なった。この体験をつづった著書『20日間で世界一周』はベストセラーになった。

現在、ソーラー飛行機「ソーラーインパルス」で2011年世界一周を計画している。飛行機の翼長は61メートル。ここに面積にして約200平方メートルの大量のソーラーパネルを搭載する。2011年の最終飛行を行なうために、2009年春に試作品が第1回目の飛行を行なう予定になっている。

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