スイスの自殺ほう助団体の会員数は増え続けている
Keystone / Georgios Kefalas
スイスの自殺ほう助団体の会員数が増えている。国内主要3団体の会員数は昨年末で計17万6493人となり、前年に比べ1万人以上増加した。昨年中、3団体のサービスを利用して自死した人は1503人に上った。国内最大の組織エグジットは「自殺ほう助への需要は依然として大きい」という。
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エグジットによると、同団体のサービスを利用し自死した人は913人で、前年に比べ51人増加した。理由の36%は末期がん、25%が加齢に伴う多疾患罹患、9%が慢性疼痛で、前年とほぼ同じ傾向だった。82%が自宅で自死した。
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会員数も毎年数千人規模で増え、2020年末時点では過去最高の13万5041人(前年比6829人増)に上った。同団体はドイツ語圏、イタリア語圏のスイス国籍保有者、在住外国人の会員にサービスを提供している。
同団体は、需要の高まりの背景に社会の高齢化があると指摘する。昨年、同団体で自殺ほう助を受けた人の平均年齢は78.7歳で、徐々に上昇している。
同団体によると、新型コロナウイルス感染症を理由としたケースはなかった。ただパンデミック(世界的大流行)により、大規模な行動制限措置が敷かれた昨年3月20日~5月20日は、活動を縮小せざるを得なかったという。
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フランス語圏にある別団体エグジットA.D.M.Dの会員数は昨年、3204人増の3万1070人となった。同団体のサービスを受け自死する人も増加傾向にあり、昨年は369人(前年は352人)だった。
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国外居住者の自殺ほう助も受け入れているディグニタスも、会員数が前年比560人増の1万382人となった。ただコロナによる渡航制限の影響により、自殺ほう助で自死した人は221人と前年より35人減った。
スイスでは、医師など第三者が患者に直接薬物を投与するなどして死に至らせる「積極的安楽死」は法律で禁止されている。認められているのは、医師から処方された致死薬を患者本人が体内に取り込んで死亡する「自殺ほう助」だ。
自殺ほう助を受ける条件は団体によって若干異なるが、大まかには以下の通り。
- 治る見込みのない病気
- 耐え難い苦痛や障害がある
- 健全な判断能力を有する
自殺ほう助以外に苦痛を取り除く方法がないこと、突発的な願望でないこと、第三者の影響を受けた決断でないことも考慮される。
精神障害や認知症を持つ人も、健全な判断能力があると認められれば自殺ほう助を受けられるが、実施に至るケースはまれだ。
自殺ほう助を受けるにはまず団体に会員登録(年間40~80フラン、約4600~9200円)し、医師の診断書や自殺ほう助を希望する身上書を指定された言語(英語・独語・仏語など)で提出する。団体の専門医が審査し、認められれば許可が下りる。申請から自殺ほう助に至るまでは通常数カ月かかる。
自殺ほう助は通常、医師から処方された致死量のバルビツール酸系薬物を患者本人が点滴のバルブを開けるか、口から飲み込んで体内に取り込み、死亡する。スイス国内居住者では自宅を実施場所に選ぶ人が多い。
スイスでは1940年代から、刑法により「利己的な理由」ではない自殺ほう助が合法化された。
全ての死因を含む国内の死亡者数は年間平均約6万7千人。自殺ほう助で命を絶つ人はこのうち約2%を占める。
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