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段階的脱原発や再エネ促進など、スイスのエネルギー転換を国民に問う

スイスにある5基の原子炉の発電量は全体の3分の1を占める Keystone


福島第一原発事故を受け、スイス政府はエネルギー転換を目指す改正法案「エネルギー戦略2050」を立ち上げ、昨年秋の国会でようやく成立させた。原発に関しては、新しい原発は作らないが既存の5基の原発の寿命は限定しないとする「ゆっくりとした段階的脱原発」を決めている。しかしこの法案に対して反対が起こったことから、最終的に5月21日の国民投票で国民の判断を仰ぐ。

このコンテンツは 2017/04/10 11:00
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エネルギー戦略2050他のサイトへは、 スイスの包括的なエネルギー転換を図るものだ。そのため、段階的脱原発だけではなく、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の促進やエネルギーの効率的利用を進めていく。政府の目的を一言で言えば、「スイス国内での十分で確実なエネルギー供給を保障し、同時に外国からの化石燃料の輸入を削減すること」だ。

再エネに関しては、太陽光発電や風力発電、バイオマス発電に加え、水力発電の促進も考慮されている。水力発電はスイスの主な発電源であったにもかかわらず、コスト面で採算が取れず最近赤字が続いていた。また、エネルギー戦略2050には、建物や自動車、電気製品のエネルギー効果を高める政策も含まれている。

ところがこうした大きなエネルギー転換に初期から反対していた右派の国民党が、エネルギー戦略2050に反対し、レファレンダムを起こした。レファレンダムとは新法が連邦議会(国会)で承認されてから、100日以内に有権者5万人分の署名を集めれば国民投票を行うことができる「権利」だ。

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結局、国民党は昨年末に5万を超える6万8千人分の署名を集めレファレンダムを成立させた。こうして、国会で2年半も協議を重ねてようやく承認されたエネルギー転換の法案が5月21日に国民投票にかけられ、国民の判断を仰ぐことになった。

ゆっくりとした段階的脱原発

環境・エネルギー相のドリス・ロイトハルト氏はエネルギー戦略2050のキャンペーン開始の際に「エネルギー分野は、世界的にも激変を遂げた。極端に下がったコストや新しいテクノロジーの発展がこの変化を引き起こした」と述べ、さらに次のように強調した。

「(エネルギー戦略2050という)新しい改正法によって、政府と連邦議会は将来のスイス国民へのエネルギー供給を保障し、同時に温暖化対策を行いながら、雇用も増やしていく」

二つのパッケージ

エネルギー戦略2050は、正確に言えば二つの分野、ないしは二つのパッケージに分かれる。一つ目は、段階的脱原発、再生可能エネルギーの推進やエネルギーの効率的利用の促進を目指すもので、これが5月21日に国民投票にかけられる。

二つ目は、気候変動対策や電気消費にかかる税金制度他のサイトへだ。ガソリン、化石燃料、電気消費にかかる税金に関する改正法だが、下院で昨年の3月8日に否決されており、実質的にこのパッケージは失敗したとみなされている。

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「エネルギー転換を図ることは、スイスにとってまたとない好機だ」と語りロイトハルト氏を支援したのは、再エネとエネルギーの効率的利用を促進する機関AEE Suisseの所長ステファン・バツリ氏だ。同機関は、エネルギー戦略2050を具体的に支えるグループのメンバーでもある。

バツリ氏はこう続ける。「スイスのエネルギー生産のインフラは、古くなっていく一方だ。2年前から点検・修理のために停止している世界最古のベツナウ原発Iがその良い例だ。従って、インフラを新しくしていかなければならない。スイスの原発は、あと10〜20年は稼働を続けるだろう。しかし、その間に原発に取って代わる再エネを促進していかなければならない。だがこれは革命ではない。すでに起きている変化を継続させるに過ぎない」

これに呼応するように、緑の党のアデル・トレンス・グマ連邦議会議員は連邦議会の討論の中で次のように述べている。「地域分散型の確実でクリーンなエネルギーへの転換を個人も企業も望んでいる。再エネの固定価格買い取り制度の枠の中で、資金的支援を望むウェイティングリストに登録されているプロジェクトの数は驚くほど多い。それらが実現されれば、その発電量の総計は古いスイスの原発の3基分に匹敵する」

もしエネルギー戦略2050が可決され、再エネへの転換が国民によって支持されれば、電気代は、1キロワット時につき1.5サンチームから2.3サンチームに値上がりし、 4人家族では年間40フラン(約4400円)の値上がりになると、ロイトハルト・エネルギー相は見積もる。

もし太陽が輝かなければ

ところが、「この40フランの値上がりは、少なく見積もりすぎだ。国民を騙している」と主張するのは、国民党のアルベルト・レシュティ党首だ。エネルギー戦略2050には、建物や自動車、電気製品のエネルギー効果を高める政策も含まれているが、レシュティ氏は「こうした政策でエネルギー消費を半分に抑えるのは高くつく」と続ける。

レシュティ氏によれば、スイスの半分の家庭が石油を暖房に使っており、それを何か他の暖房システムに変えたり、また自動車が使っている道路を半分にしたりすれば、多くのエネルギーが節約できるという。いずれにせよ、エネルギー戦略2050に反対する委員会の試算によると「同戦略は2千億フランかかり、電気代は4人家族では年間3200フランになる」という。この試算に対しロイトハルト・エネルギー相は、「全くの誤算だ」と憤る。

こうした試算の違いはさておき、反対派が懸念するのは「再エネで十分な電力が供給できるか?」というものだ。「冬は外国から電気を輸入しなくてはならないだろう」と言うレシュティ氏は、原発を維持したい考えだ。

「もし太陽が輝かなければ、もし風が吹かなければどうするのか?」と言うのは、エネルギー戦略2050に対し最も過激に反対する人の1人、急進民主党のクリスティアン・ヴァッサーファーレン連邦議会議員だ。ヴァッサーファーレン氏は、再エネを財政的に支援したり、様々な規則を制定したりする代わりに、エネルギーの完全に自由な競争市場を支持している。

脱原発を国民は支持

こうしたエネルギー戦略2050に対する賛否両論を聞きながらも、最終的判断を下すのは、国民だ。

実は、スイスでは原発に関する国民投票は、過去に何度も行われてきた。昨年11月には緑の党提案の「脱原発のイニシアチブ」に対し、スイス国民は判断を迫られた。 これは、新しい原発の建設を凍結し、また原発の寿命を45年に限定することで、2029年に脱原発を目指すものだった。今回問われているエネルギー戦略2050との違いは、イニシアチブがはっきりと29年に脱原発を謳っている点だった。

結局、これは54.2%の反対で否決されたが、この時に行われたアンケートによると、国民の4人に3人が「原発のないスイス」に賛成しており、ただ、イニシアチブが訴える29年の脱原発が、時期尚早だったというのだ。

こうした原発そのものには反対の多くの国民が、5月21日の国民投票で政府と連邦議会が提案する「エネルギー戦略2050」に賛成票を投じるのだろうか?今確実に言えること。それは彼らの動向が今回の国民投票の焦点になるということだ。

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