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スイス−EU第2交渉 終結へ

スイス−EU第二交渉は、難航の末やっと終結に至る。 Keystone

3年間に渡る交渉の末、スイスと欧州連合(EU)の第二条約が13日、25カ国のEU大使の会合で承認を得た。週明けにはEU各国の外務大臣会議で承認される見込みで、二国間交渉はほぼ終結した。

シェンゲン・ダブリン条約への加盟が認められ、EUとの人の行き来が自由になり、EU諸国以外からの難民希望者の管理の相互協力が得られるようになる。スイスの銀行の守秘義務も無期限に決定を引き伸ばされることとなり、スイスの主張がほぼ全面的に受け入れられる結果となった。

「交渉は終結段階にあり、われわれは非常に満足している」とジョゼフ・ダイス大統領は語った。12日にもたらされたEU大使の会合の決定を受け、来週月曜日にはEU各国の外務大臣会議で承認される。
一方、スイス政府は議会の承認を得るため、月曜日には内閣臨時会議を開き、議会への提案方法が検討される模様。第二条約は10項目あるが、包括的に提案するのか、条約ごとの提案になるのかが焦点となる。                                                                                                           

スイスの主張が通る。

 第二条約の内容は以下の通り。1.密輸入など、通関での詐欺行為対策における両者の協力 2.加工農産物(チョコレート、ビスケット、スープなど)の貿易の自由化促進 3.若者の交流促進 4.環境保護(コペンハーゲンのヨーロッパ環境エージェンシーへの加入) 5.統計の統一(EUROSTATとの連携) 6.報道(特に映画業界促進計画への参加) 7.退職公務員の税金調整 8.サービス業特に金融業の自由化 9.難民問題(シェンゲン・ダブリン条約への加盟)10.銀行顧客の利子課税。

 特に、9.と10.については難航したが、スイスには有利に交渉が進んだ。たとえば将来、シェンゲン・ダブリン条約の内容に変更があり、スイスがこれに合意しないとしても、スイスは条約から脱退する必要はない。スイスはEU非加盟国にもかかわらず、拒否権が認められたようなものである。これにより、シェンゲン条約に大きく関連する、銀行の守秘義務問題は無期限で延長されたようなものである。同じような銀行制度を持つルクセンブルクはこれまで、非加盟国のスイスが銀行の守秘義務を継続できるのは不当として反対していた。しかし、EUはEU以外の諸国とも銀行を巡る同問題で交渉することが前提とされたため、ルクセンブルクも合意した。

メディアおよび政党反応 

 02年6月1日に発効した第一条約でも、スイスはその意向をほぼ全面的にEU側に認めさせ「スイスの交渉代表者の手腕が証明された」と本日付ドイツ語圏日刊紙「ノイイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング」は評価している。一方、ドイツ語圏のターゲスアンツァイガーやフランス語圏のヴァンクアトロウール紙などは、今回の交渉がスイスにとって有利に終わったとしても、「EUに加盟しない限り交渉を続けていかなければならない運命にある」と最終解決法ではないと指摘。さらに「交渉の中ではお金が最大の関心事で、ビジョンは二の次だ」と手厳しい。

 与党4党のうち国民党以外の政党は、交渉の終結を歓迎している。条約は「EU側の建設的な姿勢が伺われる。課税問題でスイスの例外が認められたことは歓迎する」(急進党)、「政府が国民の意向に従い、二国間交渉で成功を収めた」(キリスト教民主党)、「二国間交渉は回り道で、スイスは最終的にはEUに加盟すべきであるが、交渉の終結は歓迎する」(社会民主党)などの意見が聞かれた。一方、国民党は、「スイスが譲歩した点が多くあり遺憾だ。シェンゲン・ダブリン条約は国際条約であり国民の批准が必要」と、今回の終結がスイス国民にとって決定したわけではないと反論している。

スイス国際放送 佐藤夕美(さとうゆうみ)                                                                                                                         

<第二条約の項目>
– 通関での両者の協力
– 加工農産物の貿易自由化
– 若者の交流促進
– 環境保護
– 統計の統一
– 映画業界促進計画の参加
– 退職公務員の税金調整
– サービス業の自由化
– シェンゲン・ダブリン条約への加盟
– 銀行顧客の利子課税

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