EU、スイス銀行秘密保持法に制裁の圧力
ルクセンブルクで8日に開かれたEUスイス蔵相会議で、国民が第3国に持つ定期預金の利息収益に課税しようとするEUは、スイスが非居住者が保有する銀行口座に関する情報公開協定に合意しなければ制裁も辞さないと強きの構えを見せた。
一方、フィリガー蔵相は「制裁は全く受け入れられない。スイスは政策変更しない。」と反発した。
「スイスは友好国だから、我々も慎重に対処せねばならない。」とボルケシュタインEU財務担当理事は会議終了後の会見で述べ、制裁を導入するとしても2010年からだと語った。
国民が第3国に持つ定期預金の利息収益に課税しようとするEUは、一昨年まとめたキャピタルゲイン税に関する合意協定(非居住者の脱税を防ぐため、非居住者の所有する定期預金口座に関する情報公開の合意)または同等の手段を非加盟国にも要請している。現在EU加盟国の国民は、非加盟国に保有する定期預金からの利息収益には課税されないため、租税逃避の目的で米国、スイス、リヒテンシュタイン、モナコ、アンドラ、サンマリノに口座を設けている人が多い。
スイスは「情報公開制度は銀行秘密保持法に反する」として拒否しているが、フリーデン・ルクセンブルク財相は、スイスが協力姿勢を見せない限り、EUとしてはスイスに第2次スイスEU相互通商合意協定の交渉停止、現行の通商合意協定の解消、EU域内でのスイス銀行の特定の業務の停止等の制裁を決定する可能性があると述べた。これに対し、スイス銀行教会のジェームス・ネイソン広報官は「制裁は受け入れられない。第一、スイスはいったいどんな悪い事をしたというのか。何もしていない。いかなる協定にも違反していないし、人権も侵害していない。」と反論した。
が、8日の会議では最終決定はされず、スイスとの交渉は12月まで続けられ、それまでは現状維持で行くと、フリーデンルクセンブルク財相は語った。8日の会議では、スイス制裁に関してEUの全蔵相が合意しているのではない事が明らかになった。オーストリアのグラッサー蔵相は、オーストリアは非加盟国が合意した場合には税のための情報交換をする準備があるとしているだけとし、スイス制裁は反対派を強化するだけだと、制裁案に否定的だ。
グラッサー蔵相が指摘した通り、スイスは昨年、EUの租税逃避防止への協力策としてEU加盟国国民がスイスの銀行に保有する資産への源泉課税制度適用を提案した。銀行が外国人投資家の利息収益から源泉徴収し本国の税務署に送るという案で、ネーソン・スイス銀行協会広報官は、この制度は十分適切な手法でスイスの銀行秘密保持法を取りざたされる必要は全くないとしている。「協力を求めているのはEUだ。スイスはそれに対し十分有効で協力的な制度を提案している。」とネーソン氏は主張する。
が、ブラウン英蔵相は「銀行秘密保持法は絶対必要なものではない。我々は真剣だ。」とスイスにキャピタルゲイン税に関する合意協定署名を強く迫った。
フィリガー蔵相は8日、同地で開催された欧州自由貿易連合(EFTA)会議にも出席した。情報公開制度への反対の理由をきかれたフィリガー蔵相は「我が国では源泉課税制度というより良い制度を採用しており、60年間にわたっていかに有効であるか証明済みだ。」と述べた。
EUはスイスに対し、スイス国内の銀行に口座を保有するEU加盟国国民の租税逃避阻止のための情報公開制度への参加を要請している。ルクセンブルクで開催された8日の蔵相会議で、EUはスイスが拒否するならば経済制裁も辞さないと圧力を強めた。が、フィリガー蔵相は断固拒否、スイス銀行協会も先に提案した源泉課税案で十分と主張した。
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