時計宝飾展開幕 バーゼルとジュネーヴのライバル意識
世界から注目を浴びるスイスの時計宝飾メッセのシーズンになった。バーゼルは本日から開幕。19日からはジュネーヴでも開催され主催者間の競争意識が高い。バーゼルはその規模を誇る一方、ジュネーヴは高級時計と宝飾に限り、質で勝負。
前年のバーゼル展はチューリヒにも会場を設け、バーゼル/チューリヒ時計宝飾展と名を打って拡大したものの、サーズ(重症急性呼吸器症候群)の蔓延が懸念され、香港などからの参加に当局のストップがかかった。本年の参加数は2186社。昨年、参加を拒否されたメーカもこぞって出展している。
バーゼルかジュネーヴか。過去15年来、時計宝飾展はほぼ同時に2ヵ所で開催され、両者のライバル意識が高い。「バーゼルではソーセージを焼く匂いがする」とドイツ文化を揶揄し、上品さにかけるという声が聞こえると思えば、「たった16社が参加するだけのスノッブな自己満足」とジュネーヴ展への軽蔑もある。しかしこうしたライバル意識も、業界の業績が順調だったからこそできる「贅沢」。2002年まで順調に伸びてきたスイス時計の輸出は2003年になって、イラク戦争、サーズ(重症急性呼吸器症候群)の影響も影を落とし、金額ベースで前年より4.4%減少し、92億9,200万フラン(およそ7,620億円)に留まり、輸出個数で見ると、8.4%減少し22億個だった。業績不振を目の前に、スイスの時計業界の結束が必要とされている。
バーゼルは世界最大規模
バーセルの時計宝飾展は「バーゼルワールド」と呼ばれ、昨年のようにチューリヒに支部を設けることはせず、バーゼルに留まった。44カ国から出展する参加社数は2186社。有名ブランドで参加しないのはジュネーブに出展する16社のみ。訪問客も例年の8万人以上を見込む、世界最大規模の時計宝飾展である。時計の種類も「車で言えばロールスロイス」(チューリヒの代理店店員の弁)に相当するパテック・フィリップから香港製で値段が1ドルのデジタル目覚し時計まで。オーソドックスなデザインから前衛的なものまでと多様であるのが特徴。
現在、高級時計はスイス製が断然優勢だが、250フラン(2万円)以下の安価な時計は、コストが安いアジア製にスイス製が押されているようだ。安くともスイス時計は質がよいというこれまでのマーケッティングに加え、さらなる工夫が求められているように見受けられる。
ジュネーヴは最高級品に絞る
「ジュネーヴ国際高級時計サロン」(SIHH)は最高級品を扱う16社に限られ、訪問者もバイヤーに限られた専門家向けのメッセである。スイス国内の最高級時計の生産を見ると、業界総売上の6割を占めるが、個数では5%に満たない。ダイヤやルビーをふんだんに埋め込むといったデザイン上の贅沢さはもとより、目に見えない「時」を把握しようとする人間の知恵と技術を結集した品といった意味でも、高級そのものなのである。値段が張るのは、手間の掛かるマーケティングや技術開発、そして創造性のある人材の確保などがあるためで、これこそスイス時計の強みである。
しかし、業界の認識では、高級品に絞るより安価な品から高級時計まですべての価格を網羅することが、生き延びる道と見られている。希少価値ばかりを追求し生産個数が減ると、生産能力も低下する。スイスの時計産業が、ごく限られた好事家向けに作られる、ニッチ(すき間)産業以下の存在に成り下がってしまわないよう、長期的な戦略が必要とされている。
スイス国際放送 ジャンミシェル・ベルトゥト(佐藤夕美 (さとうゆうみ)意訳)
「バーゼルワールド」 4月15日から22日まで開催
「ジュネーブ国際高級時計サロン」 4月19日から25日まで開催
「バーゼルワールド」は世界最大規模の時計宝飾展。44カ国から2186社が出展。通常、8万人が訪れる。
「ジュネーヴ国際高級時計サロン」(SIHH)は、16社が高級時計や宝飾に絞って出展し、専門家の訪問のみを受ける。
スイスの時計産業 2003年の業績
金額ベースで前年より4.4%減少し92億9,200万フラン。
輸出個数は8.4%減少し22億個。
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