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スイスブランドの高い価値

スイスブランドを象徴するスイスアーミーナイフ。典型的スイスブランドで外国人消費者を魅了できる時代は終わった Keystone

スイス製品の性能の良さは国際的に認められているが、スイス企業には、より飛躍的でスタイリッシュなものを生み出すことが求められている。

「スイスブランズ08」で発表された8000人の外国人消費者を対象とした調査で、スイスは値段は高いが性能が良く信頼性の高い製品を生産する国というイメージがあることが再証明された。同時に、スイスブランドの保護問題も指摘された。

 「スイス性」、スイスブランドについての調査を通し、スイス製品やサービスの質の高さが広く認められていることが改めて確認された。調査の対象になった66カ国の消費者はスイス製品について、高品質で信頼も高く高級であるという強いイメージを持っている。製品とサービスの質の国際比較でも日本、ドイツ、アメリカなどに混じってスイスは、ベスト12に入る。特に時計、銀行、ホテル業では最高の評価を受けているが、エンジニアリングや製造部門では日本やドイツには劣るようだ。

 ザンクトガレン大学のマーケティングと小売研究所 ( Institut for Marketing and Retailing ) のカーストン・スーゼン氏は、スイス企業は最新製品の売込みに熱意が欠けていると指摘する。
「スイス製品は全世界で評判が高いが、保守的というイメージがあり飛躍的でトレンディーさに欠けると見られている。多くの企業が、原産がスイスであることを積極的にアピールしていない。この点に力を入れれば、スイス製であることに肯定的なインパクトが与えられるだろう」

知名度の保護

 スイスの文化を国外にアピールする政府機関「プレゼンス・スイス ( Presence
Switzerland ) 」のヨハネス・マティアッシ氏は、スイスの典型的イメージを破るときが来たという意見だ。
「スイスはイメージアップをする好機に立っている。スイスにはアルプス以上のものがあるのだということを示す時期に来ているのだ」
 と強調する。

 政治、経済界においても、スイス製ではないのにスイス製であるとうたったり、スイス製をイメージさせるような偽り製品を撲滅し、スイス製品の知名度を守る必要性に対する広い理解を高める運動をしている。

 クリストフ・ブロッハー前司法相は2年前、スイス国外で生産されたり、スイス製の部品や素材を使っていない商品がスイスブランドと偽って多く出回るようになったことを憂慮し、知的所有権法の改定キャンペーンを張った。
「偽スイスブランドは、本物のスイスブランドの価値を下げるものだ。スイスブランドであると偽るのは、その商品を高く売ることができるためだ。悪用する人が増加しているので、われわれとしても対策を立てなければならない」
とスーゼン氏は言う。

 一方、連邦知的財産権局のフェリックス・アッドール氏は生産コストを下げようとして国外に工場を持つスイス企業にとって、司法省のキャンペーンは不利に動くことを指摘する。
「グローバル化の波に乗り、例えばインドネシアで作りメキシコで梱包するのか、スイスメイドのラベルを取るのか。安上がりでしかもスイス製という両方を選ぶことはできない」
 ときっぱりと言う。

swissinfo、マシュー・アレン、佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 訳

ザンクトガレンのマーケティングコンサルタント企業「htp」、広告業のマックキャン・エリックソン ( McCann Erickson) 、ザンクトガレン大学が今年2月から3月にかけて共同調査した。

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