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ポリ袋は止めましょう

スーパーで無料配布されるポリ袋の数は年間2億7000万枚。それらは使い捨ての運命にある Keystone

買い物客にはいそいそとくっついて行くのに直ちに使い捨てにされてしまう運命にある、かわいそうなポリ袋。環境保護の観点からも問題視され、スイスでは連邦議会の議員ドミニック・デ・ブマン氏が使い捨てのポリ袋を禁止するよう主張している。

ポリ袋の平均寿命はだいたい25分。「スイスは3つのRに対する姿勢で国際的な見本になるべきだ」とデ・ブマン氏は言う。3つのRとは、リデュース ( 減らす ) 、リユーズ ( 再利用する ) 、リサイクル ( 再生する ) を指す。

ゴミ問題か資源問題か

 中国ではポリ袋を禁止し始めた。オーストラリアでも今年末までには禁止する予定だ。フランスはすでに禁止している。だからといって、ポリ袋のスイス亡命を許すのか ?  連邦環境局のゴミ・素材課のペーター・ゲルバー課長は、デ・ブマン氏の提案には反対だ。
「国それぞれ。禁止するに至る理由はさまざまで、スイスに適用されるとは限らない。特にゴミ処理施設に大きく関係する問題だ。スイスから出るゴミはすべて、優秀な技術で焼却される。大気汚染も最小限に抑えられているし、焼却炉から出るエネルギーは利用されている」

 ゲルバー氏によると、ポリ袋を禁止する国の自治体は、ゴミを郊外のゴミ捨て場に捨てており、これが大きな問題になっている場合が多い。
「世界でも使い捨てられた数多くのポリ袋が海岸、海、土地を汚染しているが、それはゴミ処理の問題だ。市民には、ゴミを捨てないよう教育する必要がある。ポリ袋は分解するまでに何百年もかかるといった啓蒙は必要だ」ゲルバー氏にとってはスイスから出るゴミのたった5%がポリ袋。ファストフードの包装のほうが問題だという。

 一方、デ・ブマン氏はそもそも資源の無駄遣いが問題なのだという。
「原油の需要が特に途上国で巨大化し、価格が高騰している今、再利用できないものに原油を使うのはばかげている。何度も使える袋を使えば、ポリ袋禁止は達成できる。環境問題の衝撃は現実としてあるし、原油価格の高騰がそれを体現した」

ポリ袋のほうが環境に優しい

 ポリエチレンは使い捨て袋の素材としてもっとも多く使われる。禁止の動きにゲルバー氏は、他の解決法として課税や買い物客の習慣を変えさせることを提案する。
「禁止して、他のもので代用するのは難しいことだ。ポリ袋の代用品は、ライフサイクルの観点から比較しても評価は低い。消費者は、袋に値段が付けば何度も使うようになる」
 と指摘する。使い捨てのポリ袋に限らず、使い捨ての紙コップや封筒などにもこの問題はある。
「使い捨てなら原料や生産エネルギーを少なくして作るようにする。何度も使うものなら、別の素材で作るという考え方もできる」
 
 スイスの大手スーパー2社、ミグロとコープは、無料のポリ袋を店舗に備え付けている。その数は2社で年間2億7000万枚に上る。顧客はこれに果物や野菜などを入れ、ちょっとした買い物に使っている。コープの広報主任カール・ヴァイスコップ氏は、軽く薄くて透明で環境にも優しいポリ袋に代わるものを見つけることは難しいという。
「もちろんわたしどもは、再生可能もしくは生物分解性のある代用品も探しました。例えばトウモロコシで作る袋です。しかし、バイオエタノールのような問題を引き起こす可能性もあります。食糧を包装に使うのはいかがなものかと…」
 
swissinfo、クレア・オデア 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 訳

連邦マテリアル科学技術センター( Empa ) は、ポリ袋の環境への影響について紙袋や木綿袋と比較する調査を行った。これによると、使い捨ての場合ポリ袋が一番環境に好いという結果が出た。使用するポリエチレンの量も生産エネルギーももっとも少なくて済むという。一方何度も使用する場合には綿が最も効率が高いという結果が出た。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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