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第75回ジュネーブモーターショー開幕

日産ロードスター(350Z Roadstar)は3月2日に自動車専門ジャーナリストから「今年のオープンカー」に選ばれた。 Keystone

ジュネーブモーターショーは欧州3大モーターショーの一つ。ヨーロッパ市場へ強い影響力を持つため、日本のメーカーからも注目されている。今年は100周年にあたり、特別なイベントも企画されている。 

今年は初公開の新車が続出する。トヨタが欧州向けの新型小型乗用車「アイゴ」(Aygo)を、ホンダは新型シビックの「シビックコンセプト」(Civic Concept)欧州専用5ドアモデルを、日産はコンセプトカー「ザルート」(Zaroot)を出展している。

モーターショーは3日から13日まで開催される。今年は261のメーカーが900種もの車を出展し、うち、53台は世界初公開、18台が欧州初公開の車だ。主催者側は80万人の訪問客を予想している。

ジュネーブモーターショーの位置付け

 「ジュネーブモーターショーは日本のメーカーにとって大事な位置を占める」と語るのはホンダスイスの矢内伸幸社長。自国の自動車産業がないため、「スイスの特徴でもある、中立な扱いをしてもらえることと、欧州の中心的な場所にあり、隣国への影響も大きい」と語る。

 欧州自動車工業会によると2004年は日本車が欧州市場に躍進し、乗用車新車登録台数のシェアは13,2%になった。さらに、スイス市場の日本車シェアは21%と高い。一般的に欧州では小型車の販売が増えてきているが、スイスはお金持ちな国のため、中型車が増えているという。ジュネーブモーターショーは伝統的にスポーツカーや高級車を改造したカスタマイズカーが多いのも特徴だ。

日本とニーズや好みの違う欧州市場

 日本車を欧州で見ると、同じ車が違う名前で売り出されたり、形が少々違っていたりする。これは欧州市場のニーズや好みが日本と異なるからだそうだ。例えば、トヨタのYARISが良い例で、当初は日本では評判が良くなかったにもかかわらず、欧州では大ヒットした。

 前出の矢内社長は「欧州ではエンジンのパワーやサスペンションの硬さなどスポーティーな性能が重要だ」という。今回、四輪駆動車の出展が多かった日産の田井悟氏は「欧州ではオーソドックスな4WDが好まれる。引っ張る力や坂を登る能力など、実際に使う性能への要求が高いのが特徴」と語る。規格テストの成績が良い日産の四輪駆動車は欧州では評判が良いという。

 もう一つ、日本と大きく違うのはディーゼルエンジン車の人気だ。矢内社長は「フランスやドイツでは70%、スイスでは25%がディーゼルエンジンです」という。このため、ホンダは欧州市場に合わせて振動と音を静粛させたディーゼルエンジンを開発しているという。今後、ディーゼルエンジン車の開発が欧州市場にのし上がっていく突破口のようだ。

力を入れる日本メーカー

 モーターショーは販売のためというより、各メーカーの企業としてのアピールが中心になる。そのため、未来の車「コンセプトカー」や環境に易しいホンダの水素電池車(FCX)といった環境カーの展示もある。

 トヨタの今夏発売予定の欧州向け小型車「Aygo」はチェコの工場でプジョー社の「107」とシトロエン社の「C1」と共同生産される予定。トヨタの内川重信氏は「欧州市場は今後、小型車が攻めどころで、中、東欧市場が伸びると狙っている」と語る。およそ80%以上が同じ部品を使用するこの3つのモデルのうちでトヨタを選んでもらうには「アフターサービスの良さで勝負する」という。

歴史を振り返る100周年記念

 「今年は出展者にメーカーの歴史と未来を中心に取り組んで欲しいと頼んだ」と語るのはモーターショー会長のクロード・サージュ氏。ジュネーブモーターショーが初めて開催されたのは1905年に遡る。100周年を記念して1905年から今日までを振り返る、14台のアンティックカーも展示され、映画のセットのようなコーナーもある。


swissinfo  屋山明乃(ややまあけの)

ジュネーブの第75回モーターショーは3日から13日まで。
月曜日から金曜日が10時〜20時。土曜、日曜日は9時〜19時まで。入場料は12フラン。

- 欧州の3大モーターショー、パリ、フランクフルト、ジュネーブのうち、ジュネーブは唯一、毎年開催され、スイスに自動車産業がないためフェアな扱いを受けると日本メーカーからの評判がいい。

- ジュネーブモーターショーが初めて開催されたのは1905年。今年で100周年を迎えるため、特別な歴史車展示などの催しがある。

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