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スイスの働く親たち① 「保育園が私たちの首を絞めている」リーゼン三保子さん

リーゼン三保子さんと息子のレニー君

小雨が降る9月中旬、首都ベルンの自宅の子供部屋でボール遊びをするリーゼン三保子さんと長男のレニー君。「ママ」と嬉しそうに何度もボールを投げるレニー君に、三保子さんは「すごい、すごい」と優しく微笑む

(swissinfo.ch)

首都ベルン市内の外資系ヘルスケア企業に勤めるリーゼン三保子さん(38)は、会社から歩いて15分ほどのところにあるアパートで、夫のファビアンさん(32)とレニー君(1)と3人で暮らしている。昨年4月に社会復帰し、週3日、この会社で経理の仕事をしている。仕事に行く日はレニー君を保育園に入れているが、驚いたのはその保育料の高さだった。

 勤務日は月、水、金曜日の週3日。三保子さんの一日は、午前7時に起きて家族の朝ごはん作りから始まる。レニー君を着替えさせ、8時過ぎには自宅近くの保育園へ、ファビアンさんとレニー君を送り出す。急いで支度をし、8時半に出勤。午後5時40分ごろには帰宅して夕ご飯を作り、ファビアンさんとレニー君の帰りを待つ。夕食を食べたらお風呂に入れて寝かしつけ、一息つくのは午後9時過ぎだ。

 前の職場を辞めてしばらくして、レニー君を授かった。すぐに働くつもりはなかったが、以前通った語学学校の友人のつてで履歴書を送った今の会社から、レニー君を出産した後に連絡があり、採用が決まった。

 もともと産休の代理で6カ月間の期限付き契約だったため保育園は探さず、車で20分のところに住む義理の両親に頼んで、当時4カ月だったレニー君の面倒を見てもらった。ところがその後、三保子さんの仕事ぶりを気に入った上司から「継続して働いてもらいたい」と言われ、週3日勤務ならと承諾。すぐに保育園探しを始めた。

週3日で13万円

  三保子さんたちが支払う保育料は週3日、朝から夕方までの終日保育で月1150フラン(約13万2千円)。スイスの保育園は所得に応じて市から補助金が出るため、三保子さんたちの保育料も正規の値段から約400フラン割引されているが、それでも高い。三保子さんは「友人から高いとは聞いていたが、金額を見た時、どんな計算をしたらこんな額になるんだと驚いた」と振り返る。

 スイスの保育料は、国際的な調査でもその金額は突出している。経済協力開発機構(OECD)によれば、スイスで子どもをフルタイムで保育施設に預けると、保育料は平均して親の所得の3分の2に相当する。金額は地域によって異なるが、都市部のチューリヒではおよそ2400~3000フランになる。スイスの物価の高さを考慮しても、OECD加盟国の中でダントツの高さだ。

 児童手当や税金控除などにより最終的な負担額は3割に減るが、それでも英国や米国に次いで高い。スイスでは9割が私立保育園で運営費の大半を保育料が占めるため、どうしても高くなりがちだ。

保育コストの国別比較
(swissinfo.ch)

 国内総生産(GDP)に占める保育施設(3歳未満受け入れ)への公的支出もスイスは欧州の諸外国に比べて少ない。OECDの調査では、社会福祉が充実しているスウェーデンは0.885%、英国は0.456%、日本は0.309%なのに対し、スイスは0.086%。スイスは軍隊にGDPの0.8%を充てていることを見ても、保育に対する公的支援が遅れている。

 三保子さんは、しばらく経って貯金が全く増えていないことに気づいた。特段無駄遣いをしているわけでもない。「なかなか貯まらないなと思っていて、ふと気づいた。そうか、保育園が私たちの首を絞めているんだ、と」

「仕事があるから自分のバランスが取れる」

 しかし、政府機関が多く外資系企業が少ないベルンで、ドイツ語を母国語としない日本人が日本食レストランの店員や清掃員以外の職を見つけるのは難しい。特に日本にいた頃から外資系企業に勤め、英語で仕事をしてきた三保子さんにとってはなおさらだ。

 三保子さんの給与の大半は保育料に消えるが「家計のことを考えると2人で働いていたほうが将来的にも安心。高いからと言って辞めてしまうと、次に働きたいと思ったときに仕事を見つけるのが大変になる。息子が幼稚園に上がるまでの数年間だけと思って耐えるしかない」と話す。

  千葉県出身の三保子さんは2008年、語学留学先の米ハワイでファビアンさんと出会い、2011年、結婚と同時にスイスに移住した。ファビアンさんはベルンの交通系の労働組合で働いている。

 「スイスの保育園では日本のように手作りグッズを母親が作るよう求められることもないし、持っていくものも基本的には紙おむつぐらい。日本の友人から、紙おむつ1枚1枚に名前を書いて、しかも使用済みのおむつをビニール袋に入れて返されると聞いてびっくりした」と三保子さん。「スイスの保育園は確かに高いけれど、日本のようなそういう手間はかからない」

 仕事をしているのは、生活費のためだけではないと三保子さんは言う。フルタイムに比べ収入は落ちるものの、スイスでは週3日、週4日というフレキシブルな働き方ができる環境が整っている。三保子さんは「今は仕事と母親業の時間の割合がちょうどいい。仕事があるから、自分の中で良いバランスが取れている」と話している。

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