スイスではバター・油脂の価格が大きく上昇している
© Keystone / Gaetan Bally
スイスの価格監視機関は、企業の便乗値上げが引き起こすインフレ「グリードフレーション(強欲インフレ)」に警戒感を募らせている。
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ステファン・マイヤーハンス連邦価格監督官はドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)で、企業がコスト上昇分を上回る値上げで過剰な利益を得ており、グリードフレーションが起きているとの認識を示した。「複数の調査がそれを示している。UBSも同様の調査結果を発表した」と語った。
各業界100人以上の企業財務責任者にインタビューしたデロイトの調査でも、「業種を問わず、さまざまな分野で価格を引き上げるためにこの好機を利用している」という結論に達したという。
小売業界はマイヤーハンス氏の主張に反論する。小売最大手のミグロはSRFの取材に「広範な調査によっても、価格監督官はミグロが価格を上乗せしすぎていることを証明できなかった」と回答。2022年のグループの純利益率は1.5%にとどまり、「コスト上昇の大部分は自ら負担した」と訴えた。
小売第2位のコープも2022年は顧客への価格転嫁を避けるために2億5千万フラン(約400億円)を自己負担したと述べた。
マイヤーハンス氏はこれらの反論についてさらに詳しく調査する方針だ。また9月に「購買力サミット」を開き、利益率について小売業界と議論する。
スイスの2022年のインフレ率は2.8%と、欧州周辺国より物価の上がり方は緩やかだが、それまで1%を下回る水準だったのに比べると高い。
今年は2月の3.4%をピークに低下傾向にあり、6月は1.7%に落ち着いた。スイス国立銀行(中央銀行、SNB)は6月まで5会合連続で利上げしたが、2023年のインフレ率を2.2%と高めに予想している。
値上がりは大手小売業だけではなく、幅広い業種で見られる。SRFによると、航空輸送は3月時点で前年比35%、電気料金は25%、バター・油脂は20%、暖房費は平均16%上昇した。一方でガソリンや通信など一部の価格は最近下落している。
英語からの翻訳:ムートゥ朋子
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