世界有数の石炭産出国、中国。写真は中国中部・江西省の九江で石炭運搬船に乗る作業員。2016年撮影
Keystone / Hu Guolin
スイスの人権NGO「パブリック・アイ」は7日発表した石炭取引に関する報告書外部リンク で、スイスが石炭取引の中心地であり、スイスに拠点を置く企業が世界貿易の4割を占めていると指摘した。また石炭ビジネスへの出資者としても、スイスの銀行が上位に名を連ねる。
このコンテンツが公開されたのは、
2022/11/09 11:45
スイスを拠点とする石炭の取引・採掘企業は245社。主にジュネーブ州(78社)、ティチーノ州(55社)、ツーク州(54社)に集中し、残り58社はスイス全土に点在する。
国際企業グレンコアなど、スイスに本社または取引部門がある鉱業会社が採掘する石炭は、年間5億3600万トンに上る。その採掘、輸送、発電に伴い、間接的に年間約54億トンの二酸化炭素(CO2 )が排出されるという。
「二酸化炭素のディーラー」スイス
石炭産業に対する銀行の出資額を国別に見ると、スイスは10位にランクインする(1位はフランス、日本は2位)。オランダ金融調査会社プロフンド(Profundo)のデータによると、2015年のパリ協定以降、スイスの石炭企業に対し31億5000万ドル(約4590億円)の融資が行われた。20年の年間融資額は16年比72%増加した。
スイスの最大の与信者はクレディ・スイス(20億ドル超)。融資先はトラフィグラ、グレンコア、ロシア企業のSibanthraciteや石炭会社SUEK(Siberian Coal Energy Company)など。以下、UBS(8億1800万ドル)、チューリヒ州立銀行(3億3900万ドル)、ヴォー州およびジュネーブ州の州立銀行が続く。
おすすめの記事
おすすめの記事
スイスの銀行は気候リスク開示を 当局が異例の要求
このコンテンツが公開されたのは、
2021/07/16
気候変動が深刻になり、金融機関も行動や考え方の変容を迫られている。スイスでは当局の異例の要求を受け、銀行らも本腰を入れざるを得なくなった。
もっと読む スイスの銀行は気候リスク開示を 当局が異例の要求
スイス当局やスイスの銀行は、こういった投資を大幅に減らすと明言しているが、パブリック・アイはその対応の甘さを非難する。
エジプトのシャルムエルシェイクで7日から開催中の国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)に際し、スイスは「二酸化炭素のディーラー」としての責任を負い、このビジネスから足を洗う計画を打ち出さすべきだとした。
おすすめの記事
おすすめの記事
スイスにおける商品取引を解説
このコンテンツが公開されたのは、
2021/07/30
商品取引は私たちの暮らしを支えているが、不透明なビジネスでもある。この動画では、スイスがどのようにしてこの基幹産業で重要な役割を果たすようになったかを解説する。
もっと読む スイスにおける商品取引を解説
今後の経営方針は
スイスで2番目の銀行、クレディ・スイスは仏語圏のスイス公共放送(RTS)で、「融資の流れをパリ協定の目標に適合させる必要があると認識している」と述べた。石油、ガス、石炭企業に対する投資の結果生じた排出量を30年までに49%、50年までに97%削減すると公約している。
またスイス銀行最大手UBSも、化石燃料への融資を大幅に削減する意向を示し、化石燃料セクターの企業への融資によって生じる排出量を30年までに20年比71%削減したいとした。
RTSの報道では、連邦財務省は近く多国籍企業に対し、経済活動によって発生するCO2 排出量と財務リスクの開示を求める方針だ。政令が施行されれば、企業は24年から気候リスクとその影響について開示義務が生じる。
国際エネルギー機関(IEA)の試算では、今年の世界の石炭生産量は過去最高の80億トン超。石炭の主要産出国は中国、インド、インドネシア、米国。
英語からの翻訳:シュミット一恵
このストーリーで紹介した記事
おすすめの記事
グミベアが躍る「ロボケーキ」大阪・関西万博スイス館で展示
このコンテンツが公開されたのは、
2025/04/23
動くクマのグミ、チョコレート味の電池――大阪・関西万博のスイス館では、ロボット工学者とパティシエ、ホテリエが合作した「ロボケーキ」が展示されている。
もっと読む グミベアが躍る「ロボケーキ」大阪・関西万博スイス館で展示
おすすめの記事
スイス外相、大阪・関西万博で結束と対話をアピール
このコンテンツが公開されたのは、
2025/04/22
日本を公式訪問中のスイスのイグナツィオ・カシス外相は22日、2025年大阪・関西万博のスイス・ナショナルデーのオープニングセレモニーに出席し、結束と対話を呼びかけた。
もっと読む スイス外相、大阪・関西万博で結束と対話をアピール
おすすめの記事
フランシスコ教皇死去、スイス大統領が哀悼
このコンテンツが公開されたのは、
2025/04/22
スイスのカリン・ケラー・ズッター連邦大統領は、21日死去したローマ教皇フランシスコに哀悼の意を表した。
もっと読む フランシスコ教皇死去、スイス大統領が哀悼
おすすめの記事
WEFのクラウス・シュワブ会長が辞任
このコンテンツが公開されたのは、
2025/04/22
世界経済フォーラム(WEF)は21日、創設者で会長のクラウス・シュワブ氏が同日付で辞任したと発表した。
もっと読む WEFのクラウス・シュワブ会長が辞任
おすすめの記事
スイス外相、日本と中国を訪問
このコンテンツが公開されたのは、
2025/04/22
イグナツィオ・カシス外相は日本と中国を公式訪問する。
もっと読む スイス外相、日本と中国を訪問
おすすめの記事
TIME誌、スイス人弁護士を「最も影響力のある100人」に選出
このコンテンツが公開されたのは、
2025/04/17
米誌タイムズの「2025年最も影響力のある100人」に、弁護士コーデリア・ベール氏がスイス人女性では唯一ランクインした。ベール氏は気候訴訟で異例の勝訴判決を勝ち取った人物だ。
もっと読む TIME誌、スイス人弁護士を「最も影響力のある100人」に選出
おすすめの記事
ミグロ、スイス初の年中無休スーパーを開店へ
このコンテンツが公開されたのは、
2025/04/16
スイス小売大手のミグロ(Migros)は14日、アッペンツェル・アウサーローデン準州ヘリザウにある1店舗を年中無休化すると発表した。
もっと読む ミグロ、スイス初の年中無休スーパーを開店へ
おすすめの記事
ハイジのスイス館、150万人以上の来館者見込む 大阪・関西万博
このコンテンツが公開されたのは、
2025/04/14
2025年大阪・関西万博のスイス館が、13日の開幕日に開館した。没入感のある展示空間でスイスの多様・卓越性を紹介し、150万人以上の来館者を見込む。
もっと読む ハイジのスイス館、150万人以上の来館者見込む 大阪・関西万博
おすすめの記事
スイス大統領、関税でトランプ氏と電話会談
このコンテンツが公開されたのは、
2025/04/10
スイスのカリン・ケラー・ズッター連邦大統領は、米国の追加関税について、ドナルド・トランプ米大統領と電話会談した。
もっと読む スイス大統領、関税でトランプ氏と電話会談
おすすめの記事
【トランプ関税】スイス経済相が米通商代表と初協議
このコンテンツが公開されたのは、
2025/04/08
米国の関税措置をめぐり、スイスのギー・パルムラン経済相は7日、米通商代表のジェミソン・グリア氏とビデオ会議による最初の協議を行った。
もっと読む 【トランプ関税】スイス経済相が米通商代表と初協議
続きを読む
次
前
おすすめの記事
金融のグリーン化に取り組むスイス
このコンテンツが公開されたのは、
2021/12/15
スイスの金融機関や政府当局は今、スイスをサステナブルファイナンス(持続可能な社会を実現するための金融)の国際ハブにするという壮大な目標に向けまい進している。だがその実効性については、環境団体などからは懐疑的な声が高まっている。
もっと読む 金融のグリーン化に取り組むスイス
おすすめの記事
スイスにおける商品取引を解説
このコンテンツが公開されたのは、
2021/07/30
商品取引は私たちの暮らしを支えているが、不透明なビジネスでもある。この動画では、スイスがどのようにしてこの基幹産業で重要な役割を果たすようになったかを解説する。
もっと読む スイスにおける商品取引を解説
おすすめの記事
スイス、国営グリーン投資銀行の設立を議論
このコンテンツが公開されたのは、
2022/09/08
2050年までにカーボンニュートラルを実現するという目標達成に、国営のグリーン投資銀行は役立つのだろうか。
もっと読む スイス、国営グリーン投資銀行の設立を議論
おすすめの記事
スイス銀行の貿易金融 環境配慮の取り組みは?
このコンテンツが公開されたのは、
2021/04/05
アマゾン熱帯雨林が地球の気候バランスに果たす役割について社会的関心が高まる中、スイスにとって重要な商品取引部門に融資する銀行は、自らの事業が環境に及ぼす影響を再検証し始めた。
もっと読む スイス銀行の貿易金融 環境配慮の取り組みは?
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。