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圧迫されるスイス経済 進む不均衡

世界の経済はこの数年間、ジェットコースターのような浮き沈みを経験してきた Keystone

スイス経済は外からの圧力に屈することなく持ちこたえているが、全体を見渡すと、分野によってこの先の運命は大きく異なりそうだ。

このコンテンツは 2012/04/12 11:00
マシュー・アレン, swissinfo.ch

数々の打撃にもかかわらず経済は予想外の回復を見せ、各機関による今年の成長予想ではわずかながらも上方修正が相次いだ。ただし、先行き不透明感が残る工業分野もある。

連邦経済省経済管轄局(SECO)は先月、今年の国内総生産(GDP)の成長率予想を0.8%に引き上げ、楽観ムードに傾いた。

この数字は経済の飛躍には足りないが、昨年12月の予想は0.5%だったことから見通しは多少明るくなった。スイスがほかの欧州諸国のように景気後退に陥ることはなさそうだ。

連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ/EPFZ) 景気調査機関(KOF)も3月、今年のGDP成長率予想を12月の0.2%から0.8%に上方修正。バーゼル経済研究所(BAK)も同様に0.3%から0.7%に引き上げた。

拡大する格差

景気調査機関のヤン・エクベルト・シュトゥルム所長は次のように語る。「昨年12月には、今年第1・第2四半期はマイナス成長、良くても停滞と予測した。しかし、どうやらこの冬にすでに底を打ったようだ。0.8%という成長率は楽観するにはまだ程遠いが、スイス経済の抵抗力には驚かされた」

今回の上方修正は、ヨーロッパ諸国が陥っている債務危機の状況改善によるところが大きい。昨年末の状態はもっと深刻だった。

とはいえ、分野によって様子は大きく異なり、その差はこれ以上広がりようがないくらいだ。医薬品業界と時計業界はこの数カ月間輸出ブームに沸き、国内の建設業も隆盛を続ける不動産市場に引っ張られて活力を得てきた。

その一方で、機械製造業、観光業、織物工業などの分野は、ヨーロッパ各国が抱える経済問題とスイスフラン高にあえいでいる。

金融業界も、低金利や顧客のリスク回避志向、間もなく実施される規制強化、脱税に対する国際的な批判などが重なって苦しい状態が続いている。

こうしたことからシュトゥルム氏は、「これまでにないほど業界間の相違が大きくなっている」と言う。

利益と損失

個々の企業の業績を分析すると、同じ工業分野の中でも差が現れる。

チューリヒ州ヴィンタートゥール(Winterthur)の織物機械製造会社スイス・テックス(Swiss Tex)は人員削減の最中だ。91人の従業員のうち80人がその対象となっている。

一方、同じヴィンタートゥールに本社を置く別の織物機械製造会社リーター(Rieter)は、解雇、アジアでの生産強化、自動車部品生産部門の分離・独立など包括的なリストラを行い、業績不振から抜け出した。

リーターは昨年、売上も利益も大きく伸ばしたが、新規受注が以前の3分の1減少していることから、やはり油断はならない。工業関係の輸出業者の多くは2011年末に受注が著しく減少し、今年は生産量の先細りが懸念されている。

それと平行して失業率も上昇しそうだ。経済管轄局は現在の3.1%から2013年末には3.7%に上がると予想している。

オイルショック?

各種調査の結果を見ると、中小企業の状況もまたさまざまだ。外国進出を狙う企業の支援を行う政府機関、スイス貿易振興会(OSEC)の調査では、スイスフラン高で利益が減少したと回答した中小企業は全体の79%に上った。2010年末は58%だった。

対ユーロの上限を1.20フランと定めたスイス国立銀行(SNB/スイス中銀)の対策がどのような成果をもたらすかはまだ不明だが、これでは不十分だと不満を漏らす声も聞こえる。

スイス中小企業協会(Swiss SME Association)が行ったある調査では、この先数カ月間の動向についての企業の見方が一致しないこともあり、矛盾を孕む結果となった。

回答した企業の4分の1は今年、増収を見込んでいるが、減収を覚悟している企業も同程度ある。一方、増益を見込んでいる会社はわずか10%にすぎない。残りは「同じ」か「減少」という予想だ。多くの企業は不安材料として原料費、特に石油価格の上昇を挙げている。

景気調査機関によれば、このように価格が急上昇した場合、敗者がいれば常に勝者もいる。これもスイス経済の不均衡を表す例の一つだ。このような状況がこの先いつまで続くかはまだ分からない。

スイスではコモディティ取引分野が成長しており、これによって製造業のダメージが相殺されるだろうとシュトゥルム氏は読む。

「我々のシミュレーションでは、石油価格が1バレルあたり150ドル(約1万2000円)まで上がっても、短期的にはスイス経済全体に悪影響を与えることはない。石油取引で利益を得、経済に付加価値がつくことによりGDP成長率も安定を保つと思われる。ただし、これが労働市場の改善につながることはないだろう」

経済指標

景気調査機関(KOF)2012年3月

GDP成長率:2012年 +0.8%、2013年 +1.9%

失業率:2012年 +3.2%、2013年 +3.2%

インフラ率:2012年 -0.4%、2013年 +0.8%

輸出成長率:2012年 +0.8%、2013年 +4.7%

輸入成長率:2012年 +3.7%、2013年 +7.9%

内需成長率:2012年 +1.7%、2013年 +1.8%

連邦経済省経済管轄局(SECO

GDP成長率:2012年 +0.8%、2013年 +1.8%

失業率:2012年 +3.4%、2013年 +3.7%

インフラ率:2012年 -0.4%、2013年 +0.4%

輸出成長率:2012年 +1.3%、2013年 +4.5%

輸入成長率:2012年 +1.7%、2013年 +4.5%

内需成長率:2012年 +1.2%、2013年 +1.6%

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