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1970年:スイス初のショッピングモールが誕生

ショッピングセンターへのドライブは家族のレジャーになった。店舗が閉まっている日曜日にすら、ウインドーショッピングに出かけた Jules Vogt / ETH-Bibliothek Zürich

50年前、スイス初のショッピングモールがアールガウ州に誕生した。チューリヒ郊外にできた「天国」だった。

このコンテンツは 2020/03/28 09:00
David Eugster

20世紀後半、人々は日常でかつてないスピードを体験した。電話を使って遠く離れた人とも数秒のラグで交信できるようになり、それまで列車でしか移動できなかった距離を自動車で個人的に走れるようになった。1950年に14万7千台だった登録自動車は、1970年には50万台に到達。スイスは欧州で最も自動車密度の高い国の一つになった。交通の動脈沿いには「モーべンピック」や「ジルバークーゲル」などのレストランができた。席に着かずに食べ物を持ち帰る、スイス初のファストフードだった。

もう待たなくていい

スピードの変化は消費の変化になった。1948年、小売大手ミグロは米国の習慣を真似てセルフサービスを導入した。顧客は店員がカウンターの後ろで買い物リストを読み、商品を棚から持ってくるのを待つ必要がなくなった。自身の手で必要な品物やその場で気に入った物を棚から直接つかみとるようになった。

だが世界のスピード化により、それまで中心だった場所の価値は下がった。交通の発達で市街地の魅力は薄れ、郊外の村を巡れるようになった。そして60年代初め、農村から都市への人口流出に対抗しようとこれまでにない土地計画が立てられた。ショッピングモールの建設だ。そして70年3月12日、スイス初のモールが開業。アールガウ州のシュプライテンバッハにできた「ショッピ」を先導したのは、ディスカウントストアのデンナーだった。その5年後、60年代から企画していたミグロ系列のスイス第2のモールがチューリヒに登場した。

ショッピングモールを考案したオーストリア人のビクトール・グルーエンはナチスの迫害を逃れ、60年代にヨーロッパに舞い戻った。都市との競争は一種の皮肉と無縁ではなかった。車を嫌っていたグルーエンは、アメリカ郊外で欧州の市街地にいるような気分を味わおうとした。欧州に戻ると、郊外は都市との競争に直面した。

過ぎ去った黄金時代

競争に勝ったのは、今日の視点からみれば市街地だった。クレディ・スイスは米国のモール人気が下火になり、欧州でもモールの死が訪れると予測他のサイトへした。これまでのところ、スイスのショッピングモールは外国に比べれば健闘している。だがミグロは傘下のモールを売却し始めている。

スイス初のモールが開業した1970年、座標軸にずれが生じたようだ。シュプライテンバッハのショッピ開業を知らせる折り込み広告は、アールガウ州の小さな村が地図のど真ん中に描かれ、大都市チューリヒは隅に追いやられた。1500台分の駐車場が整備され、「とても駐車場しやすい」と謳った。

あらゆる快適さを

モール内のショッピングストリートは両端に大型小売店が置かれ、買い物客の往来を促し小さな店舗にも利益が及ぶようにした。冷暖房完備のセンター内には、あらゆる快適のための設備が備わっていた。レストラン、屋内プール、そして「キッズパラダイス」が設けられた。親が買い物を存分に楽しめるよう子供を預ける施設だったが、その後何十年も珍しい存在だった。こうした快適さも全て計算しつくされたものだった。泣きわめく子供がいなければ、親たちの買い物時間は延びるのだ。

モールはさっと買い物を済ませる場所にとどまらず、大人にとっての「天国」となった。当時のテナント組合はこう記した。「ここではイタリアやスペイン、あるいは東洋の市場にしかない雰囲気、慌ただしい交通の喧騒によってスイスの都市部が失ってしまった雰囲気が漂っている」

レジャーとしての買い物

スイスの大都市の駅前通りでは店舗と交通、消費がごちゃ混ぜになっているが、シュプライテンバッハのモールは買い物が中心に据えられていた。つまりレジャーとしての買い物だ。アメリカでは「Shopping for fun」と呼ばれていたように、1970年の広告は「Einkaufen zum Spass(楽しむための買い物)」と宣伝していた。

終戦後、スイス人の暮らしは急速に豊かになった。米国のマーケティング専門家は「高い生活水準への再教育」が起こったと表現した。買い物は常に必要性から生じるもの、という固定観念から解かれたのだ。モールの誕生によって、スイス人は初めて消費を楽しむことができるようになった。

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