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減りゆく銀行支店 コロナで加速

ヴァリス(ヴァレー)州エルネン村はわずか人口500人の小さな自治体だが、銀行の支店は存在する © Keystone / Gaetan Bally

各国で銀行支店が減りゆくなか、銀行の国・スイスには比較して多くの銀行支店がある。だが新型コロナウイルスの流行は、スイスの銀行業務にも風穴を開けようとしている。

このコンテンツは 2020/11/12 08:30

スイスの農村部を歩く人は皆、その銀行の支店の多さに驚くだろう。わずか人口1000人の村に支店が置かれていることも珍しくはない。それでもスイスの主要銀行は、他の先進国と同じように支店網を大幅に縮小しつつある。

コンサルタント会社のデロイトは、新型コロナウイルスの流行を機に銀行員と顧客の物理的なやり取りが約4割減ったと試算する。代わりに増えたのがネット上や電話での接触だ。

ルツェルン応用科学芸術大学とコンサルティング会社ZEB共同調査によると、銀行員がロックダウン(都市封鎖)中に顧客と電話で話をした頻度は前年の春の2倍に増えた。オンラインバンキングの使用回数は前年同期比で約25%増加した。

実験

多くの銀行はコロナのために支店を閉鎖したり、営業時間を縮小したりしている。当初から「一時的な措置」とされているが、全ての支店で再開が見込まれるわけではない。大手銀行のクレディ・スイスは、元は「一時的」に閉鎖していた支店を含め、全支店の約4分の1を閉店する計画だ。

支店網の縮小はクレディ・スイスだけではない。swissinfo.chが複数の金融機関に同様の計画があるかどうか尋ねたところ、いずれも既存の支店網を常に見直している、といったような回答ばかりだった。

支店数を大幅に間引いた場合、顧客はどう反応するのか?――ロックダウンがそれを試す「実験」の場になったという側面は否めない。UBSの広報イゴール・モーザー氏は、「営業する支店数が減ったことは、顧客から好意的に受け止められた」と話す。銀行は十分に顧客ニーズを満たせることが示せたからだという。

「コロナ危機の結果、我々は支店が一気に減っても機能するかどうかを試す機会を得た。そして得た結論は、機能するというものだった」。ハンブルクフォルクスバンクのライナー・ブリュッゲシュトラート氏(今年10月に退行)は独経済紙ハンデルス・ブラットでこう語った。同行は一時的に閉鎖していた支店のうち13店舗を再開しないことを決めた。

最大9割の支店が消滅

ドイツ第2のコメルツ銀行も、コロナ危機前の計画からさらに支店網を減らす予定だ。企業コンサルタントのオリバー・ミーム氏は、ドイツの銀行の支店数は今後数年で半減すると予測する。

英国ではさらに厳しい見通しがある。コンサルティング会社のアクセンチュアは、2025年までに19年比で最大9割の支店が閉鎖されると試算する。コロナ前の試算では最大でも5割の減少にとどまっていた。

独英とも、国際比較において特段成績が良いわけではない。世界銀行によると、人口10万人当たりの支店数はドイツが11店舗、英国は25店舗だ。一方スイスは40店舗近い。だがスイスでも、10年前は10万人当たり50店舗超を数えていた。

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支店密度の高さはスイスの金融センターとしての地位に比例している。デロイトは加えて、スイス人顧客の気質にも理由があるとみる。銀行やお金に関して、スイス人は行動を非常にゆっくりとしか変えないという。

また小さな自治体では、支店の閉鎖に対して政治的な抵抗が起きることがある。スイスの銀行は業績が比較的好調である点も見逃せない。他国の銀行に比べると、支店縮小への圧力が小さい。

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なお世界で群を抜いて支店密度が最も高いのはサンマリノだ。イタリアに囲まれたミニチュア国家では、人口3万人に対し支店は60店舗ある。なぜサンマリノなのか― それは、特にイタリア人が非課税資産を目立たない隣国に貯めているからだ。

ATM数は安定

コロナは支払い慣行も変えた。現金に代わり、カード払いやスマホ決済が勢力を増している。

取材した銀行は、現金自動預け払い機(ATM)での引き出し回数がコロナ危機以来減ったと明かした。減少傾向は新しいものではなく、例えばクレディ・スイスではATMの利用回数が毎年1割ずつ減っているという。コロナを機に、その勢いに弾みがついた。

スイスのATM設置台数はこの数年、ほとんど変わっていない。人口10万人当たり約100台を備えるスイスは、国際比較では密度が高い。だがこれも継続的に見直されているという。

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ATMの行く末がどうなるのか知りたければ、北欧に目を向けると良い。現金が例外的にしか使われないフィンランドやスウェーデン、ノルウェーでは、ATM台数の密度はスイスの3分の1だ。

生き残る支店

コロナは銀行支店やATMに対するとどめの一撃となったのか?国際会計事務所アーネスト・アンド・ヤングのヤン・ベレン氏は、そう結論付けるのは早過ぎるとみる。アンケート調査によると、銀行顧客の43%はコロナ以降に銀行との付き合い方を変えたと答えた。だがこの変化が恒久的と考えるのは16%にすぎない。

銀行側も、支店の存在は競合するオンラインバンクに対する重要な長所だと捉えている。UBSによると、複雑な問題について顧客は個人的なアドバイスを求め、それを提供する銀行支店を高く評価している。

だが支店が残るとはいえ、現在のような窓口業務がいつまでも存在するというわけではない。大半の銀行は、多くの支店から窓口カウンターを撤廃している。チューリヒ州立銀行はこのほど、「支店の約半数で現金サービスを廃止する」と決めた。

代わりに銀行が強化しているのが複雑な資産運用などの相談業務だ。またオンラインでできる手続きを増やし、将来は顧客が自宅から取引できるようにする。

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