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通貨切り下げ競争でスイスに打撃



為替相場の予想は難しい仕事だ

為替相場の予想は難しい仕事だ

(Keystone)

世界的な通貨切り下げのポーカーゲームが加熱する中、スイスの持ち札は徐々に劣勢になってきている。

ユーロと米ドルに対するスイスフラン高で、スイスの輸出業者はすでに二重の打撃を被っている。また、アメリカ、中国、日本、その他の国々がさらに自国通貨の価値の引き下げをほのめかす中で、状況はこれまで以上に困難になりそうだ。

量的緩和政策

 ここ何週間か、世界中で今後の量的緩和に関する声明が多く聞かれた。各国の中央銀行は紙幣を増刷して通貨価値の上昇を抑える意向だ。中国は人民元の切り上げペースが遅いことを長い間批判されてきたが、今週、人民元切り上げの容認は製造業に打撃を与え、経済に混乱を来たすとの見解を述べた。

 また、来月11月には米連邦準備理事会 ( FRB ) が紙幣増刷に踏み切るというのが大方の予想だ。日本は6年間にわたる為替介入に終止符を打ち、量的緩和に踏み込む見通しだ。

スイスの介入

 タイ、イギリス、ブラジル、南アフリカ、インド、韓国といった国々は、通貨引き下げ競争への参加をほのめかしている。量的緩和に踏み切る理由は、デフレ対策で貸し付けを増やして国内経済を刺激するためや、輸出業者の利益を保護するためなどだ。

 スイス国立銀行 ( スイス中銀/SNB ) は143億フラン ( 約1兆2200億円 ) の含み損を計上しながらも、2009年3月から今年の6月までユーロ買いに走った。スイス中銀はこうした行為を正当化し、フラン高の進行を緩やかにすることで雇用を確保し、国内経済を安定させていると述べた。しかし、不安定な世界経済において、スイス経済は比較的堅調なことから、投資家がフランに集まってきている。先日、フランは1ドル0.96フラン ( 約82円 ) の過去最高値を付け、対ユーロでは1.30フラン ( 約111円 ) 中ほどの値動きを見せている。

スイスの輸出品価格が上昇していることに関して、機械・電気・金属産業連盟「スイスメム ( Swissmem ) 」によれば、これはフラン高傾向にのみ原因があるわけではなく、企業が為替相場の猛烈なスピードに付いていけないことにもよるという。
「スイスの輸出業者にとって、為替相場の変化のスピードが大きな問題だ。ユーロが急落したため、企業はその影響を軽減できるような措置をなかなか取れなかった」
 と、スイスメムの広報担当イフォ・ツィンマーマン氏は言う。

二重のリスク

 スイスの大手銀行「UBS」の外国為替リサーチ部長トーマス・フラーリー氏は、これまで以上に激しい為替変動がやって来る日はそう遠くないとみている。
「通貨切り下げの波は何度もやって来る傾向があり、次の波はもう見えている。アメリカ経済の低迷を懸念し、FRBが追加量的緩和を行うと発表したからだ」
 とフラーリー氏は説明する。

 こうなると、スイスにとって大きな問題は二つある。まず最初に、これまでの安全な避難通貨としてのドルの地位がますます損なわれると、フランに大きなプレッシャーがかかることになる。
「世界経済が悪化するとドルに対する需要が増えるため、大抵はドル高になっていた。しかし、FRBは紙幣を増刷することで実質的上このセイフティーネットを取り払おうとしている」
 とフラーリー氏は言う。

 次に、アジア通貨や中東通貨の多くはドルと連動しているため、これらの通貨もまた下落することになる。そうなると、ユーロ圏以外の市場に進出しようとしているスイスの輸出業者にはかなりの痛手になる。スイスメムの加盟企業は、製品の約9%をアメリカに輸出しているが、市場の約5分の1はドルの下落に影響を受けやすいという。

難しい結束

 今週末、スイスを含む「国際通貨基金 ( IMF )」 の加盟国は、為替変動やそのほかの課題を話し合う予定だ。しかし、この深刻化する為替変動に対して協調して対応できるかどうかは、アメリカと中国が政策的相違を克服できるかにかっている。ただ、望みは薄そうだ。

 「各国はそれぞれの国内経済の問題を抱えており、どこも内向して国内に目を向けている」
 と「ユリウスベア( Julius Bär ) 銀行」のチーフエコノミストを務めるヤン・ヴィレム・アケット氏は言い
「しかし、切り下げ競争はそれほど助けにはならないだろう」
 と指摘する。

 スイス中銀にはフランを守るための選択肢がもうない。為替介入により対ユーロでのフラン高の速度をかろうじて軽減したぐらいで、同様のことをドルやそのほかの主要通貨に対して行うことはできないだろう。

 また、予測困難な市況にあって、外貨は転落とそれが招く損失の恐れがあるため、中銀が外貨というアセットでバランスシートを埋め尽くし、評判を落とすようなリスクを冒すことはないというのが大方の意見だ。スイスメムのツィンマーマン氏は
「過去に見られるように、中銀の介入は短期的なプラス効果はあっても持続性はないため、わたしたちは追加介入は求めていない」
 と語った。

不安定な通貨

これまでスイスフランは安全な避難通貨として見られてきた。昨今の不況下では、スイス経済がほかの国と比べて堅調だったことからフランの価値はさらに高まった。

昨年12月、1ユーロは1.50フラン ( 約128円 ) だったが、ここ数週間で1.35フラン ( 約115円 ) あたりまで下がった。ちなみに、対米ドルでは1ドル1フラン ( 約85円 ) 以下で取引されている。

日本円、豪ドル、ニュージーランドドルもほかの通貨に対して高騰している。

通常、経済危機の際には安全な避難通貨である米ドルだが、今回、この世界最大の経済国が景気後退モードからの脱出に苦戦していることから、ドルの魅力が失われた。

中国は、米ドルを中心に外貨を大量に買い込み、意図的に人民元の価値を抑えていることに対して長い間批判されてきた。こうした行為は貿易と為替相場の両方に悪影響を与えている。

先月、日本は外貨を買い、6年ぶりの為替介入を行った。追加介入も見込まれている。

インド、タイ、韓国のようなアジアの通商圏の国々は、単独為替介入に踏み切る見込みだ。

米連邦準備理事会 ( FRB ) は11月の会合で、経済刺激策の一環として紙幣増刷に踏み切ると予想されている。

ここ数週間、イギリス、ブラジル、南アフリカからも別の理由で量的緩和を検討する声が聞かれた。

インフォボックス終わり


( 英語からの翻訳 中村友紀 ) , swissinfo.ch


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