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スイスのメディアが報じた日本のニュース

渋谷区の公衆トイレ
Keystone

今週(10月13日〜19日)スイスの主要報道機関が伝えた日本関連のニュースから3件をピックアップ。要約して紹介します。

「元グーグル著名AI研究者が日本で新会社設立」「『何よりも真似をする価値がある』日本の公衆トイレ」「力士が多すぎでJALが臨時便」「ロシア、日本の水産物輸入を停止」「奈良の鹿のおじぎ(動画)」「日米韓、初の空中訓練を計画」「新作アニメ『ドラゴンボールDAIMA』が来秋に世界展開」―といったトピックスが取り上げられました。

この中から今回は「「元グーグル著名AI研究者が日本で新会社設立」「『何よりも真似をする価値がある』日本の公衆トイレ」「力士が多すぎでJALが臨時便」をご紹介します。

なぜ日本で?元グーグル著名AI研究者が新会社設立

米グーグル出身の著名な人工知能(AI)研究者2人が、東京都内を拠点に生成AIのスタートアップ企業を立ち上げました。その名も「Sakana (サカナ)AI」。魚の群れのような自然界の「群知能」を応用した次世代AIモデルの研究開発を行う会社です。

新会社を設立したのは、後に対話型AI「ChatGPT(チャットGPT)」の基盤となった深層学習アーキテクチャ「トランスフォーマー」に関する論文の共同執筆者ライオン・ジョーンズ氏と、精巧な画像生成AIで知られる英スタビリティーAIにも在籍していたデビッド・ハ氏の2人。

独語圏の日刊紙NZZは19日配信の記事で、そんな2人がなぜ、今や中国や韓国に水をあけられ「ハイテク大国としてのオーラをすっかり失ってしまった日本」で新会社を立ち上げたのかに注目しました。

まず1つ目に、東京は彼らにとって、AI業界で最も希少な商品と言われる「優秀な開発者」争奪戦の秘密兵器だといいます。ジョーンズ氏とハ氏も声明で「優秀なAI人材の市場は北米では競争が激しい」と認めており、日本は世界で過小評価されがちな国内一流大学から世界トップクラスのAI人材を誘致できる強みがあるとしています。

コンピューター、チップ、産業用ロボットなど人工知能開発国としての地の利は言うまでもなく、ハイテク専門家や外国人のスペシャリストを政府が積極的に誘致しようとしていることもプラスポイントだと説明。AIなどに取り組む企業への政府補助金を一例に挙げました。

岸田文雄首相がAI推進者であることにも触れたほか、専門家誘致のためのビザ緩和政策は日本のこれまでの移民制限政策による人口減少を打開する試みでもあると分析しました。

また、シリコンバレーの給与の3分の1でITのプロフェッショナルを雇える日本の賃金の安さも魅力だとしています。(出典:NZZ外部リンク/独語)

日本の公衆トイレは「何よりも真似をする価値がある」

主演・役所広司がトイレ清掃員を演じ、カンヌ映画祭の最優秀男優賞を受賞した映画「パーフェクト・デイズ」(監督ヴィム・ヴェンダース)のスイス公開を来月に控え、独語圏日刊紙ターゲスアンツァイガーは14日、「日本のトイレは素晴らしい。スイスは何よりも真似をする価値がある」と絶賛する記事を配信しました。

同紙が特に注目したのは日本中にある公衆トイレ。「清潔で手入れが行き届き、トイレットペーパーは運任せではなく、常に十分に供給されている。携帯電話を充電できる電源もあれば、鏡や腰掛ける椅子が備わっている。しかも無料だ」とその充実ぶりに驚いたようです。

さらに、日本財団と東京都渋谷区が協働し、区内の公園など17カ所の公衆トイレを改修した「THE TOKYO TOILET」も紹介。安藤忠雄氏や隈研吾氏、坂茂氏ら建築界の巨匠らが手がけた個性的かつ芸術的なトイレを写真付きで掲載しました。

特筆すべきは、日本が公衆トイレの歴史を永続させようというマインドだと説明。「日本屈指の名工たちがこのプロジェクトに参加したのは偶然ではない。日本が(トイレという)住民の基本的なニーズを真剣に受け止めていることの証明だ」と論じました。

さらに公衆トイレの話は「都市は誰のためにあるのか」という都市のあり方論へ。スイスをはじめ、都市の公衆トイレは臭くて不潔、お世辞にも良いとは言えないことから、記事は「全ての人にとって住みやすい都市にするためには、この状況を早急に変える必要がある。美しく安全で清潔な公衆トイレは良いスタートになるだろう」と結んでいます。(出典:ターゲスアンツァイガー外部リンク/独語)

力士が多すぎでJALが臨時便

奄美大島で13~15日に開かれたかごしま国体で、出場力士グループの乗る飛行機が重量オーバーの可能性があるとして、日本航空が急きょ臨時便を出したことを複数のスイス紙が報じました。

JALによれば、旅客の想定体重は一般客なら一人あたり約70キロ、スポーツ選手なら約120キロと試算するそうですが、力士たちが全員同じ小型機に乗ると燃料不足になるおそれが生じたため、力士たちを分散して運んだといいます。

群馬県代表の高校生力士の3人(140キロ、130キロ、110キロ)は15日の復路便が隣同士の席で、1人は「多分、真ん中が一番きつかったと思う」と振り返りました。

無料紙20min.によると、日本ではフライト前の体重測定を求められることはあまりないものの、各国の国営航空会社の多くはデータ収集のために体重計に乗ることを義務付けています。(出典:20min.外部リンク/独語、Nau.ch外部リンク/独語)

今週のスイスのニュース

今週、最も注目されたスイスのニュースは「中立国スイス ハマスをテロ組織に指定することは本当に可能?」(記事/日本語)でした。他に「教会裁判所、性的虐待問題に役立つ?」(記事/日本語)、「ノバルティス子会社サンドが分離上場 医薬品不足に対処できるか」(記事/日本語)も良く読まれました。

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次回の「スイスのメディアが報じた日本のニュース」は10月27日(金)に掲載する予定です。

編集:宇田薫

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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