チューリヒのパラーデ広場はスイス金融業界の中心地だ
© Keystone / Gaetan Bally
欧州市場へのアクセスを失いたくなければ、スイスの金融業界はサステナビリティ―(持続可能性)と透明性をもっと高めた方がいい―。国際会計企業PwCなどが実施したこんな調査結果を受け、連邦議会では規制強化をめぐる賛否両論が沸き起こっている。
このコンテンツが公開されたのは、
欧州委員会が昨年3月まとめた「サステナブル・ファイナンス(持続可能な金融)のためのアクションプラン外部リンク」による影響を、PwCとWWF(世界自然保護基金)が分析、評価した。アクションプランは今秋にも欧州議会に提出される。
アクションプランには、EUで販売される持続可能な金融商品は今後、EUの厳格な環境基準を満たしたことを緑色のラベルで明示することが盛り込まれている。スイスはEU非加盟だが、多数の二国間協定を結んでいる。EUの基準を満たせなければ、スイスも欧州市場で金融商品を販売できなくなるおそれがあるとPwCは警告する。
スイス緑の党のアデル・トーレン議員外部リンクはフランス語圏のスイス公共ラジオ(RTS)で「欧州が持続可能な金融商品の基準を明確にし、スイスがそれを満たせなければ、(欧州市場への)アクセスおよび法的平等の面で問題となりかねない」と主張。アクションプランが議会を通過し次第、スイスも法的措置を導入するよう訴えた。
一方、中道右派の議員らは、規制は金融セクター自身にゆだねるべきで、サステナビリティよりも利潤追求の方が重要だと反論している。
制度的枠組み条約をめぐる難題
EUとスイスは現在、二国間関係の制度的枠組み条約締結に向け交渉中だが、状況は難航している。
EUは、欧州市場への門戸を広げる前に、スイスが条約に合意するよう求める。これに対し、スイス連邦政府は態度を明らかにしていない。昨年12月にEUが提示した条約案について、国内の関係機関に意見公募手続きを行う予定だ。
制度的枠組み条約は過去5年にわたり議論されてきた。人の移動の自由、農産物、空と地上の輸送、規格の相互承認という五つの主要政策分野にまたがる。
スイス国内では締結の是非が分かれるが、右派、左派のいずれの政党からも最終案について再交渉を求める声が挙がっている。
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
おすすめの記事
スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。
もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
おすすめの記事
スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
このコンテンツが公開されたのは、
米宇宙企業SpaceX(スペースX)が運営する通信衛星「Starlink(スターリンク)」のアンテナ40基をスイス南部の村に設置する計画に対し、反対する声が上がっている。
もっと読む スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
おすすめの記事
スイスでは現金のチップが主流
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのレストランでクレジットカードやスマホ決済が普及しているが、チップは今も現金で払うのが主流だ。消費者の多くは、チップが確実にスタッフの手元に入るようことを重視している。
もっと読む スイスでは現金のチップが主流
おすすめの記事
プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの研究所が新たな研究結果を発表し、プラタナスは猛暑でも冷却効果を発揮することが分かった。樹木の冷却効果は30~35℃で限界に達するという既存の仮説を覆す結果が出た。
もっと読む プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
おすすめの記事
スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国立銀行(中銀、SNB)は19日、政策金利を0.25%引き下げて0%にすると発表した。
もっと読む スイス国立銀行、政策金利ゼロに引き下げ
おすすめの記事
欧州外相、ジュネーブでイラン外相と核協議へ
このコンテンツが公開されたのは、
メディア報道によると、ドイツ、フランス、英国の外相は20日、スイス・ジュネーブでイラン外相と核協議を行う見通しだ。
もっと読む 欧州外相、ジュネーブでイラン外相と核協議へ
おすすめの記事
スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス上院は17日、超富裕層の相続に相続税を課し環境保護の財源にする案を否決した。
もっと読む スイス議会、超富裕層への相続税案を否決 対案なく国民投票へ
おすすめの記事
見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦鉄道(SBB)は17 日、目に見えない障がいを持つ乗客を対象としたヘルプマークの配布を試験的に開始した。外見からは分からなくても支援・配慮を必要としている人への理解を深めることを目的としている。
もっと読む 見えぬ障がい伝えるバッジ、試験配布開始 スイス連邦鉄道
おすすめの記事
ユーロスター、スイスと英国結ぶ直通列車運行へ
このコンテンツが公開されたのは、
英国と大陸欧州をつなぐ高速鉄道ユーロスターは、スイス・ジュネーブとロンドンを結ぶ初の直通列車の運行を計画している。
もっと読む ユーロスター、スイスと英国結ぶ直通列車運行へ
続きを読む
おすすめの記事
「スイス中銀は環境に優しい投資を」 環境団体が提言
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国立銀行(中央銀行)はスイスの金融市場に気候変動のストレステストを受けさせるべきである。スイス気候連盟はこう指摘する。頻発する天災による被害は、金融システムを危機に至らせる可能性があるためだ。
もっと読む 「スイス中銀は環境に優しい投資を」 環境団体が提言
おすすめの記事
専門家が懸念「EUが、スイス・EU枠組み条約案をスイスと再交渉することはないだろう」
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・EU枠組み条約をめぐって、年明けのスイス政治家の発言が物議を醸している。ジュネーブ大学の研究者でEU問題の専門家であるチェニ・ナジさんは、「欧州連合(EU)は態度を硬化させ、スイス連邦政府と合意した条約案を見直すことはないだろう」と警告する。
もっと読む 専門家が懸念「EUが、スイス・EU枠組み条約案をスイスと再交渉することはないだろう」
おすすめの記事
存在感薄れるスイス・チューリヒの金融業界
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの金融業はチューリヒ州に集中している。スイスで金融関係の仕事に就く人の41%を抱え、金融業の生産高の45%を創出する。だが2007~08年に起きた金融危機は、その優位性を奪い去った。チューリヒ州経済労働局は18日発表した調査報告書にこう記した。
もっと読む 存在感薄れるスイス・チューリヒの金融業界
おすすめの記事
ノーベル財団が軍需産業に投資?平和賞受賞団体が批判
このコンテンツが公開されたのは、
今年のノーベル平和賞を受賞したスイス・ジュネーブを拠点とする国際非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」が、ノーベル財団に資金の投資先を透明化するよう訴えている。
もっと読む ノーベル財団が軍需産業に投資?平和賞受賞団体が批判
おすすめの記事
気候変動が変える保険ビジネス
このコンテンツが公開されたのは、
チューリヒに本社があるスイス・リーなど保険会社は、気候変動によって気象条件の変動が大きくなると、保険の支払いが増えるという直接的な影響を受けそうだ。
もっと読む 気候変動が変える保険ビジネス
おすすめの記事
スイス証券取引所が暗号資産時代に焦点を合わせるわけ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス証券取引所が仮想通貨など暗号資産取引へのシフトアップを図っている。時代を先取るこの波に乗ろうとしている取引プラットフォームは数多い。その背景を探ってみた。
もっと読む スイス証券取引所が暗号資産時代に焦点を合わせるわけ
おすすめの記事
スイスの大銀行、犯罪対策が不十分?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの銀行大手クレディ・スイス(CS)が、国際的な不正取引に関わったとして金融当局の勧告処分を受けた。ただ営業停止や罰金などの処分がなかったことに首をかしげる専門家もいる。
もっと読む スイスの大銀行、犯罪対策が不十分?
おすすめの記事
リーマン・ショックから10年 金融立国・スイスの傷が浅かった背景は?
このコンテンツが公開されたのは、
米国第4の投資銀行が破綻したのは2008年9月15日。サブプライム・ローンで膨らんだ不良債権を処理できず、米政府は公的資金の注入を拒否。連鎖破綻を恐れて金融市場から資金が干上がり、銀行業界は大混乱に陥った。米国発の危機…
もっと読む リーマン・ショックから10年 金融立国・スイスの傷が浅かった背景は?
おすすめの記事
スイスの銀行、金融犯罪への対処に遅れ KPMG調査
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの金融機関と金融当局は、金融システムで起こる組織犯罪やマネーロンダリング(資金洗浄)を防ぐための方策が不足している。国際会計企業KPMGが26日に発表した調査で分かった。
もっと読む スイスの銀行、金融犯罪への対処に遅れ KPMG調査
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。