相次ぎ当局の制裁に直面するクレディ・スイス
© Keystone / Christian Beutler
クレディ・スイス銀行(CS)は、モザンビークでの汚職事件に関与したとして米英当局に罰金を科された。また2019年の企業スパイ事件を巡り、スイス当局に組織体質の欠陥を指摘された。
このコンテンツが公開されたのは、
米英当局は19日、モザンビークの汚職事件で贈収賄・詐欺罪に問われたCSに対し、約4億7500万ドル(約540億円)の支払い命令外部リンクを下した。
内訳は米司法省に対し1億7500万ドル、米証券取引委員会(SEC)に9900万ドル、英金融行動監視機構(FCA)に2億ドル。モザンビークに対する2億ドルの債権も放棄する。
CSは2013~16年、モザンビーク政府のマグロ漁事業と海上保安プロジェクトに対して約10億ドルの国債発行や協調融資(シンジケートローン)を引き受けた。このいわゆる「マグロ債」の売上げの多くが、見返りとしてCS行員やモザンビーク政府高官に横流しされた。米英当局は、同行が悪意を持って投資家を誤解させ、米贈収賄法に違反したと指摘した。
米英の決定に対し、CSは声明外部リンクで「手続きが完了したことに満足している」と述べた。同行の欧州子会社はまた、独立した第三者委員会を設置し取引やリスク管理を監視することでスイスの金融市場監督機構(FINMA)と合意したという。
7件の内偵活動
またFINMAは同日、CSで2019年に発生した企業スパイ事件の捜査で「重大な組織的欠陥」を発見したと発表外部リンクした。
同事件ではCSの取締役が同行の雇った探偵に尾行されていたが、FINMAによるとこのほかに国外の元行員や第三者に対するスパイ活動も横行していた。19年のスパイ事件は最終的に当時のティージャン・ティアム最高経営責任者(CEO)の辞任につながった。
FINMAは昨年に開始した捜査の総括として、CSのコーポレートガバナンス(企業統治)に重大な欠陥を発見したと述べた。また7件の「内偵」行為が「非公式かつ妥当な理由なく」実施されたと指摘した。
また個人に対する処分として「2人を書面でけん責し、別の3人に対して執行手続きを開始した」と表明した。個人名は明かされていない。
CSはFINMAの決定を受け、「関連するガバナンスとプロセスを強化する重要な措置を講じた」と述べた。
モザンビークの案件を巡っては、ロンドンの債権者がCSを相手取り民事訴訟を起こしている。ブルームバーグによると、2023年10月に1回目の審理が英高等裁判所で予定されている。
おすすめの記事
スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
このコンテンツが公開されたのは、
米国がスイスに課す39%の「相互関税」をめぐり、スイス政府は4日、米国との協議を続け「より魅力的な提案をする」と表明した。
もっと読む スイス政府、相互関税で米国との協議継続を表明
おすすめの記事
トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
このコンテンツが公開されたのは、
米国はスイスに課す相互関税率を39%と発表。スイス政府は「大変遺憾に思う」と表明した。
もっと読む トランプ政権、スイスに39%の相互関税を発表
おすすめの記事
スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス銀行を狙った口座乗っ取り事件で、英国で刑事告訴されていた英国人学生(21)に禁固7年の有罪判決が言い渡された。スイス連邦検察庁によると、学生はスイスの銀行顧客から約240万フラン(約4億4000万円)を騙し取った。
もっと読む スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
おすすめの記事
温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
このコンテンツが公開されたのは、
スイス西部のフランス語圏は温暖化によりオリーブの木を育てやすくなっている。生産者らは2026年には栽培本数が2万本に倍増し、南部のイタリア語圏ティチーノ州を追い抜くと見込む。
もっと読む 温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
おすすめの記事
アルプスに新しい巨大地上絵が登場
このコンテンツが公開されたのは、
世界各地で巨大な地上絵を描くアーティストのSAYPE(セイプ)さんが、スイス南部ヴォー州のアルプス山頂に新作を完成させた。
もっと読む アルプスに新しい巨大地上絵が登場
おすすめの記事
スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
このコンテンツが公開されたのは、
スイス北部デニケン(ソロトゥルン州)のゲスゲン原子力発電所が2カ月近く、発電を停止している。給水配管システムに過負荷がかかっている可能性があり、安全性が証明されるまで発電を再開できていない。
もっと読む スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
おすすめの記事
欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
このコンテンツが公開されたのは、
欧州人権裁判所(ECHR)大法廷は10日、スイスが女子陸上五輪金メダリストのキャスター・セメンヤさん(南アフリカ)の権利を侵害したとする2023年の判決を支持した。
もっと読む 欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
おすすめの記事
スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。
もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
おすすめの記事
スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
このコンテンツが公開されたのは、
米宇宙企業SpaceX(スペースX)が運営する通信衛星「Starlink(スターリンク)」のアンテナ40基をスイス南部の村に設置する計画に対し、反対する声が上がっている。
もっと読む スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
続きを読む
おすすめの記事
クレディ・スイス、「スイス回帰」で名声回復か
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの銀行大手クレディ・スイス(CS)の取締役会は、多くの株主の期待に反してティージャン・ティアム最高経営責任者(CEO)の退任を決めた。後任はスイス国籍を持ち、現在CSの国内事業を率いるトマス・ゴットシュタイン氏だ。
もっと読む クレディ・スイス、「スイス回帰」で名声回復か
おすすめの記事
クレディ・スイスCEOが辞任 内偵スキャンダルで
このコンテンツが公開されたのは、
内偵スキャンダルに揺れる金融大手クレディ・スイス(CS)は7日、ティージャン・ティアム最高経営責任者(CEO)の辞任を発表した。
もっと読む クレディ・スイスCEOが辞任 内偵スキャンダルで
おすすめの記事
クレディ・スイスに別の内偵スキャンダル
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの銀行大手クレディ・スイスで別の内偵スキャンダルが発覚した。今年2月に幹部行員が「許されない」監視下に置かれていたことが分かった。
もっと読む クレディ・スイスに別の内偵スキャンダル
おすすめの記事
チューリヒの大手銀行、米司法省に巨額の罰金支払いで合意
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの銀行大手チューリヒ州立銀行(ZKB)は13日、米司法省に米国人顧客に対する脱税ほう助行為を認め、9850万ドル(109億1千万円)の罰金を支払うことで合意したと発表した。これにより同行に対する米司法省の一連の捜査は終了する。
もっと読む チューリヒの大手銀行、米司法省に巨額の罰金支払いで合意
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。