スイスにあるネスレショップの商品棚
swissinfo.ch/Dominique Soguel
ロシアのウクライナ侵攻を受け、スイスの多国籍企業ネスレは現在、ロシアでの製品ラインナップを生活必需品に限定している。だがスイス紙によると、モスクワのスーパーマーケットには現在も豊富な顔ぶれのネスレ製品が揃う。
このコンテンツが公開されたのは、
ドイツ語圏日刊紙NZZの報道外部リンクによると、世界最大の食品飲料会社ネスレは現在もロシアで幅広い種類の製品を販売し、従業員も募集している。
同紙のモスクワ特派員マークス・アッケレ氏はロシア国内のスーパーで、よく知られたネスレ製品が豊富なラインナップで商品棚に並んでいるのを確認したという。また、ウクライナ侵攻を受けて数々の欧米企業がロシアから事業撤退をしたにもかかわらず、店には多くの海外ブランド製品が所狭しと並んでいるとも指摘した。
アッケレ氏によると「ロシアで大人気のネスカフェは、たくさんの種類が置かれている」。Bystrow社の朝食用シリアル、マギー社のスープや固形ブイヨン、ピュリナ社のペットフード、Mövenpick社のアイスクリームも同様だった。プラリネと呼ばれるお菓子、チョコレートバー、ベビーフード・幼児用食品なども幅広い種類を販売していた。製品ラベルには、ロシアのネスレ工場で製造されたとの記載があった。
NZZによると、ネスレはこれについてコメントを拒否している。
ロシアのスーパーでこれだけ豊富な商品が揃うのは、ネスレが生活必需品を幅広く定義しているからだ。ロシアのウクライナ侵攻を受け、多くの大手ブランドがロシアから撤退した。ネスレは昨年3月、声明外部リンクでロシアでの大幅な業務縮小について説明した。しかし、ロシアで事業を継続することに対して、ソーシャルメディア上やウクライナ政府関係者から依然として激しい批判を受けている。
NZZは、現地のネスレ工場が生産を停止したり「大規模な人員削減」を実施したりした形跡はないと報じている。ウクライナでの戦争が始まる前、ネスレはロシアに7つの工場を運営、2021年の同国内の雇用者数は約7千人だった。ネスレのロシア法人は、ロシアの大手オンライン求人ポータルサイトHeadhunter.ruに110件のネスレ・ロシアの求人広告を掲載し、従業員の募集を続けているという。
英語からの翻訳:大野瑠衣子
おすすめの記事
おすすめの記事
いまだロシアから撤退しない欧米企業 その理由は
このコンテンツが公開されたのは、
世論や政治的な圧力にもかかわらず、西側企業のロシアからの大規模な撤退は実現されていないことが調査で明かになった。公言に反しロシアとの関係を断ち切れない企業が多いのは何故なのか?
もっと読む いまだロシアから撤退しない欧米企業 その理由は
おすすめの記事
スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス銀行を狙った口座乗っ取り事件で、英国で刑事告訴されていた英国人学生(21)に禁固7年の有罪判決が言い渡された。スイス連邦検察庁によると、学生はスイスの銀行顧客から約240万フラン(約4億4000万円)を騙し取った。
もっと読む スイス銀行の顧客を騙した英国人留学生に有罪判決
おすすめの記事
温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
このコンテンツが公開されたのは、
スイス西部のフランス語圏は温暖化によりオリーブの木を育てやすくなっている。生産者らは2026年には栽培本数が2万本に倍増し、南部のイタリア語圏ティチーノ州を追い抜くと見込む。
もっと読む 温暖化でスイスがオリーブの名産地に?
おすすめの記事
アルプスに新しい巨大地上絵が登場
このコンテンツが公開されたのは、
世界各地で巨大な地上絵を描くアーティストのSAYPE(セイプ)さんが、スイス南部ヴォー州のアルプス山頂に新作を完成させた。
もっと読む アルプスに新しい巨大地上絵が登場
おすすめの記事
スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
このコンテンツが公開されたのは、
スイス北部デニケン(ソロトゥルン州)のゲスゲン原子力発電所が2カ月近く、発電を停止している。給水配管システムに過負荷がかかっている可能性があり、安全性が証明されるまで発電を再開できていない。
もっと読む スイス・ゲスゲン原発、定期検査後に稼働再開できず
おすすめの記事
欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
このコンテンツが公開されたのは、
欧州人権裁判所(ECHR)大法廷は10日、スイスが女子陸上五輪金メダリストのキャスター・セメンヤさん(南アフリカ)の権利を侵害したとする2023年の判決を支持した。
もっと読む 欧州人権裁判所、スイスは「セメンヤさんの権利を侵害」
おすすめの記事
スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
このコンテンツが公開されたのは、
抗生物質の開発に特化するスイスの新興バイオ企業ビオヴェルシス(BioVersys)は2日、日本の塩野義製薬と共同研究・独占ライセンス契約を結んだと発表した。
もっと読む スイスの抗生物質開発企業、塩野義と研究・ライセンス契約を締結
おすすめの記事
スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
このコンテンツが公開されたのは、
スイス放送協会(SRG SSR)は政府の予算削減を踏まえた組織再編計画を発表した。4言語圏の放送局のスポーツ、ドラマ、制作、配給、人事、財務、ITサービスなど各部門を縦割りで再編成する。
もっと読む スイス公共放送協会、大規模な組織再編計画を発表 人員削減も
おすすめの記事
スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
このコンテンツが公開されたのは、
米宇宙企業SpaceX(スペースX)が運営する通信衛星「Starlink(スターリンク)」のアンテナ40基をスイス南部の村に設置する計画に対し、反対する声が上がっている。
もっと読む スターリンクの衛星アンテナ設置に反対運動 スイス南部
おすすめの記事
スイスでは現金のチップが主流
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのレストランでクレジットカードやスマホ決済が普及しているが、チップは今も現金で払うのが主流だ。消費者の多くは、チップが確実にスタッフの手元に入るようことを重視している。
もっと読む スイスでは現金のチップが主流
おすすめの記事
プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの研究所が新たな研究結果を発表し、プラタナスは猛暑でも冷却効果を発揮することが分かった。樹木の冷却効果は30~35℃で限界に達するという既存の仮説を覆す結果が出た。
もっと読む プラタナス、猛暑でも冷却効果 スイスの研究
続きを読む
おすすめの記事
スイス食品大手ネスレ、ウクライナに新工場を開設へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの多国籍企業ネスレは12日、ウクライナ西部における新生産施設の立ち上げに4千万フラン(約58億円)投資すると発表した。これにより新たな雇用が1500人分創出される。
もっと読む スイス食品大手ネスレ、ウクライナに新工場を開設へ
おすすめの記事
対ロ制裁でスイスの多国籍企業に試練
このコンテンツが公開されたのは、
ロシアに対する経済制裁を受け、スイス企業はロシア企業と距離を置こうと努力する。だがロシア企業との関係を公開し、完全に断ち切るよう求める声が強い。
もっと読む 対ロ制裁でスイスの多国籍企業に試練
おすすめの記事
残留か撤退か ロシアに進出したスイス企業のジレンマ
このコンテンツが公開されたのは、
ロシアによるウクライナ侵攻後、複数のスイス企業がロシア国内での活動を停止した。完全撤退を表明する企業もあれば、なかにはこれまで通り事業を継続している企業もある。
もっと読む 残留か撤退か ロシアに進出したスイス企業のジレンマ
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。