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グーグル敗訴で通行人の顔にぼかし

ストリートビューでチューリヒ市ラング通り ( Langstrasse ) を眺める Keystone

グーグルは今後、自社で提供している無料の地図ソフト「ストリートビュー」に表示される人の顔や車のナンバーが識別可能な場合、それらを手作業でぼかさなければならない。

連邦行政裁判所は4月4日、連邦情報保護・透明性維持担当課 ( EDÖB/PFPDT ) のハンスペーター・テュール氏が要求していた個人情報保護対策の大部分を認めた。

微妙な施設周辺でのプライバシー保護

 テュール氏は2009年9月、グーグルに対し、ストリートビューでプライベートの保護を改善するよう要求した。しかし、グーグルが提案の実現に際しその大半を拒否したため、情報保護・透明性維持担当課はベルンにある連邦行政裁判所に提訴した。

 4月4日、裁判所はグーグルに対し、テュール氏の要求のほぼすべてを満たすよう判決を下した。これによりグーグルは、人の顔や車両のナンバーを完全に認識できないようにするための手作業修正を行なう義務を負った。情報保護・透明性維持担当課によると、現在自動的にぼかしが入っている顔は全体の約98%だ。

 ドメスティックバイオレンス ( DV ) の被害者となった女性が避難する「女性の家 ( Frauenhaus ) 」や学校、裁判所、社会福祉当局、病院など、デリケートな施設周辺ではプライバシーが完全に守られねばならない。さらに、顔だけではなく肌の色や服装など個人の特徴も取り除かれなければならない。

新聞で録画予定を告知

 さらに録画計画やネット上での画像公開については、これまでのようにグーグルマップのスタートサイトで発表するだけでなく、地元の新聞紙上での告知も必要となる。普段「普通の通行人」が覗くことができない中庭や前庭も映してはならない。

 この件に関しては、グーグルがローザンヌにある連邦最高裁判所に上訴する可能性もある。今回の判決によると、誰もが自分が写った写真に対する権利を所有しており、そのため根本的に本人の承認なしに写真に撮られることがあってはならない。これはストリートビューなどのように、人が単なる「飾り」として現れる場合にも適用される。

 情報保護・透明性維持担当課は4日、行政裁判所の判決に対し大きな満足を示した。一方のグーグルの落胆もまた大きかった。

 テュール氏の代理を務めるジャン・フィリップ・ヴァルター氏はスイス通信 ( SDA/ATS ) に対し

「グーグルが公開している画像は明らかに個人情報だ」

 と語る。

 一方で、グーグルのグローバル情報保護担当ペーター・フライシャー氏は

「この決定に非常に落胆した。スタート以来、スイス人の4人に1人がストリートビューをすでに利用している」

 と残念がる。

2007年、アメリカで開始。

グーグルマップ ( Google Maps ) に住所または郵便番号を入力して指定した場所の静止画像を閲覧するか、「ペグマン ( Pegman ) 」と呼ばれるオレンジ色の人型のアイコンを地図上にドラッグしてドロップすればいつでもこのサービスを利用できる。利用可能な道路は青色で示される。

指定した場所の映像が画面に表示され、矢印のアイコンを使って視点を動かすことができる。

特別な専用カメラを載せた車を走らせて撮影した風景は、その後、360度のパノラマ写真に加工される。

スイスでは2009年3月に撮影が始まり、8月にサービスが開始された。

しかし、人の顔や車のナンバーが識別可能だったことから、個人のプライバシーを侵害するという理由で、連邦情報保護・透明性維持担当課 ( EDÖB/PFPDT ) がストリートビューの一時停止要請を提出。

その後2月24日に連邦行政裁判所に持ち込まれた。

この間、グーグルは撮影を引き続き行っているが、オンラインは見合わせていた。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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